ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,798 / 2,518

第1798話 事後処理

しおりを挟む
 マイワールドに作ったダンジョンに、勇者たちを放り込んでから、後始末を始める。

 俺は現場に行く必要があると考え、ゲートで移動しようとしたが、シュリに羽交い絞めにされて拘束された。拘束は物理的じゃなくて、精神的にね。

 止めるために初めは、物理的に……羽交い絞めにされていたが、俺が止まり話し合いが出来るようになったところで、ミリーからの一言。

「生身でいくなら、この先ずっと子どもたちとは、ふれあわせないわよ」

 と言われたのだ。頭の中では、脅し文句だと分かっていても、体が動かなくなってしまった。心が万が一のことを考えて、動けなくしたのだ。

「そんなに震えることじゃないでしょ。生身でいくなら、って言ってるじゃない。行くならドッペルで行ってほしいと、私たちは言っているのよ」

 ミリーがそう言うと、妻たちが頷いている。そういうことか、生身で行ったら何があるか分からないから、いざという時のことを考えて、ドッペルで後始末に行きなさいってことだった。

 なので、ドッペルに憑依するときに使う部屋へ向かい、フレデリクにいるドッペルに意識を移す。何度やっても、慣れないが身の安全を考えるなら、このくらいは我慢するべきだろう。

 少しストレッチをしてみるが、特に違和感はなさそうだ。そのまま、後始末へ向かおうとすると、

「あれ? シュウ様ですか?」

 フレデリクで商会の支店長に見つかった。こんな時間に何で……と言われたが、勇者たちの後始末に来たことを伝える。後、領主代行と話したいことがあるので、呼び出すように言っておいた。

 深夜に呼び出すとか普通ならありえないが、色々処理しなきゃいけないことがあるので、領主代行には諦めてもらい、顔を出してもらわねば困るのだ。

 っと、こっちに来る前に1つ大切なことがあった。魔導無線を起動して、妻たちに連絡を取る。

『シュウ、どうしたの?』

「ちょっと、伝え忘れがあったから連絡したんだ。保護した6人のケアを頼む。どういった状態か、俺には分からないが、女性は精神的にも肉体的にも、かなりのものだと思う。心のケアを重点的によろしく。

 男性の方は、肉体的にかなり壊されているみたいだから、睡眠薬で眠らせてから、栄養剤とエリクサーを点滴で入れてやってくれ。それで少なくとも、起きる頃には肉体的に問題ないはずだから」

『それなら、もう対処を始めているわ。女性も先に体を直すために、眠らせてからエリクサーを点滴しているわ。欠損とかはなかったから、栄養剤は使っていないけど起きたら、シルキーたちの食事を食べさせる予定。美味しい食べ物は、心を癒す薬になるからね。

 男性の方は、シュウの言った事と同じ対処をしているわ。使ったエリクサーは、私たちに念のためにって持たせてもらってた物を、勝手に使っちゃったから謝るわ』

「そんなの気にするな。報告を聞いているだけだから状態は分からないが、あの勇者たちが俺の想像している通りの正確なら、回復魔法とかで直しながら壊していただろうから、死ぬことは無かったとしても、治療は早いにこしたことは無いからな。何か問題があったら、連絡してくれ」

『了解。シュウ、無理しないで早く帰ってくるのよ』

 カエデとの連絡が途切れる。

 さて、後始末を始めますかね。

 まずしなきゃいけないことは、勇者たちの住んでいた家の処理だ。これは、俺の商会が買い取った家の1つだったようで、仕事を手伝ってくれる勇者たちに貸し出していたのだとか。

 先に知っていれば、もっと違う対処が……いや、変わらんか。間取りはマップ先生で分かっていたし、勇者たちをいきなり追い出すことも出来ないし、知っていた所で何かが変わったとも思えん。

 壊す前にしておくことがあるな。犯行現場へ行き、魔道具があるか確認する必要があるのだ。手伝いとして、妻たちが中に入っていないドッペルがついてきている。

 6人が監禁されていた部屋に入り、苛立ちしかなかった。男性のいた方の部屋は、部屋中至る所に生々しく血がこびり付いており、何かに苦しみ床や壁を引っ搔いた血痕もあった。拷問に近い何かが、行われていたのだろう。

 そして、女性たちがいた部屋は、多少綺麗にされてはいたが、独特の匂いがしていた。イカ臭いあれではなく、少し甘い匂いがしている。アロマポットのようなものが目に入り、中に燃える前の葉っぱが入っていた。

 鑑定した結果、麻薬だった。禁止している麻薬を使い、女性たちの理性を取っ払っていたのだろう。縛られていなくても、抵抗らしい抵抗はできなかっただろう。その状態で強姦されていたのか……この麻薬の特徴として、効果時間中は夢のような感覚に陥るとか何とか……

 女性たちの心からしたら良いことだと思うが、強姦された事実は変わらないし、慰めにもならないだろう。依存性の高いものなので、いなくなった期間を考えれば酷い禁断症状は出ないと思うが、注意が必要だろう。カエデにもう一度連絡を入れておく。

 魔道具の類は、なさそうだな。となると、神授のスキルの線が濃厚かな。ったく、無駄に面倒な奴を寄こしやがって。

 チビ神、1つ確認させろ! どうせ見てんだろ?

『……何よ?』

 俺が神授のスキルって呼んでる、勇者たちに付与される特殊なスキルって、次に召喚される奴らにまた付与されるのか?

『何を心配しているのか分かるけど、勇者たちに与えられたスキルは、世界に1つだけよ。スキル保持者が死んで回収されない限りは、新しく付与されることは無いわ。現地の人間が受け継いだ場合は、現地人が死ぬまで回収されることは無いわね』

 了解、それが聞けただけで十分だ。また今度、シルキーたちの飯と一緒に、何か送るわ。

『気にしないでいいわよ。勇者たちはまだ死んでないけど、死ぬことが決定しているから、私の評価も上がるからね。よくやったわ。これからも頑張ってね』

 そう言って、チビ神との話が終わった。

 となると、勝手に野たれ死んでもいいと思っていたが、もし想像しているような神授のスキルだったら、回収されるのは非常に困る。タイミングを見計らって、誰かに殺してもらった方がいいかもしれないな。

 調べることも無くなったし、この家を処分しますか。

 家を処分する理由は、腐った勇者たちの使った家など残っていることが不愉快なので、更地にするつもりだ。結界の力を使い遮音結界を張り、局地的アースクエイクで建物を壊し、地下に作ったダンジョンに吸収させ、終わったら土を盛って終了。

 気持ち程度に、お清めの聖水を振りまいておこう。どんな効果があるか分からないが、気持ちは大切である。

 一通りの作業を終えて商会へ戻ると、領主代行が待っていた。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...