ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,917 / 2,518

第1917話 ちょっとだけ空回り

しおりを挟む
 ウルは繋がりを持てて上機嫌だ。今までに不満や不安があったわけではないと思うが、繋がりが少ないから役に立ちたいと言う思いが、先行して今のように頑張りすぎるお姉ちゃんになっているのかもしれない。もっとしっかりと、この子の事を見ておくべきだったな。

 ミーシャたちと合流したウルは、いつも以上に笑顔が可愛かった気がするな。元気よく見送ってくれる4人と、シンラは渡さないと威嚇してくる2人と、黄昏ている1人に見送られて、子ども部屋を後にする。

 向かう先は、綾乃とバザールの所だ。実験結果を共有するために、2人の所へ行くのだ。

「へ~、ウルちゃんのダンジョンマスターのスキルは、そんな感じなのね。私はスキル持ってないから、細かい部分は分からないけど、思ったより使い勝手が悪い?」

「綾乃殿、そもそも御付きのケットシーが召喚できるでござるから、魔物を倒せば自分でもDPを稼げるようになったくらいでござろう。綾乃殿にも御付きがいるでござろう? それがいて困ったことはないでござるよね?」

「そう言われればそうね。この世界の物の大半は自分で作れるし、ケットシーに頼めば地球の物も召喚してもらえるわね。魔力かDPかの違いで、召喚できるようになったってことかな?」

「お前と同じにされるのは、ちょっと止めてもらいたいな。ウルがお前みたいになったらすごく困る!」

 バザールが頷いているので、俺の主張は間違っていないと思う。綾乃も自分みたいになったら、ウルちゃんが困るわね……みたいなことを言っている。自覚があったんだな。

「いずれ、俺とウルのダンジョンマスターの能力を、同じようにできればいいんだけどな。ウルにDBSのついたダンジョンを掌握させてみるか? バザールなら俺の時みたいに、ウルの代わりにダンジョンバトルできないかね? ダンジョンマスターの格が上がれば、召喚できる物も増えるし……今度手伝ってもらうか」

「あんたの子どもたちは、私たちみたいにダンジョンバトルに張り付いているわけにはいかないから、誰かが代わりにやる必要があるもんね。バザールなら、シュウやウルちゃんの代わりにダンジョンマスターの能力を使えるから、大丈夫でしょ」

「主殿の従魔たちが張り切り過ぎないように、制限する必要が出てくるかもしれないでござる」

 あ~、ウルのダンジョンバトルとなれば、俺の従魔たちが俺のとき以上に頑張りそうだな。メグちゃんとか先兵となって、敵の鏖殺して短時間でバトルが終わりそうだ。

「俺の従魔たちはダメだな。あいつらには違う意味で任せられん。制限はそのくらいかな? DPは渡す分を制限なく使ってもいいけど、問題は魔物の方だよな……S級スケルトンは何体か使えるようにしておくか?」

「最初から、甘々なダンジョンバトルはどうかと思うわ。召喚できる魔物はシュウのを頼ればいいけど、DPは制限しておいた方が良いわね。自分で稼いでダンジョンバトルを楽しむならいいけど、シュウのDPに頼ってって言うのは良くないんじゃないかな?」

「それもそうか。そこらへんは、ミリーたちやシルキーたちと相談してみるか。何かあったら、ウルに協力してやってくれ。もちろん、報酬は出すからよろしくな」

 2人とも快諾してくれた。

 2人は、バザールのダンジョンマスターの能力を使って、色々シミュレーションをするようだ。許可が出た際に、どのくらいのDPを始めに渡すか……みたいな話をするようだ。任せたぜ!

 夕食はまだ先だし、少しのんびりするかな。最近は微妙に忙しかったし、1人でのんびりするのもありだろう。普段はあまり使わない、屋上の庭園に足を運びくつろぐことにした。

「前に来たのは……子どもたちがスライムレースをしてた時だっけ?」

 全体が木の椅子なのだが、人の体の形に合わせて作られた、デザインウッドチェアーだ。リクライニングなどは出来ないが、リラックスできる体勢にしてくれるので座り心地はいい。

 ブッ君ではなく、紙の本を取り出して読む。

『…………』

 何か聞こえているが、気のせいだろう。

『ちょっと! 無視しないでよ! せっかくいいニュースを持って来てあげたっていうのに!』

 本当にいいニュースなんだろうな? 前回、とことん稼いだから、有益な情報でもくれるのか?

『あれは本当にいい稼ぎになったわ。それの一部お返しとは言わないけど、私が言う前にあんたの娘にダンジョンマスターのスキルが増えたのに気付いたわね。そのことについて、話があってね』

 あ~お前も気付いてたんだ。さっきまでのやり取りでも見てたのか?

『そこまで私も暇じゃないわよ。あんたとあんたの家族には、私から加護をやってるんだから、大きな変化があればすぐに気付くわよ。で、骨っ子たちとの話を聞いて、ちょっと何とかならないのか気になって確認したら、あなたの能力を娘に付与することができるようになったわ!

 まぁ、新しく登録される、地球の物を呼び出せるようになるってだけだけどね。他には魔物の召喚できる種類を、追加してあげられるような機能かしらね? 詳しい男神にエッチな本をあげたら、喜んで方法を教えてくれたわ。私にはいらないから、ちょうどいい餌になったわよ』

 へ~、男神ってそんなアホな奴もいるんだな。俺は送った記憶ないけど、どうやって手に入れたんだ?

『綾乃って子から、スケベな男にはこれが効く! って言われて、お供え物してくれたやつね。女の裸なんて見て、何がいいのかしらね? 気になるなら、娼館でも覗いていればいいのにね』

 ん~良く分からんが、その男神にも何かしらのこだわりがあるんじゃねえか? サキュバスとかに、骨抜きにされそうなアホ神っぽいけどな。

『サキュバス……面白そうね。今度、骨っ子に召喚してもらうかしら? 男神たちを相手にした、サキュバス娼館……これは、私の地位が更に盤石になる予感!』

 変な事吹き込んじまったな……人間とかは送れないけど、魔物は双方の許可があれば送り出せるみたいなんだよな。今までに送ってもらった神とかいそうだけどな。絶対数が少なくて把握できていない、とかかね。

 とりあえず、ダンジョンマスターの能力を付与できるようになったのは、感謝しておくわ。ケットシーが代わりにできるとはいえ、自分で選ぶのも1つの楽しみだからな。

『グフフ……後で骨っ子に相談してみよっと。何かあったら、連絡してきなさい』

 最後にちょっとだけ、チビ神らしくない気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...