ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1803話 噂話

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 そういえば最近、ディストピアにある噂が流れているらしい。俺の耳には入ってこないのだが、結構浸透してしまっているようだ。

 俺の耳に入ってこないのに、浸透具合がなぜわかるかと言えば、娘たちの報告書日記に『お父さんの噂をまた聞いた』みたいな文言があるのだ。日記ではお父さんなのに、呼ぶときは未だに『とーたん』と呼んでいるのだが、それは今は関係ない。

 で、『また』という部分が重要である。娘たちは、違う噂なら『また』とは書かずに、誰かの噂があったとか、どこかで何かあったみたいな文言をつけることが多いのだ。

 でも最近の報告書日記には、『また』という言葉が使われているうえに、『お父さんの』とついているので、俺の噂で同じ内容のものが巷に溢れ返っているのではないだろうか? 俺的には悪い噂じゃなければ、気にしないのだが……聞いても教えてもらえないから、困っている。

 妻たちに聞いても、苦笑するだけで内容を教えてもらえないのだ。あの様子から、俺以外のみんなは知っていると思う。

「ということで、ダマ。白状しなさい!」

 噂話を知っていそうで、意思疎通のできるダマを捕まえて、お腹ワシャワシャの刑に処しているところだ。

『主殿! やめてください! くすぐったいです!』

「なら、噂話をさっさと教えるのだ!」

『ヒィー、苦しい……教えたくても、奥方様たちに口止めされているので、絶対に言えないのです! 聞きたければ、奥方様たちを自分で説得してください! ヒィー、苦しい!』

 これだけやっても白状しないということは、喋ると妻たちにこれ以上のナニカをされるのだろう。ダマの口を割らせないナニカ……とは、何だろう。ダマから聞くのは諦めるしかないな。お腹ワシャワシャの刑は終わりだが、そのお腹……猫吸いをさせてもらおう。

 ダマのお腹に顔を埋めて、スーハースーハーと、猫吸いをする。ダマは諦めてなされるがままの状態だ。本当なら家猫たちでもやりたいのだが、あいつらは警戒心が強いからな……自分に益が無ければ、危険を感じてすぐに隠れてしまうのだ。

 そのくせ、自分たちの都合のいいように俺を使うのだから、困りものだぜ。テトは微妙だけど、ランとライは、顔が埋まるほどの猫吸いをしても動じないので、娘たちの部屋でくつろいでいるときに、たまに吸わせてもらっている。

 別に何が……とかじゃなくて、何となく吸いたくなるんだよね。特にさ、香箱座りの胸の部分とか、丸まって寝ているときのお腹の部分とかさ。分かる人にしか、分からんだろうな……

 妻たちは、誰一人分かってくれない。猫たちが可愛いけど、猫吸いの症状だけは理解してもらえなかった。だけど、俺には仲間がいる! それは、スミレとブルム、シンラの3人だ!

 娘たちは、ケットシーや家猫を抱き上げて、顔をよく押し付けている姿を見る。その時にクンカクンカしているのは、同類なので分かるのだ。そしてシンラだが、家猫の寝ている所に顔を埋めたり、ダマのお腹に抱き着いたり、いろんなところで埋まっている姿を見る。

 最近では、全身を埋もれさせながら、ランのお腹で猫吸いする姿も見られる。

 シンラに関しては、シュウの勘違いなのだが……シンラがあの体勢になるのは、プラムやシオンも猫たちが近くにいるのに、強引に抱き着いたり引き剥がしたりしないのだ。そのことを理解しているシンラは、逃げるために猫たちを利用しているのであって、猫吸いが目的ではない。

 スミレとブルムに関しては、猫の匂いが好きなのか猫吸いをよくするので、シュウの勘違いではない。

 ミーシャは猫吸いというよりは、逆に猫たちに吸われている。ミリーのキャットピープル……猫人の血の所為か、猫たちが集まるように寄ってくるのだ。その時に顔を押し付けられ、スンスンしている音が聞こえるので、吸われていると思う。

 猫も匂いを嗅ぐからな。指とか突き出すと、鼻を擦りつけるように嗅いだりするから……可愛いのだよ。

 ウルは猫より、犬……いや、オオカミ派なので、クロやギンのお腹に抱き着いている姿を見かける。オオカミの場合は、オオカミ吸いとでもいうのだろうか?

 ちなみに、コウとソウは、絶対に吸わせてくれない。前に娘たちがブラッシングの隙を見て、顔を近付けたら華麗にかわされていた。娘たちに出来ないなら、俺には不可能だろうな。

 スライムは希望もしていないのに、体を押し付けてくる。匂いは全くしない。ニコに至っては、たまに俺の顔にへばりついてくることもあるくらいだ。お前の体で張り付かれると、呼吸が出来なくなるから、マジで止めれ!

 嫌な予感を感じて振り向くと、ニコが俺に向かって飛んできていた。俺は学習しているのだよ。スライムは体を変形させて魔球のように曲がってくるので、避けるのは意味がないのだ。キャッチしてやるのが正解だ。

 捕まえて、窓の外へ放り投げる。

 さて、結局俺の噂って……何なのだろうか? 自分の足で街の声でも聞いてみるか?

「ダマ、お前から聞くことは諦めたけど、付いて来い。ちょっと街を歩くぞ。他の3匹も連れてきてくれ」

 俺はダマにお願いをして、テトたち3匹を呼んできてもらう。

 早速露店の集まっている、中央ロータリーに足を運ぶ。そこに到着するなり、

「シュウ様、聞きましたよ。シュウ様も私たちと同じなんですね。何事も完璧にこなすと思っていましたが、家の旦那みたいで親近感があるような、少し残念のような気もしますが、私たちはシュウ様の味方ですから。助けてもらった恩は、孫の代まで忘れさせません!」

 と、屋台のおばちゃんに声をかけられた。親近感があるのは嬉しいのだが、残念ってなんだ? そして、子孫に語り継ぐとかではなく、孫の代というところに好感が持てる。曾孫には、語ってやれないから、孫の代なんだろうな。

 奥様方には、先ほどの屋台のおばちゃんのように、声をかけられるのだが、おっちゃんたちは……

「シュウの旦那も、苦労しているんですね。俺も男だから分かるぜ! 別嬪さんばかりとはいえ、奥さんが沢山いれば、俺たちの数倍の苦労をしているんじゃないっすか? 疲れた時は、家の居酒屋にでも来てください。一緒に飲み明かしましょう!」

 同情されているような感じだ。そして俺の噂には、何かしらの形で妻たちが係わっているようだ。そして、最後の子どもたち、

「シュウ様、とーちゃんとかーちゃんが言ってたけど、悪いことしたら謝らなきゃいけないんだぜ! 俺も悪戯して、かーちゃんに叱られたときは、素直に謝ってるんだからな!」

 だとさ。学校に行く前か行き始めた年頃の男の子に、謝るように言われた……噂の俺は、知らない所で何をしているんだ?

 その日、2時間ほど歩き回ったが、噂の正体は分からず……
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