ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1799話 色々疲れた

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「シュウ様、お久しぶりです。用事があるとの事でしたが、どういった内容でしょうか?」

「夜中に叩き起こして、すまんな。勇者たちについての対応だ。報告にあげてもらっていた通り、あいつらが来てから、探せなかった行方不明者がいただろ? あれは、やっぱりあいつらの所為で、さっき家に突入して6人を保護してきた。それについて、話したいと思ってな」

「何かすると聞いていましたが、まさか自ら突入されたのですか!?」

「まさかだよ。妻たちが許すわけないじゃん。物量作戦で、使い捨ての駒を大量に準備して、家の中を捜索して本人たちを見つけたんだよ。で、男性2人の方は、拷問が生ぬるく感じるような、過酷な仕打ちを受けていたようで、部位欠損が酷かったから、今ディストピアで治療中だ」

「……ゲートですか? あれは、移動には使わない予定では?」

「今回に関しては、勇者たちの家から運び出すためと、治療を一刻も早くするために、特例みたいなものだ。文句あるか?」

「いえ、文句等ございません。シュウ様のお力ですので、ご自由に使われてかまわないですが、知られてしまった時のリスクを考えて、ディストピアの関係者以外には教えないつもりでしたのでは?」

「人命優先だな。ディストピアでなくとも俺の街の住人で、勇者とかいう害悪に壊された人間の保護を優先しただけだ。女性たちの方が、大きな外傷はなかったけど、麻薬を強引に使わされ思考を奪われた状態で、手足を縛られ強姦されていたから、早めの治療をしたかったんだよ」

 麻薬云々は、後付けの理由でしかないが、そこらへんはこいつには分からないから、気にしなくてもいいだろう。

「問題は、どこまで回復できるのか分からないということだ。確認しておきたいのだが、6人の行方不明者だった家族や関係者は、確認できているか?」

「もちろんです。6人とも、血縁関係のある家族はおりませんでしたが、住んでいる場所で親しくしている人たちから、姿を見なくなったと通報があって、探すきっかけになっております」

「家族はいないのか……恋人のような付き合いをしていた人間はいたのか?」

「女性の内1人だけ、付き合っていると言っていた者がいましたが、ストーカーのような人物であったため、事実ではないと判断しています。衛兵からも、その女性から被害を訴えられていたのが、確認できましたので、街から追放しております」

 人が三人集まれば派閥ができ、対立が起こる。街になるほど人が集まれば、トラブルの一つや二つは珍しくも無い。平和だと言われていた日本でも、誘拐・ストーカーなどはあるわけだしな。

「了解だ。じゃぁ、その六人はいったんこっちで預かるわ。日常生活が送れるまで回復したら、戻るか残るか本人たちに決めさせるけど、問題ないか?」

「分かりました。親しくしていた人たちには、こちらから何か伝えておきます」

「それと、勇者たちを扱き使ってインフラ整備をしようと計画してたけど、できなくなってすまんな」

「何の問題もありません。もともと、こちらで育てている土魔法使いの人間で、インフラ整備は問題ないので、気にする必要なんてありませんよ」

「ん? そうすると、俺のせいで土魔法使いたちの仕事を奪うところだったか?」

「そんなことありません。土魔法使いは、どこでも引っ張りだこですからね。大きな壁を作れなくても、レンガを作ることはできますし、食うに困らない職業の1つです。フレデリクでは、なりたい職業のトップ3に名を連ねていますね」

「それならよかった。もし指導がいるなら、ディストピアでも工兵を育てているから、育成のスペシャリストを派遣できると思うぞ。そのときは、レイリーに話をしてみてくれ」

「分かりました。今は、魔法で材料を作り人手で設置しているので、人が足りなくて困っていた所ですので、魔法である程度行えるのであれば、違うところへ人材が回せそうです。連絡を取って、検討させていただきます」

「今日は、すまなかったな。後で、ブラウニーたちに、お酒とおつまみに、奥さんと子どもたち用にお菓子なんかを届けさせるから、楽しんでくれ」

 頭を下げて、領主代行は帰っていった。

 ふ~、とりあえずは、することは終わったかな? 意識を自分の体に戻した。

 何やら体が重い……スライムやハクかと思ったが、何故か娘たちが俺の体に張り付くようにして、眠っていた。首だけで周りを見渡すと、いつの間にか自分の部屋に運んでもらっていたようで、俺のベッドの上にいるようだ。

 少し離れた所に妻たちも寝ており、その向こう側で、何に向かって手を伸ばしているか分からないシンラがいた。途中で力尽きたのだろうか? その左右には、いつものと言っても過言ではない光景が……プラムとシオンが抱き着いて寝ている。

 俺の心が荒んで帰ってくるのを心配した、カエデあたりの発案だろう。娘たちが幸せそうな顔をして寝ているので、自然と俺の心も温かくなり、荒れていた心も穏やかになっているような感じがする。

 次の日、目を覚ました時には、誰もいなかった……痛い、すまん、スライムたちがいたな。でもな、顔だけ出して、それ以外をお前たちの体で埋めるのは、やめてほしいのだが……こいつらに注意しても、無駄だな。

 時計を見ると、既にお昼が近かった。そりゃ誰もいないわけだ。軽くシャワーを浴びて、食堂へ向かう。

 待機していたブラウニーから、色々報告を受けた。

 グリエルからの報告で、今週はゆっくりしてください、こちらの仕事は妻たちに手伝ってもらい、必要最低限の物だけ来週の頭に、確認してもらう形で問題ないようにしておきますので……だってさ。

 そこまで大変だったわけじゃないけど、気を使ってくれているんだよな。その言葉に甘えますか。

 ゼニスからは、更地にしたフレデリクの一角は、適当に何かに使っていいか確認があったので、地下を作らないものであれば、許可を出しておいた。あそこの地下は、忌まわしい記憶が眠る場所だからな。あ、何か始める前に、もう一度聖水を撒いといてもらおう。

 子どもたちからも報告があるようで、お昼は一緒に食べたいから勝手に食べないようにとのことだった。

 軽食でももらおうかと思ったが、子どもたちと一緒に食べるのに、食事量が少なくて心配されても困るので、お昼まで我慢しよう。
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