ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1793話 重大な勘違い?

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 午後も書類を読んでいると、スプリガンから連絡が入る。

『ご主人様、少しよろしいでしょうか? 監視を頼まれていた勇者2人ですが、街の中で女性に接触し始めました。確認できている所で、2人で合わせて7人に接触していますが、その内3人が不自然に消息を絶ちました』

「どういうことだ?」

『こちらも良く分かっていないのですが、死亡のマーカーとかがついているわけではなく、マップ先生でその存在を確認できなくなりました』

 ますます意味が分からん……マップ先生の検索範囲外に出た? この大陸は、魔物の領域でもほとんど掌握済みなのに、範囲外に出るのは難しい。何より、転移魔法は存在しないので、フレデリクから掌握領域外に出るためには、400キロメートル以上移動する必要がある。

 不自然に消息を絶った……これが良く分からない。死亡すれば、死亡した人間を表示できるのに、それも無いようなのだ。あり得るとしたら、王国の奴隷兵が使っていたマントに準ずる、魔道具の存在だろうか?

「報告ありがとう、引き続き監視をよろしく」

 勇者が係わると、どうしても面倒なことが起きていると思ってしまう。接触してきた勇者は、綾乃以外面倒事しかなかったからな……綾乃は綾乃で、面倒だけど意味が違うからな。俺に接触してきていないだけで、勇者の存在は50人は確認できている。

 さて、グリエルとガリアに相談しよう。

「……という報告が上がってきて、実際に存在が見つけられない。奴隷兵の使っていたアイテムもあるし、マップ先生が万能でないことは知っているけど、タイミングがタイミングだけに不自然なんだよな。しかも、接触した相手が失踪しているわけだからな」

「本当に頭の痛い話ですね。行方不明者の捜索依頼は、ガリアどうでしたっけ?」

「ちょっと待ってください……すべての街で時々ありますが、ゴーストタウン以外の街では、二割程が見つけられていませんね。

 数にすると、年間で1つの街平均、50人ほどですかね。その内7割ほどはマップ先生で、他の街で奴隷になったのを確認しています。残りの3割ほどは、死亡を確認しています。自殺もあれば、他殺もありました」

 マップ先生以外で見つけられていないのが、50人くらいいるのか。その内の3割ほどが亡くなっているのか。それ自体は仕方がないが、今回は、そういうわけにはいかないんだよな。存在自体が確認できなくなっている……そこが問題なのだ。

「一応、フレデリクの行方不明者の捜索について、確認を取ってもらっていいか?」

 ガリアは了承して、自分の執務室へ戻り確認作業に入った。

「シュウ様、少しよろしいですか。少し気になることがあったのですが、魔道具はスキルや魔法で再現が可能ですよね? 光の魔道具はライトで代用できますし、五徳の魔道具も火魔法で代用できますよね」

「シュリ、それは違うぞ。魔道具で魔法やスキルが再現できているのではなく、魔法やスキルを代用させるために魔道具が作られているんだ。中には常識外れの魔道具もあるけどな」

「では、基本的には魔道具で出来ることは、人にも再現が可能だということですよね?」

「どんな方法にせよ、空間拡張なんかのダンジョン産の魔道具以外は、再現が可能なはずだ……ん? 待てよ。魔道具の再現が可能なら、マップ先生の検索から逃れる魔法やスキルも、再現が可能ってことか?」

 待て待て、よく思い出すんだ。今まで、空間拡張以外の魔道具は、クリエイトゴーレムを使えば際限が可能だったはずだ。試していないが、マップ先生の検索に引っかからないあのマントも、再現できないと思う。原理が分からないから、手がかりがないのだ。

 だけど、原理を理解するか、ユニークスキルでマップ先生を誤魔化せるなら……ユニークスキル!

「そうだ! ユニークスキルの存在を忘れてた! 他にも、魔法でオリジナルスペルを作り出した可能性もあるな……」

 どうして気が付かなかったんだ、確かユニークスキルの網羅されている本が無かったか? あースキルが網羅されている、スキルブックみたいなやつだったな……その中に、隠蔽や隠密系のスキルでユニークはないか?

 数千種類のスキルの中から、目的の物を探すのには人手が少なすぎる……他にも、魔法で近い効果のあるものを探すにも……魔法に関してもダンマスのスキルで、今までにあった魔法の種類や効果が書かれた本を召喚できるので、そこからも探せるのだが……こっちは、万を超える数が書かれている。

「グリエル、一時的に庁舎の人間に、この本の中から特定の条件を満たすスキルや魔法がないか、調べるのを手伝ってもらっていいか? もしかしたら、俺は重大な見落としをしている可能性がある。そのためにも、この本に類似するものが無いか、一刻も早く見つけたい」

「分かりました。仕事を止めても問題ない人間から、調べさせます。その本は、どのくらい準備できますか? 私は、調べ物の指揮を執りますので、何かありましたら大会議室へお願いします」

 グリエルは立ち上がり、俺が召喚した500冊もの本を収納の腕輪にしまい、移動を始めた。このまま、手の空いている人間を集めて、大会議室で調べものをしてくれるのだろう。

 特定の条件とは、隠蔽・隠密・欺瞞・偽装など、隠したり書き換えたりできるようなものだ。隠密なら、光魔法で見えにくくすることも出来るし、闇魔法で偽りの姿を見せることも可能だ。

 魔法やスキルで、マップ先生に干渉できるのか分からないが、実際に1つだけ実例があるのだ。検索に引っかからなくなるマント……その存在がはっきりしているのに、再現できないとは言い切れない。

 地球で言われていた、【イメージできることは実現できる】という、あれを思い出した。技術的に今は無理でも、いずれ実現できるようになる……というあれだ。

 この考えでいけば、イメージできる……実際に再現された魔道具があるのに、人間の想像力で再現できないはずがないのだ。同じような効果のあるスキルや魔法が、存在している可能性がある。

 グリエル……頼んだぞ。

 ガリアが戻ってきて、行方不明者についての報告がある。

 勇者たちが来た数日で、行方不明者の捜索依頼の数が増えているそうだ。その数26人。その内20人は、マップ先生で発見済み。

 残りの6人の内3人は、スプリガンの報告にもあった女性たちだ。残りの3人の内、2人が男性、1人が女性らしい。

 この短い期間で、合わせて6人もの検索不明者が出ている……勇者たちの関与を疑わずにはいられない。
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