ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,866 / 2,518

第1866話 もうすぐで3日目

しおりを挟む
「結局、2日目で抜けられたのは、2階の8割くらいまでね」

 開始から48時間経とうとしている今、綾乃が2日目の総評のようなことを言い始めた。正直昨日の夜は、トラップと格闘する魔物を見るのに飽きてしまい、バザールを残して俺と綾乃は寝てしまったんだよね。

「地上を進む魔物はそうでござるが、3陣に混ざっていた飛行型がマッピングに有効と分かって、3階の半分ほどまでマッピングはされているでござる」

「それよそれ、何であんたの階で飛行系が全部死んでるわけ?」

「それはでござる。強風+グネグネ一本道+部屋の床壁天井に剣山を仕込んだ場所で、全滅したでござる」

「強風って……そんなトラップもあるのか。それに一本道ってあの部屋だろ? なんで飛行タイプの魔物が死んだんだ?」

 死んだ場所をバザールが教えてくれたのだが、巨人じゃないとクリアしにくいマップの中に、巨人には細いけどオークくらいなら余裕で通れる、グネグネした一本道があり、大きいと強風でバランスを崩して剣山に……みたな部屋で飛行タイプの魔物が全部死んだらしい。

「なんというでござるが、その様子を見てくれたら、何となく納得してもらえると思でござる。そのシーンをぽちっとでござる」

 そう言って飛行タイプの魔物が通るシーンを見せてくれた。

「へ~強風のトラップってどうなのかと思ったけど、飛行タイプの魔物だとこういう風になるのか……」

 そこに映し出されたのは、10匹程で突っ込んできた鳥の魔物なのだが、剣山や所々にある柱や障害物のせいで乱気流を作り出しており、少し進むとバランスを失いある鳥は壁に、ある鳥は天井に、ある鳥は地の底に……剣山に刺さって死んでしまった。

「何度か突入されたでござるが、強風って思っている以上に鳥タイプや蜂タイプには有効でござった! 攻めには使えないでござるが、ワイバーンやドラゴン系ならこの強風も無視して飛べると思うでござる」

「でもそれっておかしくない? 魔物って高速移動する際に、魔法で自分の身を守るわよね? それで風の抵抗を受けにくくするのに、強風程度で飛べなくなるの? 飛ぶ速度より風速の方が速いなんてことは無いよね?」

「あの強風トラップの風速は……大体、風速100メートルくらいでござるな」

「はぁ? 人間は吹っ飛ぶけど、その程度で高Lvの魔物が飛べなくなるもんなの?」

「む~、言われてみると、風速100メートルは、音速の3分の1くらいでござるな。その程度であれば、Lv100の飛行タイプの魔物でなら余裕で出せる速度でござるな。何で制御を失ったのでござろう?」

「そこらへんは、検証してみないと分からないから、今は議論しても仕方が無いだろ。とりあえず飛行タイプの魔物には何故か有効って事実だけあればいいさ。チビ神の話だと、48時間経ったらDPの制限が解除されるから、DPが大量にある奴らは2日間で得た情報をもとに、今まで以上に魔物を投入してくるぞ」

「そう言われればそうね。それより、飛行タイプの魔物に罠を丸裸にされて、落とし穴通路も結局突破されちゃったわね。飛行できる魔物に落とし穴を発動させてから、落ちるきる前に飛ばせて正解の道を発見させるとは思わなかったわ」

 昨日のダイジェストのようなものを見ながら綾乃が呟く。

 確かに落ちても飛べれば死なないので、指揮官の様な魔物が現れて飛行系の魔物でも、ホバリングのできる蜂を使って正解の通路を導き出していたのだ。30分毎に入れ替わるのもバレて、今では安全に通れる場所になっている。

「シュウは、今日でどこまでたどり着くと思う?」

「4階には来るんじゃないの? 正直移動するのが面倒なだけで、3階はもうほぼ安全に通過できるからね。バザールの3階に至っては、移動距離が綾乃のフロアの4分の1もないし、すぐに4階までは来るでしょ」

「でも、4階に来て通路を進み始めれば……ふざけんな! って言いたくなるわよね、これって。今の様子だと、半分くらいの種族は1割も進めずに、リタイアするしかないわよね。4階のボス部屋なんて、正直無理ゲーだと思うわ」

「そうでござるな。この階層を進める魔物で、ボス部屋の2匹を相手にするのは無理でござるよ。5階を作っているときにそれを聞かされて、それが5階では? と思った位でござる」

「でもさ結局のところ、5階のボスの方が凶悪で、更にラスボスはもっと凶悪だもんね……でも、4階はLvが高い魔物が揃ろって、高価な装備があれば倒せると思うけど、5階のボスって指揮官のようなものがいれば、倒せるもんなの?」

「一応検証したけど、特攻のついている武器があれば倒せることは倒せるよ。こいつらはLvをカンストさせてあるから、Lv600以上でタフで力のある魔物が100匹もいれば倒せるんじゃない?」

「昨日の1階で無双していたような魔物がいれば、簡単に倒せるのにね……大きい魔物を使えないだけで、Lvが高くてもこれだけ不利になるんだから……不思議よね」

 種族によって超えられない壁があるので、今回のダンジョンのコンセプトとしてみると、辿りつけた魔物からすれば相性としては最悪なタイプだと思う。ボスの強さだけで考えれば、4階のボスの方が圧倒的に強いのに、最終的にたどり着ける魔物として考えると、5階のボスの方が圧倒的に倒し難い。

 今回のダンジョンのコンセプトは、人間が中心に考えられているので、こういう矛盾が起きてしまうのだ。

 俺たちからすれば、面倒なのは4階だな。でも、魔物で考えると5階になるのだから……あら不思議!

「そろそろ48時間が経つでござる。魔物が大量に流れ込んでくるでござるよ。情報収集した中で、進みやすく強い魔物が増えるはずでござるから、確認だけはするでござる」

 バザールに注意されて、くだらない話を止める。

『さーて、バトルも始まり48時間が経とうとしています。トラップだけでここまで翻弄する物を作る防衛側もこれまで! もうすぐでDP使用制限が解除されます! 今までは序の口、ここから本当の攻撃が始まるのです!』

 おや? 解説者の声が変わったな。しかも、俺の事が嫌いな男神のようだ。自分が召喚したダンジョンマスターが、俺に負けたのかね?

『さぁ、48時間が経ちました! 攻め側のダンジョンマスターたち、気合入れろ! これだけ有利な条件で負けるとか、マジであり得ねえからな!』

 発破でもかけてるつもりかね? いくら頑張っても無理だって。俺の戦力はリバイアサンだけじゃないんだからな!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...