ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,832 / 2,518

第1832話 良く分からん要求

しおりを挟む
 グリエルの言っていることが理解できなかった。

 人質? 何に対して? それより、地下通路で止めなかったのか? 何でグレッグに移動をしてるんだ? 分からないことが多すぎて、俺は混乱していた。

「人質を取った冒険者グループの詳細なのですが、帝国の冒険者ギルドに問い合わせたところ、シュウ様が関係して没落した貴族家の縁者がいるそうです。その冒険者グループは、その街から便宜を受けていたので、その復讐の線が大きいと思われます」

 なるほど、そこに繋がるのか。冒険者が便宜を受けていたって言うけど、それってメギドの話じゃねえよな? 攫った女冒険者を……みたいな?

「まだグレッグに着いていないなら、地下通路のダンジョンの中にいるんだよな? ちょっと待っと調べてみるわ」

 そう言って件の冒険者グループを探すと、グレッグからきている商人を襲っている最中だった。この商隊は……帝国の商人みたいだな。自分の国の商人に手を上げるってバカなのか?

 こいつらのステータスを覗いてみると、出るわ出るわ犯罪の称号のオンパレード。問題起こすのがこういった人種だって言うのは分かっているが、正しく生きている人たちを巻き込むなよ……

「あ~こいつらに便宜を図っていた街って、メギドじゃないか? それと、シングルじゃないって言ってるけど、こいつらトリプルに認定されてないのか?」

「ダンジョンのあった街と報告を受けているので、おそらく帝国ですからメギドかと……それと、トリプル認定はされていないそうです」

「ん~、もう一度問い合わせて、合わせてメギドからも情報を貰ってくれ、後動ける妻たちに、全員集合をかけてほしい。何をしなきゃいけないか分からないが、考えるのも動くのも数が多い方が助かる。レイリーにも兵士を動かせるように伝令をお願い」

 グリエルは近くで待機していた秘書に、冒険者ギルドへ再度問い合わせを命じ、シェリルが他の妻たちへ連絡を入れ、ガリアはレイリーに連絡を入れた。

「でさ、何か要求とかあったの? 人質ってことは、何かしらの要求をしたんじゃない?」

「それがですね……5人の命と引き換えに、ゴーストタウンの自治権を要求しています……」

「はぁ? そいつら頭大丈夫か? 俺の家族でもない冒険者を攫って、たかが5人でゴーストタウンを要求しているのか?」

「それなのですが、要求しても飲まれないことは分かっていると思います。ですが、それを利用して、冒険者を見捨てた街とか、使い捨てる街……みたいなラベルを張り、ゴーストタウンのイメージダウンをするのではないでしょうか?」

 ガリアが考えるのは、冒険者を見捨てた後の流れだった。

 なるほど、イメージ戦略か……

「で、それをすることによって、あいつらに何の得があるんだ?」

「予想に予想を重ねるのですが、あの冒険者グループの後ろに、それなりのスポンサーがいるのではないでしょうか? それをすることによって、そのスポンサーが利益を得ると考えられます」

「……例えば?」

「イメージダウンでこの街から離れる職人とかですかね?」

 なるほど、自分たちも見捨てられるなら……

「でもさ、普通の街ってもっとひどいことしてるよな? それで優遇している職人たちが、ゴーストタウンから逃げるかね?」

「そもそも、職人を優遇している街自体が少ないですね。スポンサーがゴーストタウンでも、他の街と同じような扱いを受けている前提で、話を考えているんじゃないですかね? だから少しでもいい条件を出せば、こっちになびくとか考えているのかと。

 こっちから引っ張った後は……おそらく、奴隷にでも落として、ゴーストタウンで培った技術を搾り取るんじゃないですか? いなくなったとしても、結果を出せていない工房の人間や、不正を行った事のある工房くらいじゃないですかね」

 そうなんだよね、ゴーストタウンでは、きちんと結果を残していれば、優遇措置を受けられるシステムがあるんだよね。そして、優遇措置にもランクがあって、そのランクで教えてもらえる技術が変わってきたりするんだよな。

 結果をって言っているが、悪評が立たなければ、最低ランクでも優遇措置を受けられるので、この段階で他の街よりかなり過ごしやすいんだけどね。優遇措置を受けていない人たちは、ゴーストタウン基準で最低ラインってとこかな。

 それでも素材が安く手に入り、他の街で考えればそれだけでも嬉しい事なんだけどね。

「そこらへんは今考えても仕方ないな……こいつらは、グレッグを通って帝国に逃げるつもりかね?」

「帝国側に逃げたからと言って、帝国のスポンサーかはわかりませんが、グレッグからは出るでしょうね。交渉をするつもりがあるか分かりませんが、少なくとも話ができる距離……1つか2つほど離れた街に行くのではないでしょうか?」

「まずは、向こうの出鼻をくじく必要があるな。確か、帝国側は壁作ってたっけ?」

「帝国側だけではなく、中立地帯は全部壁で囲っていますね。土木組が頑張ってくれています。出入口は、各大国側に1つしかありません。なのでそこを抑えれば、相手の出鼻はくじけるかと」

「そうだな。樹海側に戻るなら追えばいいか。まずは、中立地帯から逃がさないように考えればいいか。グレッグには、そいつらに触れなくていいって言っておいてくれ。グリエルとガリアは、スプリガンたちの所へ行って、あやしい動きをしている集団がないか調べてくれ。

 シェリル、みんなには最高ランクの装備を身に着けるように言っておいてくれ。従魔たちは……一応全員連れていくか。念のためシリウス君も連れてきてもらおうか。ステータスを見る限り、俺たちの敵ではないけど喧嘩を売ってきたんだから、全力で買ってやろう」

 面倒だけど、舐められるのは良くないので、全力で対応することに決めた。どこの誰がバックについているのか知らんが、すべてを引きずり出してやるからな!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...