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第1883話 決着
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「えっと、あんたらが冒険者ギルドの護衛任務の範囲として、自衛行動をとったのは理解している。で、衛兵や周りの人間に被害が出ないようにしたのも理解した。が、さすがに護衛主の行った物損を衛兵に拘束されまいと、更なる物損被害を出したのは街を治める者として見過ごせないのですが……」
俺たちは、商人の拠点にしている宿へ行こうとしたのだが、途中で冒険者ギルド職員が現れ、冒険者ギルド内で話し合うことになり連れてこられた。
その部屋で俺は、物損行為を行った商人と護衛行動による、周囲の建物への物損被害について、商人・護衛の冒険者・冒険者ギルド職員(一応ギルドマスターらしい)に向けて言葉を発した。
「それは、衛兵がこちらの雇い主を拘束しようと、動かなければ起こらなかったトラブルですので、こちらとしては過失はありません」
「で、冒険者ギルドの判断は?」
「概ね、こちらにいるダブルの冒険者、カミーユ様の判断を支持します。ですが、衛兵が動く原因となった物損については、全額保証するべきですね。護衛対象を守るために起こった物損に関しては、半額をギルドから保障という形で支払わせていただきます」
「ということは、半分は被害を受けた本人か、領主である俺がどうにかしろってことか? それは、冒険者ギルドのルールとして、何かに明記されている物か?」
「ルールとして明記されてはいませんが、今回に関してはカミーユ様の判断は間違っていなかったと、冒険者ギルドとしては考えています。ですが物損が起こってしまったので、こちらの厚意として半額は保証させていただこうと考え、提案させていただきました」
冒険者ギルドとしては、カミーユとやらの判断が間違っていないってことか。その上で、物損が起こったのはこちらの衛兵の所為であり、カミーユには非は無い。だけど、厚意として金は半分出してやるね。
「ちょっと、別室をお借りさせていただきます。ゼニス、行くぞ」
「ちょっと待ってください! 話し合いはここで行っていただきたい」
「ん? 何故、機密情報が含まれる内容を話すのに、あなたたちの前で話さないといけないんですか? それに交渉事であるなら、一時退室は普通ですよね? 私は財務担当ではありますが、商人でもありますので領主が若いとはいえ、あまり侮らないでください」
ゼニスがピシャリとシャットアウトしてくれた。俺たちは案内された部屋へ入る。
「さて、どうせ盗聴や穴が開いててこっちを見てるだろうからな。シュリ、魔道具を出してくれ」
シュリに出してもらったのは、よく密談に使われる遮音結界の劣化版と同じ見た目の魔道具だ。遮音結界の劣化版というが、風魔法の効果で空気の密度が厚い層と薄い層を作りだして、音の拡散を防ぐ魔道具だ。
まぁ、見た目だけって言うのは、バザールと綾乃が暇つぶしに、クリエイトゴーレムで遮音結界と同等の効果を作ったのだ。簡単に言えば、魔道具から一定の距離に真空の層を作りだす物だ。
これには欠点があって、一定時間以上使うと中の空気が濁るため、換気が必要になるのだ。まぁ、長時間使う訳じゃないので、何の問題も無い。
「ゼニス、どうするのがいい?」
「そうですね……シュリさん、一応ミリーさんに連絡を取って、今回の件ミリーさんならどう判断するか、聞いてもらってもよろしいですか? ふう……私としては、商人には物損のお金を払ってもらって、ギルドからは一切払わせない方がよろしいかと思います」
どういうことだろう? と思ったら、
「被害額は大したものではありません。なので全額こちらで払って、広告に使わせていただきましょう。いくら冒険者ギルドの規定として問題なかったとしても、被害を受けた人からすれば理不尽です。それと、ギルドの規定とはいえ、街のルールを犯した者には罰を与えましょう」
ん? それが無理だから、ここで話しているんじゃないのか? 俺と話しながら、タブレットで何かを確認して、ニヤリとしているので誰かから罰を与える方法を教えてもらったのだろう。
「報告します。ミリーさんも概ね冒険者ギルドの言い分が正しいと、判断しているようです」
「やはりそうですね。冒険者ギルドとしては間違っていないですが、街の規則には詳しくなかったようですね。では、戻りましょうか。シュウ様、後の話はこちらに任せてください」
了解了解、全部ゼニスに任せるよ。10分ほどの話し合いを終え、元の部屋へ戻った。
「お待たせしてすいません。話し合った結果ですが、護衛行為によって生じた周囲の建物などへの被害は、私たちが私費で補償するので冒険者ギルドからは、支払いは必要ありません」
「了解しました。では、これにて話し合いは「ちょっと待ってください」……なんですか?」
「私は、周囲の建物への被害について話しただけです。ですが今回は、公共物の破損がありますので、その加害者のカミーユさんとは、別の話をしないといけません。冒険者ギルドとして立ち会いたいのでしたら、かまいませんが、いかがでいたしますか?」
良く分かっていないようだが、頷いているので話が進んだ。
「ギルドの規定として、護衛行為に問題は無かったのは理解していますが、護衛行為によって公共物を破損させてしまった行為については、中立地域のルールで裁かないといけません」
「待ってください。護衛行為によって起こった被害は、冒険者ギルドと帝国の規定上、問題はないはずです!」
「それは、帝国領土内での話です。今言ったように、中立地域ではルールが違うんですよ。1つの街で経済をできる限り完結させる必要がある中立地域では、公共物の破損は重罪なのです。いくら護衛行為だったとしても、重罪を無効にすることは出来ません」
そう言うことか。俺の街は全部、中立地帯になるからな。帝国や王国のルールとは違うルールがあってもおかしくはない。でも、何でこんな回りくどい事してんだ?
「重罪を知らなかった、で済ませる訳にはいかないですよね? ですが、冒険者ギルドとしては、ダブルにもなった冒険者を犯罪者にしたくは無いですよね? ですから、ここは1つ提案があります」
ふむふむ、ゼニスは何かをさせたいみたいだな。
「今回の発端は、そこの商人が領主に詐欺をしようとしたことです。カミーユさんは護衛として十分な働きをしていましたが、不幸な行き違いで重罪になってしまうかもしれない状況です。なので1つ、取引をしましょう。そこの商人の身辺調査と、今回関わった全ての書類を提出するように依頼してください」
今から、身辺調査はする意味あんのか? それに書類を提出しろって依頼するとはなんぞや?
いくつかやり取りがあり、商人は暴言を吐いているが、ギルドマスターとゼニスの間で、合意を取り付けたようだ。
後で聞いた話だが、冒険者ギルドへ依頼する際に、犯罪行為は行わないという制約があるらしい。その制約を破った可能性がある際は、家宅捜索のようなものを行うことができるらしい。これは、冒険者ギルドがあるすべての街で適用されるのだとか。
それなら、フレデリクを出るきっかけになった、国からの指名依頼は? と思ったが、あれは国王がだした命令ではあったが、実行に移したのがフレデリクの領主の寄り親だった、ナンチャラ侯爵だかの領主館に家宅捜索が入ったらしい。
まぁ冒険者ギルドはポーズだけで、圧力をかけられてそんな依頼を受けた、フレデリクのギルドマスターやその上司をクビにしただけで話が終わったということだ。
色々あるんだそうだ。
俺たちは、商人の拠点にしている宿へ行こうとしたのだが、途中で冒険者ギルド職員が現れ、冒険者ギルド内で話し合うことになり連れてこられた。
その部屋で俺は、物損行為を行った商人と護衛行動による、周囲の建物への物損被害について、商人・護衛の冒険者・冒険者ギルド職員(一応ギルドマスターらしい)に向けて言葉を発した。
「それは、衛兵がこちらの雇い主を拘束しようと、動かなければ起こらなかったトラブルですので、こちらとしては過失はありません」
「で、冒険者ギルドの判断は?」
「概ね、こちらにいるダブルの冒険者、カミーユ様の判断を支持します。ですが、衛兵が動く原因となった物損については、全額保証するべきですね。護衛対象を守るために起こった物損に関しては、半額をギルドから保障という形で支払わせていただきます」
「ということは、半分は被害を受けた本人か、領主である俺がどうにかしろってことか? それは、冒険者ギルドのルールとして、何かに明記されている物か?」
「ルールとして明記されてはいませんが、今回に関してはカミーユ様の判断は間違っていなかったと、冒険者ギルドとしては考えています。ですが物損が起こってしまったので、こちらの厚意として半額は保証させていただこうと考え、提案させていただきました」
冒険者ギルドとしては、カミーユとやらの判断が間違っていないってことか。その上で、物損が起こったのはこちらの衛兵の所為であり、カミーユには非は無い。だけど、厚意として金は半分出してやるね。
「ちょっと、別室をお借りさせていただきます。ゼニス、行くぞ」
「ちょっと待ってください! 話し合いはここで行っていただきたい」
「ん? 何故、機密情報が含まれる内容を話すのに、あなたたちの前で話さないといけないんですか? それに交渉事であるなら、一時退室は普通ですよね? 私は財務担当ではありますが、商人でもありますので領主が若いとはいえ、あまり侮らないでください」
ゼニスがピシャリとシャットアウトしてくれた。俺たちは案内された部屋へ入る。
「さて、どうせ盗聴や穴が開いててこっちを見てるだろうからな。シュリ、魔道具を出してくれ」
シュリに出してもらったのは、よく密談に使われる遮音結界の劣化版と同じ見た目の魔道具だ。遮音結界の劣化版というが、風魔法の効果で空気の密度が厚い層と薄い層を作りだして、音の拡散を防ぐ魔道具だ。
まぁ、見た目だけって言うのは、バザールと綾乃が暇つぶしに、クリエイトゴーレムで遮音結界と同等の効果を作ったのだ。簡単に言えば、魔道具から一定の距離に真空の層を作りだす物だ。
これには欠点があって、一定時間以上使うと中の空気が濁るため、換気が必要になるのだ。まぁ、長時間使う訳じゃないので、何の問題も無い。
「ゼニス、どうするのがいい?」
「そうですね……シュリさん、一応ミリーさんに連絡を取って、今回の件ミリーさんならどう判断するか、聞いてもらってもよろしいですか? ふう……私としては、商人には物損のお金を払ってもらって、ギルドからは一切払わせない方がよろしいかと思います」
どういうことだろう? と思ったら、
「被害額は大したものではありません。なので全額こちらで払って、広告に使わせていただきましょう。いくら冒険者ギルドの規定として問題なかったとしても、被害を受けた人からすれば理不尽です。それと、ギルドの規定とはいえ、街のルールを犯した者には罰を与えましょう」
ん? それが無理だから、ここで話しているんじゃないのか? 俺と話しながら、タブレットで何かを確認して、ニヤリとしているので誰かから罰を与える方法を教えてもらったのだろう。
「報告します。ミリーさんも概ね冒険者ギルドの言い分が正しいと、判断しているようです」
「やはりそうですね。冒険者ギルドとしては間違っていないですが、街の規則には詳しくなかったようですね。では、戻りましょうか。シュウ様、後の話はこちらに任せてください」
了解了解、全部ゼニスに任せるよ。10分ほどの話し合いを終え、元の部屋へ戻った。
「お待たせしてすいません。話し合った結果ですが、護衛行為によって生じた周囲の建物などへの被害は、私たちが私費で補償するので冒険者ギルドからは、支払いは必要ありません」
「了解しました。では、これにて話し合いは「ちょっと待ってください」……なんですか?」
「私は、周囲の建物への被害について話しただけです。ですが今回は、公共物の破損がありますので、その加害者のカミーユさんとは、別の話をしないといけません。冒険者ギルドとして立ち会いたいのでしたら、かまいませんが、いかがでいたしますか?」
良く分かっていないようだが、頷いているので話が進んだ。
「ギルドの規定として、護衛行為に問題は無かったのは理解していますが、護衛行為によって公共物を破損させてしまった行為については、中立地域のルールで裁かないといけません」
「待ってください。護衛行為によって起こった被害は、冒険者ギルドと帝国の規定上、問題はないはずです!」
「それは、帝国領土内での話です。今言ったように、中立地域ではルールが違うんですよ。1つの街で経済をできる限り完結させる必要がある中立地域では、公共物の破損は重罪なのです。いくら護衛行為だったとしても、重罪を無効にすることは出来ません」
そう言うことか。俺の街は全部、中立地帯になるからな。帝国や王国のルールとは違うルールがあってもおかしくはない。でも、何でこんな回りくどい事してんだ?
「重罪を知らなかった、で済ませる訳にはいかないですよね? ですが、冒険者ギルドとしては、ダブルにもなった冒険者を犯罪者にしたくは無いですよね? ですから、ここは1つ提案があります」
ふむふむ、ゼニスは何かをさせたいみたいだな。
「今回の発端は、そこの商人が領主に詐欺をしようとしたことです。カミーユさんは護衛として十分な働きをしていましたが、不幸な行き違いで重罪になってしまうかもしれない状況です。なので1つ、取引をしましょう。そこの商人の身辺調査と、今回関わった全ての書類を提出するように依頼してください」
今から、身辺調査はする意味あんのか? それに書類を提出しろって依頼するとはなんぞや?
いくつかやり取りがあり、商人は暴言を吐いているが、ギルドマスターとゼニスの間で、合意を取り付けたようだ。
後で聞いた話だが、冒険者ギルドへ依頼する際に、犯罪行為は行わないという制約があるらしい。その制約を破った可能性がある際は、家宅捜索のようなものを行うことができるらしい。これは、冒険者ギルドがあるすべての街で適用されるのだとか。
それなら、フレデリクを出るきっかけになった、国からの指名依頼は? と思ったが、あれは国王がだした命令ではあったが、実行に移したのがフレデリクの領主の寄り親だった、ナンチャラ侯爵だかの領主館に家宅捜索が入ったらしい。
まぁ冒険者ギルドはポーズだけで、圧力をかけられてそんな依頼を受けた、フレデリクのギルドマスターやその上司をクビにしただけで話が終わったということだ。
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