ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,907 / 2,518

第1907話 戦い方は無限大!

しおりを挟む
 10階の最後の部屋に到着した。10階に突入してから、1時間30分くらいだと思う。上の階より通路が広くなっているから、思った通り攻略速度が上がっている。

 中ボス部屋で待っていたのは、オークジェネラル・ゴブリンキング・ゴブリンジェネラルの強化種・コボルトジェネラルの強化種、合計で30体ほどだ。とにかく数が多い。ゴブリンキング以外Lv100まではいかないが、10階の他の部屋より明らかに強いな。

 ダンジョンではレベルが上がりやすいとはいえ、突発的にできたダンジョンにしては中ボスが強すぎないかね? 疑問に思っても、実際にそこにいるんだから仕方がないよな。

「ウル、部屋の中を覗いてみて、どうするか決まった?」

「ミリーお母さん、制限を解除しなければ怪我をして、倒しきれずに撤退になると思います」

 ウルたちのステータスは、階毎に調整しているし、明らかに不利になる場合も調整していたが、今の状態では倒せないことを理解しているようだ。

「じゃぁ、どうする?」

「…………解除して戦うか、魔物の分断を手伝ってもらって戦う。それがダメなら、撤退します」

 ミリーは、ウルの答えを聞いて、目を見ながら何かを考えているようだ。真剣な顔をしていたが、不意に優しい顔になり、ウルの頭に手を置いて撫でている。

「きちんと撤退が視野に入っているのは、褒められる所ね。前の2つは……シュウ君どうする?」

「ん~、綾乃ならすぐに分かってしまうけど、ウルたちでも今の状態で敵を全部倒すことは出来ると思うよ。その方法を考えてみてもいいんじゃないかな? 俺たちも何度か使った手だから、みんなにもすぐわかると思うけど、ゲームの知識を引っ張り出して、4人で考えてみてごらん」

 頭を突き合わせて相談を始めた4人。近くにはスライムとメグちゃんとシリウス君が待機している。何があっても不意打ちは不可能だろう。

「シュウ君、格上に近い魔物がいる上に30匹近い同格がいるのに、本当に倒す方法があるの?」

「もちろんあるよ。ミリーやカエデやリンドは、あまりゲームをしないから分からないと思うけど、よくある手法だと思う。実際にこの世界の冒険者たちだって、やっている方法だよ。綾乃ならすぐに分かるよな?」

「もちろん。釣りね!」

「「「つり?」」」

 ミリーたち3人は、釣りと言われてもピンと来ていなかったが、ゲームをよくやっている年少組のメンバーは、納得した様子だった。確かにあの戦い方なら、問題ないね! と、反応してくれた。自分なら、何から釣る? みたいな話を始めている。

「もともとは、敵をおびき寄せて囲んで倒すみたいなのが語源だっけ? まぁ分かりやすく言えば、あの中の魔物を釣りだして、1匹ずつ仕留めていくってことよ。タンクがチェインで引っ張り出して通路で倒すか、部屋の中に小部屋を作ってそこに引き込んで倒すってことね。

 ボス部屋だと、通路からの攻撃が無効化されることがあるから、部屋に入って隔離できるように準備して戦うって感じかしら?」

「そんなところだな。この部屋は中に入れば閉じ込められるけど、釣りだすことは出来るんじゃないかな? 実際にやってみないと分からないけどね。それに向こうの扉が閉まってるから、ユニゾンマジックを打ち込んで蓋してって繰り返せば、倒せるかもしれないね」

 ダンジョンのシステム上、部屋の外から攻撃することは可能だ。だけど、ボス部屋に関しては、高いDPを支払うことによって、通路からの攻撃を無効化することも出来るのだ。海賊船の中ボスと戦った時に知ったシステムだ。

 ウルたちに聞こえないように話していたら、娘たち4人が近付いてきて、

「「「「答えは、釣り!」」」」

 4人は自信をもって答えた。ミーシャなんかは、若干鼻の穴が膨れたドヤ顔をしている。

「正解。じゃぁ、どういう風に釣りをする?」

「多分、私たちのチェインだと、魔物まで届かないので、物理的に強引に釣りだそうかと考えています」

「物理的?」

 聞き返すと、先端が少し膨らんでいるボルトを取り出した。ボルトには細いけど頑丈な金属繊維の紐がついていた。グルっと首を回して綾乃を見ると、とっさに顔をそむけたのでこいつの仕業だな。

 何のために作ったか知らないが、釣りという答えに辿り着き綾乃が作ったボルトを思い出して、自分たちが有利に戦える場所へ引き込めると考えたのだろう。この子たちの経験からすれば、満点をあげてもいいだろう。

「なるほどね。じゃぁ試してみる?」

 4人は顔を見合わせて、アイコンタクトでも取ったかのように、頷く。

「「「「戦わない」」」」

 4人が出した答えは、戦わないだった。

「一応、理由も聞いていいかな?」

「絶対に攻略しなきゃいけないわけじゃないので、無理に倒す必要がないからです」

「4人とも、その判断に辿り着けたのは偉いぞ! ウルたちは無理する必要なんて、どこにもないからな。とはいえ、お父さんたちはこのダンジョンを調査しなきゃいけないので、進む必要があるわけです。ゴチャゴチャした乱戦は、ウルたちにはまだ早いから……骨! お前さんが蹂躙しなさい」

「せめて名前で呼んでほしいでござる。蹂躙ってことは、手加減無しでオーケーでござるか? それなら、S級スケルトンたち、行くでござる」

 収納していたS級スケルトンを20体ほど呼び出して、部屋に突っ込ませた。強くてもLv100程度の相手とSランク相当のスケルトンたちが戦えば、火を見るより明らかな戦闘結果が……1分もしないうちに、ゴブリンキングまでドロップに変わっていた。

 ミーシャたちは、骨たちが蹂躙する姿を見てはしゃいでいる。何て言うかね、S級スケルトンなんだけど、動きに支障がないように模様が施されてたりするんだよね。最近のスケルトンは、身だしなみにも気を遣うようになったのかな?

 後で聞いてみたら、スケルトンは正直見た目が微妙だから、コーティングついでに色々遊んでみた! とバザールと綾乃が言っていた。遊んでみたって……確かに、忌避感はほとんどなくなったけど、見た目が金ピカとか銀ピカに、赤い奴までいるんだから、何て言っていいか困る。3倍早く動いたりしないかな?

 特筆することなく、今日は15階の階段まで到達できた。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

処理中です...