ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1790話 トラブル?

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 さて、仕事を始めるますかね。

 いつもと同じような報告書……報告書というより、日報だな。今まで気付かなかったけど、これって1日の報告書だから、トラブルが無くてもあった事が書かれているのだ。まぎれもない日報だった。

 何で今まで気付けなかったと言えば、分別されていたからだろうな。2、3日前から俺の読む報告書の中に、娘たちの日記が混じり始めてようやく気付けたのだ。

 初めは何で日記があるのか疑問だったが、母親たちが俺に付いて庁舎へ行き、一緒に何かをしているのが羨ましかったらしく、ミリーたちに自分も手伝う! みたいなことを言って困らせていたらしい。

 そこで、分かりやすく娘たちに何をしているのか説明をして、俺は報告書を読む仕事をしているのだと教えた。お父さんの役に立ちたいなら、あなたたちも報告書(日記)を書いて、お父さんに色々報告してくれたら喜ぶと思うと、言ったそうだ。

 今はただの日記で、その日にあった事を時系列関係なく、箇条書きにしている印象だ。それでも、色々俺に報告したいのだろう。細かく書いているところが微笑ましい。

 特に子どもたちは、母親と散歩に出かけるだけじゃなく、従魔のクロやギンたちに乗って、街の子どもたちの所へ遊びに行ったり、幼稚園のような所にも顔を出しているようで、そこであった出来事などが書かれている。

 この街の死亡率は極めて低い。だけどゼロではない。冒険者をしていて死ぬものはいないが、病気など気付かずに治療が間に合わず、無くなってしまうケースが存在するのだ。

 これにより、孤児になる子どもは若干名いるのだが、孤児院は無くなくなり、今は子どもが増えてきて、仕事をしている間面倒を看てくれる、幼稚園のようなものに変わっているのだ。孤児は仲の良かった家族などに引き取られているため、家族のいない孤児はゼロになっているんだってさ。

 娘たちの日記を呼んで初めて知った事だったから、正直驚いた。グリエルに確認したところ、大分前から孤児院は無くなっていたらしい。建物をそのまま使っているので、街の人たちは孤児院から孤児を抜いて、院とか呼んでいるんだとさ。

 孤児になった子を引き取った家族に、子どものための名目で給付金を出すように指示をしたところ、既に子どもに対する給付は行っているので、これ以上はどうかと……と言われてしまった。

 考えてみると、子どもに勉強をさせるように学校へ通わせると、街から給付金を出すようにしたのを思い出した。年齢的に学校へ行けない子どもたちには、育児給付という形でお金が出ている。

 む~だけど、子ども1人を引き取って育てるのって、大変なことだよな? お金だってかかるし……それなのに、追加給付は良くないのか?

 そんなことを言ったのだが、グリエルに

『この街で、子どもを育てるのに、食事代や衣服など以外では、お金はほとんどかかりません。そのお金を街から出しているので、実質面倒を看る手間が親の役割でしょう。

 学校もタダですし、昼食も出ます。子どもの治療は優先的に、無料でいつでも診察してもらえます。これ以上は必要ない……というより、受け取ってもらえないのです!』

 と言われた。

 この街って生活するうえで、家の維持費、光熱費、食費、衣服費、これら以外は、貯金や娯楽費になるのだ。税金が未だに人頭税以外無いのに、どうやって維持されてるのやら……俺の商会からのお金か?

 そんなことを考えてたらグリエルが、街の産業は大半が俺が主導して行っており、その売り上げの純利益を街の税金代わりに使っているので、税金を取らなくても問題ない、と言っていた。寄付されるのが困るから、税金ということで人頭税を取り始めたんだったな。

 みんなが働いてくれたお金が、みんなのために使われているということだ。良いことなんじゃないかな? 産業なんていうが、初めに準備しただけなのだから、今しっかりと動いているのであれば、現場の人間の力だろう。

 そんなことを思い出しながら、子どもたちの報告書(日記)を読んでいく。子ども視点の報告書(日記)って面白いよな。何がどう……とかではなく、時系列がバラバラだから一貫性が無いのに、一番伝えたい事は強調されている感じだ。

 幼稚園の話で言えば、下の子たちみたいに面倒を看て、一緒に食事も食べた。ご飯の中でコロッケが一番おいしかった! みたいに、一番印象に残っていることを大きな文字で書いているのが微笑ましい。

 おや? 報告書(日記)の中に、1人の子がイジメられていたような内容があるな……これはしっかりと確認しておかないといけないだろう。人間が集団生活を営む上で、切っても切り離せない問題だ。

 イジメにも色々な理由があるとされているが、ストレスや不満の多い環境で、それを発散するために攻撃的になったりする、と言われているが、根本的に『人は自己肯定のために、優越感を持ちたがる生き物』だと俺は考えている。

 見た目や恰好がダサくて、イジメられている……という話はあるだろう。だけどその中には、見た目がこんななのに、自分より優れた部分があるから許せない! といった、無意識的な何かがあると考えている。

 自分より優れているモノを許せない、追い抜かれることが怖い、無意識にそんなことを考えている子どもが多いのだと思う。これは大人でも同じだと考えている。

 上司が部下にパワハラするのも、性格という面もあるが、優秀な部下に対して『出る杭は打たれる』ではないが、自分の地位を脅かす存在が怖いのだ。ただ優越感に浸りたい愚かな上司もいるが、こういったパワハラは多いのだ。

 大人になれば、自分の行動が良いことなのか悪いことなのかは、判断できるだろう。だけど、悪いと思ってやるのが大人で、悪いことだと分からずにやるのが子どもだと思う。

 早めに解決できるのなら、するべきなのだ。

 日本でも、いじめがエスカレートして、人が死ぬ……という事件は、起こっている。自分を確立できていない子どものタガが外れ、常識的に考えておかしなことでも問題ないと判断してしまうのだ。

 被害者が亡くなるか、加害者が殺されるか……こういった結果に辿り着いてしまうと思う。

 まずは、本当にいじめだったのか? それを確認する必要があるな。ただのじゃれ合いを見て、イジメに見えた可能性もゼロではない。だから、真実を知る必要があるのだ。

 すぐに人を走らせ、周囲の人間の話を聞く。

 子どもたちだけが見ていたのか、大人も見ていたのか、それを確認する。

 結果は、内容としてはくだらなかったが、イジメではなかった。こういってはあれだが、老ドワーフどもがしょっちゅうやっている、あれだった。

 ○○の方が美味い! 馬鹿いうな、△△の方が美味い! と言って、最終的には殴り合いを始める、あれだ。

 で、今回の内容は、ご飯に合うオカズで言い争いがあったらしい。片方は牛丼、片方はカレーだってさ。聞いたときは、どっちもオカズじゃねえよ! って、心の中で突っ込んだわ。

 これを解決したのがブラウニーで、大手牛丼チェーンのメニューにもある、カレ牛を子どもたちに食べさせ、どっちも美味い! ということを認めさせたのだとか。

 すでに解決してました。ブラウニーパイセン、マジですげえっす!
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