ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1897話 俺の出番無し

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 今日は時間短縮のために、ゲートを使います! 移動に時間かけるのは、何かもったいない気がしてね。ダンジョンの近くにゲートを設置して、そこへ移動してゲートをいったん消した。

「ウル、ここからは自分の思うように、指揮をとってみて」

 ミリーはウルにそう言うと、きりっとした顔になったウルが、

「ダンジョンは4時の方角、距離は1キロメートルほどです。亜人の森なので、人型の魔物がいるので、遠距離攻撃の弓には注意してください! 索敵しながら進みます! 隊列は、先ほど決めた通りの隊列になってください!」

 おや? ウルが指揮をとるのか。隊列と言われても、俺何も聞いてないんだけど……バザール、お前は? お前も知らないか。綾乃は……一緒で知らないみたいだな。ウルの隣にはスカーレットがいるので、もう1人のアマレロを探すと、ブラウニーたちの指揮をとっていた。

 邪魔するのは悪いと思ったが、アマレロに隊列のことを聞くと、準備している間にスカーレットとミリー、カエデ、リンド、ウルの5人で隊列をいくつか決めたらしい。その中に俺たちの居場所は……ないの? じゃあ何をすればいいんだ?

 アマレロは首を傾げながら、見学? と言っていた。

 俺は自分で戦いたいからダンジョンに行こうとしたのに、既に目的からずれているんだが! あ、自由ってことは進路とは違う場所の敵なら、倒しても問題ないか。聖獣4匹とテトたち3匹は、俺の監視として近くにいるしな。バザールも綾乃もいるから、大丈夫だろう。

 森を進む隊形は、ミーシャ、スミレ、ブルムが先頭で周囲にはスライムたちが待機している。そのすぐ後ろに、斥候のソフィーがいて、ミーシャたちに移動の際に注意する点などを、教えながら森の中を進んでいる。

 その後ろに前衛のシェリル、エレノア、サーシャ、メルフィ、ネルがいる。その後ろにウルとイリアとレミーがいるな。ミリーは指導役っぽく後ろにいたが、いつの間にかミーシャたちの後ろに移動していた。

 カエデとリンドは……ウルの更に後ろだな。

 そう言えば、ミーシャたち3人の武器は、ミリーと同じ棒だったな。しかも世界樹の枝で作られた、使いやすい棒である。何で3人とも棒術なのか気になったので、カエデに聞いてみた。

「本当は、刀とか使ってほしかったんだけど、まだ子どもでしょ? リーチが圧倒的に足りないのよね。だから、使い勝手が良くて破壊力のある世界樹の枝を貰えたから、3人に合わせて作ったのよ」

 なるほど、子どもが大人と同じ刀を扱えるわけもない。棒術であれば、そのリーチを多少なんとかできるってことか。薙刀は癖があるから、棒術をチョイスしたようだ。

「ウルは、3人のまとめ役だから、魔法を中心に使うのよ。指揮をとりながら、攻撃に参加する形ね。あの子の武器に見覚えあるでしょ?」

 ウルの持っている武器……杖を見る。うん、見覚えあるわ。俺が作った、負担を減らす魔核や威力を上げる魔核が複数付いている、インチキ杖ですわ。作った当初はそれなりに使ってたと思うんだけど、威力が上がりすぎるので細かな調節が難しくて、最後に使ったのは……メテオを使った時かね?

 半年くらい前に、ミリーたちにあの杖使ってないなら、欲しいって言われて似たような杖もあるし渡した奴だな。何に使われるかと思ったら、ウルが使うためだったんだな。

 おっと、オークが……いや、出てこなかった。正確には、ミーシャたちが見つける前に、イリアの風魔法が頭を吹き飛ばしドロップに変えていた。オークはアウトなんですね。

 ホモークのオリバーたちとは仲がいいようだけど、それはあいつらが紳士なだけであって、問題ないと判断されているから、仲良く話せているみたいだな。他のあのエリアで働いている魔物には、合わせていないってさ。で、オークは、メス……女なら年は関係ないらしい。娘たちの視界には入れたくねえな。

 次に出てきたのは、人食い鬼とも呼ばれているオーガだ。体はオークより一回り大きく、体が引き締まっている印象だ。4匹出てきたのだが、3匹はすぐにスライムたちに拘束され、四対一にいつの間にかなっていた。

 ミーシャたち3人が、オーガの前に立ち年少組の前衛陣は、ウルが前に来るのを邪魔しないように左右に寄って、ウルを挟む隊形になっていた。

「ミーちゃん、スーちゃん、ムーちゃん、土魔法で先制するよ。ロックバレット!」

 石礫が10個ほど作り出され、オーガの全身を叩くように撃たれた。

 たたらを踏んだオーガに3人が、前と左右から攻撃を仕掛ける。身長差があることは理解しているようで、無理に高い位置を狙わず3人とも膝を中心に攻撃をしている……

「なぁ、子どもたちのレベルを考えたら、ウルのロックバレットでオーガが死んでもおかしくないよな?」

「そうでござるな……鑑定結果を見ても、大した強さじゃないでござるよ」

「バカね、あんたたち。強くてニューゲームじゃないんだから、強すぎる状態で戦う訳ないじゃない。ダンジョンを体験するのに、強いままだとただのハイキングと一緒よ」

 俺とバザールは、首を傾げた。

「チビ神から、子どもたちの力を抑えるために、アイテム召喚できるようにしてもらったの、忘れたの?」

 そう言われて、ミーシャたちが他の子たちを怪我させないように、ステータスを制御できるアイテムを召喚できるようにしてもらったんだった。

「抑えていると言っても、極端に押さえられているのは、攻撃力に直結する力だったり魔法の強さだったはずよ。スピードも少しは抑えてるんだったかな?」

 ただ、防御に関するステータスは、まったく制限していないのだとか。ダメージは通らなくても、叩かれれば痛いんだよね。なかなか不思議な現象だよな。まさにゲームの世界ってかんじだわ。

 オーガの足にダメージが貯まり、膝をついた。ウルは、声を出しながら使う魔法を伝えて、上から当たるように軌道を設定しているな。

 それにしても、大分ステータス抑えている気がする。オーガは苦し紛れに反撃しているが、かわされるか他の3人からサポートが入るか、安定した連携だな。

「少し連携が上手すぎやしねえか?」

「シュウって、あの子たちの訓練風景見たことないの? あんたの奥さんたちを相手に、四対一で良く戦ってるわよ。人型に慣れているし亜人の森だったから、同行を許可したんじゃない? 発見されたダンジョンの中も、探索済みの3階までは8割以上が亜人だって聞いてるし」

 俺たちの知らないことを、こいつは何故知っているんだ? 妻たちに聞いたのね。

 そんなことを話している内に、オーガが倒れた。

「みんな、良く動けてるね。次は、残りの3体を相手にしてみようか。ステータスの制限を少し変えるわよ」

 ウルたち4人は、妻たちに設定を変えてもらっている。素早さは変えていないようだが、動きに違いがないか確認しているな。そういえばこの子たちって、小さい頃からステータス制限したりしているから、ステータスが変わっても簡単に適応できちゃうんだっけ?

 オーガの拘束が解除され、四対三の戦いが始まった。
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