ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,881 / 2,518

第1881話 呆れた

しおりを挟む
 俺には鑑定スキルとダンジョンマスターのスキルで、ギルマンって奴が複数の罰賞を持っていることは分かっているが、残念ながら今回の詐欺に当たる罰賞を持っていないんだよね。まぁ、殺人教唆とか奴隷殺しとか違法奴隷の売買って罰賞があるので、護衛もさすがに手を引くだろう。

 それにしても、奴隷殺しって殺人とは別枠なんだな。初めて知ったよ。厳密に言うと、犯罪奴隷を殺すと付く罰賞で、殺人の1ランク下に位置付けられる罰賞なのだとか。殺人を持っている場合は、奴隷殺しの罰賞は上書きされてしまうのだ。シュウはこの時初めて知った称号である。

 商人はかなり余裕の表情をしているけど、最近真実の瞳使ってないんじゃないか? ん~さすがにないか? なら可能性としてありそうなのは、罰賞を隠蔽できるアイテムか? 俺は席を外し、検索をかけてみた。それらしいアイテムは無いな。

 こいつの自信はどこから来るんだ?

 兵士によって真実の瞳が持ち込まれた。念のための確認動作で、持ってきた兵士2人が手を置き問題なく表示されることを見せた。

 次に、自分たちが他の犯罪には加担していないことを証明するために、護衛の5人が真実の瞳を起動させ、罰賞がついていないことを確認する。

 ニヤケ面をした商人が手を乗せると……もちろん、真実の瞳が映し出したのは、『殺人教唆』『奴隷殺し』『違法奴隷の売買』と表示された。

「馬鹿な! 私はこんなことをしていない! 何で表示されるんだ! さては、私を陥れるために準備した奴だな!」

 そんなことを言うが、さすがに護衛たちもドン引きして、こちら側に寝返った……というのは変だが、ギルマンを援護することは無くなった。

 契約違反だ! とか騒いでいるが、護衛から見れば自分たちが知らない間に、犯罪の片棒を担がされるところだったのだ。内心穏やかではいられないよな。

 こんな拙い方法で街の権利をどうやって奪おうとしてたのかね?

「あ~、君たち、さっきも言ったけど、敵がいる場合はしっかりと情報収集するべきですね。冒険者ギルドにも非はあったかもしれません、あなたたちはシングルなのですから、ギルドからの信頼も厚いですよね? 先にギルドを通じて、罰賞などの確認をするべきでしたね」

 ゼニスにそう言われ、今回のように人と人が関わるケースは、可能な限り情報を収集してから受けることを決めたいと思います、だってさ。こちらの忠告を受け入れられる度量はあるらしい。

「さて、シュウ様。このアホはどうしますか?」

「あまり時間がないから、暗部を呼んで情報抜き出してもらおう。何でこんなことしたのか、強気だった理由とか、背後関係がないか徹底的にすっぱ抜いてもらおう」

 っと、元からその予定だったのか、俺が言い終わると同時に鬼人の皆様が連行していった。あまりの手際の良さから、シングルの冒険者たち5人も呆気に取られている。

「あっと、そっちのリーダーの人、依頼書はしっかりと持っていますよね? 今からフレデリクの冒険者ギルドに行くから、そこで少しお話ししましょう」

 ブンブンと縦に首を振っているので、問題なさそうだ。領主館から冒険者ギルドへ急いで移動する。

 そう言えば、冒険者ギルドのマスターは、他国から派遣されるようになったようだ。特に大国の中で選ばれたマスターは、不正に加担しやすいので他国からマスターを派遣するようだ。それでも不正はなくならないらしいが、以前に比べれば減っているらしい。

 俺の件もあるし、スカルズのケモミミ3人娘の件もあるからな。王国内の冒険者ギルドマスターは、完全に信用がガタ落ちしており、各街のマスターとサブマスター2人は、他国の人間で占められている。

 国ごとの派閥があったようだが、それでは駄目だと理解したのか、国と密接関係にあった冒険者ギルドは、半分以上は独立した組織になったらしい……国とは別の組織だって、初めは聞いてたんだけどな。

 今回の件をギルドマスターへ伝え、どう対処するかはギルドに任せることにした。情報を抜き取ったら、冒険者ギルドにギルマンを連れてくることをお願いされたよ。被害にあいそうになって、不敬罪もあったが、ギルドでも調べて対策を考えたいと言われたからね。

 で、問題は……ギルマンの犯罪が立証されて、被害者である俺が取り押さえたとなると、ギルマンの持つ商会が俺の物になってしまうのだが、ケープマインには正直いい思い出が無いのでいらないんだよね。かといって、クズの家族に権利を引き継がせるのはありえない……

「ゼニス、なんかいい方法ないか?」

「そうですね……おそらく家族にも罰賞があると思うので、奴隷落ちは間違いないですし……っと、ちょっと待ってくださいね」

 何かを思い出したのか、タブレットを操作して何かを調べ出した。

 ギルドマスターとシングルの冒険者たちは、何か話し合いがあるようで部屋を移動しているので、ゼニスも遠慮なくタブレットを使っているな。

「あ~ありました。ギルマンに冤罪をかけられた商人の家族を奴隷として、購入していますね。そこそこ優秀だったので、支店を任せている人材がいるので、その家族に引き継がせましょうか? その家族も恨みを持っている人間が多いと思いますので、ケープマインで強制労働させるのもありかもしれませんね」

 ケープマインは鉱山都市なので、犯罪奴隷が鉱山を掘っているんだよな。そんなところに放り込まれれば、冤罪とかで恨みを買って放り込まれた奴隷たちにリンチされるかもな。噂では、ガス抜きのために生贄にされる奴隷もいるって話だしな。女なら、体力が無ければ性の捌け口にされたりとかね。

「ギルマンは、確実にケープマインの鉱山にぶち込もう。家族は、罰賞が無ければ街外退去で、有れば度合いにもよるけど鉱山行きかね? 後、ケープマインの領主は絶対に便宜をはかっているから、冒険者ギルドで対応してもらうべきかな?」

「ギルマンと家族は、それで問題ないと思いますが、ケープマインの領主は深紅の騎士団に任せた方が良いのではないですか? ギルドによって領主が排除されても、寄り親の貴族が自分の手の物を派遣して、大して変わらない状況になると思いますよ」

 なるほど。特に国の重要な資源を生み出す場所なら、国の直轄地だと思うが、それでも派閥はあったりするのだろう。国王にとって都合のいい領主の方が、何かと便利だ。商会を例の家族に任せるなら、俺の商会と提携する形にするだろうから、金にがめつい領主が来ると困るしな。

「よし、そこらへんは任せる!」

 昼食を食べながら、美味いな……とか考えていると、暗部から連絡が入る。

 どうやら、黒幕はいないようだが、横のつながりで同時期に仕掛けようという話が回ってきて、ほぼ勝てるであろう作戦で今回の騒動を起こしたらしい……あの杜撰な計画で、勝てると思っていたのだろうか?

 後、強気だった理由は、免罪符と呼ばれる意味不明なアイテムを購入して、罰賞を消したためだとか……詐欺する前に、詐欺に引っかかってるやんけ! 単なるバカだったってことだな。この様子だと、他の街も似たり寄ったりなのかね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...