ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1815話 予想外 そして最終兵器

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 シリウス君に作られた水流を見ながら、ターゲットに視線を合わせている。光源を水の中に用意しているので、影は見ることができるのだが……それが本当にターゲットの中は良く分からない。

 妻たちは、シミュレーションのときによく俺を見分けられたもんだ……だけど、この話には続きがあって、妻たちは影であっても俺のことが分かるらしい。だから、視界の悪い水の中でも問題なく俺を見分けることができて、簡単に捕まえることができたのだ。

 そんなことは知らずに、妻たちの能力に戦慄している中、シュリがチェインを伸ばした。

 引っ張り出されたのは……お前誰やねん!

 勇者のパーティーの誰かだとは思うが、どんな立ち位置のやつか分からないやつが引っ張り出されて……シュリが苦笑いしていた。

 水から引きずり出されたモブAは、苦しかったのか外に出たため、一気に息を吸っていた。そこにシュリが無情にも……拳を振り下ろした。モブAは状況もわからずに気絶していた。

 次にリリーがチェインを伸ばして……モブBを引きずり出し、シュリと同じように苦笑して、腹に拳を振り下ろしていた。

 って、ゲートに押し込む予定じゃなかったか?

「シュウ様、思ったよりターゲットを見分けるのが難しいです。ゲートに押し込んでも、また間違って引きずり出しそうなので……誰か、縛っておいてください」

 シュリが衝撃の事実を口にする。お前、シミュレーションを3回やって、3回とも俺を引きずり出したじゃないか! それなのに、見分けるのが難しいって……どういうことなの?

 とにかく2人減ったから、確率は上がっているはず……それから3人引きずり出すが、モブC、モブD、モブEを引きずり出してしまった。

「シュウ様、そろそろ4分経ちます。規格外の人間でもなければ、気絶してしまうと思います。もし対象が死んでしまったら困るので、解除するべきじゃないですか?」

 ピーチから、どうするか指示を仰いできた。

「シリウス君、マーカーがついている奴だけ、押し流すことって出来るか?」

 問題ないと返事が返ってきたのでお願いして、邪魔な勇者だけを押し流してもらった……最初っからこれでよかったんじゃないか? 結構細かくシミュレーションしたのに、シリウス君の万能能力の前に敗北している感じがする。

 マーカーのついている、この作戦の本来のターゲット……最終目標を無視して押し流し、食料を作り出す勇者と他のモブが、打ち上げられた魚のように部屋の中心で横たわっていた。

 ダンジョンマスターのスキルで部屋を確認しているが、咳き込んだりしているので、死んではいないようだ。これなら……

「シュリ、ターゲットを引っ張り出せると思うか?」

「入り口まで行けるなら、問題ないと思います」

 だよな……

「よし、咽ている間に引きずり出そう。引きずり出すのはリリーに任せる。シュリはもしもの時のために、防御を担当してくれ。魔法組は後ろからついていき、ターゲットを引きずり出したら、向こうの部屋の入り口に蓋をするんだ」

 予定とは違うが、ターゲットを捕まえられるチャンスを見逃すほど、俺は甘くないぞ。

 リリーがターゲットを引きずり出すが、勇者パーティーは息を吸うことに必死で、対応することも出来ずにいた。ライムが素早く部屋に蓋をして、俺たちは元の部屋まで戻る。

「間違いないですね。こいつが食料を生み出す勇者の方です。皆さん、ゲートに入りましょう。シュウ様、全員が入り終わったら、ゲートを消してください」

 ピーチが指示を出して、俺たちは移動を始める。勇者は、何やら言葉にならない声を発している。

 全員が移動したのでゲートを消して、勇者をその場に放置して囲っている従魔たちの後ろに移動する。さて、この勇者はどう反応するんだろうな? 最後まで抵抗をするのか、命乞いをするのか……それとも、第三の選択をするのか。

 5分ほどすると落ち着いたようで、周りを見渡す……

「大勢で1人の人間を囲むのは、卑怯じゃないかな?」

「そうか、囲うのは卑怯か……みんな下がれ、あの通路側まで移動しよう」

 囲んでいた包囲を解き、唯一の出口である通路側へ移動する。

「ほら、囲んでないぞ。これで卑怯じゃないだろ?」

「囲んでないとは言っても、出口を抑えられては卑怯としかいえないな」

「そっか、なら卑怯でもいいわ。お前に卑怯と言われても、何とも思わんしな。なんとなく、お前に合わせてみたが、これ以上付き合うのも面倒だしな。で、状況は理解できてるかな?」

「……お前がおそらく、諸悪の根源だと言われているダンジョンマスターだな? 非人道的なことを繰り返し、自分の利益のために他を蹂躙するクズだってことは、聞いているぞ」

「んで?」

「はぁ? 諸悪の根源は取り除かなきゃいけないだろ、そのために俺たちは勇者としてこの地に派遣されたんだよ」

「派遣されたね~、ってことは、やっぱり聖国が関わっているってことか。あいつら、本当に懲りねえな。お前さんは、諸悪の根源たる俺を殺すために来たと……そもそも、諸悪とは何を指す? 戦争か? 奴隷売買か? それとも……他に何がある?」

「自分の欲望のままに聖国を蹂躙して、聖国の人間だった獣人たちをDPとやらに変えたのだろ? トリプルの冒険者すら殺して、自分のために使っているのは知っているんだ。同郷のよしみだ、これ以上悪事を働かないと言うなら、痛み無く殺してやるよ」

「それって自分で調べたのか? そもそも聖国は、ありもしない神の名を騙り、人間以外の獣人やドワーフ、エルフなどを強制的に奴隷にして、お前たちが俺の街で攫った人たちみたいなことをしていたんだぞ。それを聖国の人間とはな……人権何て認めてなかったのにな、笑えるぜ」

「戯言を、知っているんだぞ! お前は、聖国から獣人やドワーフ、エルフたちを強制的に連れていき、言うことを聞かなかった街の獣人たちを、見せしめに殺したんだろうが!」

「都合のいいように情報を吹き込まれやがって……聖国のしたことを、全部俺のせいにして勇者をたきつけたのな。そんなことはどうでもいい、お前は聖国にとって都合のいい勇者なんだな。で、その勇者のお前が、何で街の人間を強姦したり、拷問まがいのことをしたんだ?」

「敵国の人間なんだから、何をしたってかまわないだろ? 何を不思議がっているんだ?」

「今の自分の言葉を思い返せよ。敵国の人間なんだからって、俺と聖国は敵対関係にあるんだろ? なら何をしたって問題ないってことだろ? それなのに、何で諸悪の根源なんていわれなきゃいけない、意味が分からん。地球の戦争でも、一応ルールはあったんだぞ、それを守らずに暴走する国もあったらしいけどな」

「ここは異世界だ、勇者だから何をしたっていいんだよ! 俺らは正しくて、お前らが間違っている、ただそれだけだ!」

「ジャイ〇ニズムとでも呼べばいいんかね……話し合うだけ無駄だな、言葉が通じてない。会話が成立してないからしょうがないな。こいつに、この世界の厳しさを教えてやろう。スペシャルゲストも連れてきているしな。お前らのような奴らは……目には目を歯には歯を、が効果的だろうな」

 そう言って、俺はこのクズ勇者のために呼び寄せていた3人を呼んだ。
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