ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1764話 凡ミス

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 さあ、仕事を頑張ろうと庁舎へ向かう。

 ……いつもより早い時間ではあるが、誰もおらずガラーンとしている。残業は可能な限り禁止しているので、朝早めに出勤してくる人が多いのに、今日は何故か誰もいない。

「まぁ、そんな日もあるよな。キリエ、リリー、先に仕事を始めるか」

 今日、一緒に仕事をしてくれるのは、キリエとリリーだ。俺の妻たちの仕事の大半は、前日に処理されて他の都市から回ってくる報告書なので、直ぐに仕事を始められるのだ。

 休んでいた昨日までの報告書は、グリエルとガリアとその部下たちがしてくれているので、俺の仕事は山積みである。

 キリエが仕事を始める前に、ミルクティーを入れてくれた。少し甘いな、このこくのある甘味は! クイーンハニービーが集めてくれるハチミツ、王蜜だな。量にすればほんの少しだと思うが、かなりインパクトがあるな。

 仕事を始めて1時間ほど、順調に仕事をこなしている。が、異変に気付いた!

 誰も出勤してきていない!

 何か事件や問題があったのかもしれない、慌ててグリエルへ連絡を入れた。

「グリエル、何か問題があったのか?」

『……どういうことですか? こんなに朝早く、連絡してくるなんて、何か問題でも?』

 ん? 話が噛み合っていない気がする。

「朝早くって言うけど、普段なら仕事をしている時間じゃないのか?」

『……もしかして、今日は庁舎に行かれているのですか? フフフ、シュウ様は休みボケでいらっしゃるようで。今日と明日は休みですよ。最近はバタバタしていて、私も部下たちも休みが平日だったりしたので、1週間の休み明けでそのまま庁舎に行ってしまわれたようですね』

 なんと! 今日は本来やすみだったようだ。

 そういえば、最近はいつここに来ても人がいたから休みを意識してなかった……

 休んでないからって、働いている人たちに休暇を与えていたのに、すっかり普通の休日のことを忘れてた! よろしくない傾向だな、気を引き閉めないとな。

 グリエルに謝って、キリエたちを見る。

 2人も失念していたようで、揃って苦笑した。キリの良いところまで処理してから、帰ることにした。昼食の前までに帰れそうだ。

 仕事を終わらせ家に帰り、みんなにこの事を話した。そうすると、他の妻たちもみんな失念していたようで、全員で苦笑してしまった。

 うちの家族って、全員が休みの関係ない仕事をしているので、休日の概念が薄くなっていたようだ。ミリーは冒険者ギルドなので、休日なんて無いからな。

 カエデとリンドは、鍛冶職人で気紛れで武器や防具を作っているので、元々休みという概念はない。

 他の妻たちも、休みの概念がない仕事ばかりだからな。魔道具作りや畑仕事、機織りに被服関係、海産物エリアでの仕事、家畜エリアに行っている妻もいたな。他には、シルキーたちの手伝いをしていたっけな。

 後は、子供たちの面倒も交代で見てるし、最近はお酒作りに参加している妻もいるんだったか。

 あれ? 良く考えたら、会社員みたいに休みが定期的にある仕事って、この世界には無いんじゃないか? 自主的に休みを決めてたりしてるもんな。

 妻の話だと、同業者で休みの日が被らないようにしているとか。

 領主の仕事にも休みはないけど、俺が勝手に決めて休ませていたんだった。ディストピアでは、週に2日休むように推奨しているが、休みを決めてみんな同じ日にというわけにはいかないからな。

 さて、急に休みが2日追加されてしまった。何をしようかね?

 昼食を食べて庭でのんびりしていると、シンラが俺のところにやって来た。

 プラムたちは姉たちと遊んでいるようで、脱走してきたようだ。運んできたスライムが、ジェスチャーで教えてくれた。

 おや? シンラがいるのに、妻たちが誰もいない? 何でかと思ったら、シンラを連れてきたスライム以外にも5体ほどスライムがいるし、ハクもシンラを守るように近くにいた。ケットシーにコウとソウまでいるぞ。

 どうやら、従魔たちが複数で見守っていれば、シンラも自由行動が許可されたようだ。

 それに、俺の家の敷地内には、四大精霊の結界があり許可したもの以外入れないし、出入り口の門にはリビングアーマーが待機しているから、正面からは出ることは出来ないな。

 従魔たちなら、正面からでなくとも外にいけるが、こいつらが子どもたちを危険にさらす訳がないな。だから、単独行動(笑)が成立してるのか。

 シンラよ、お前と見守りいっぱいがここに来た理由はなんぞや?

 シンラが答えられるわけが無いのだが、何となく聞いてしまった。そうすると、騎乗されていたスライムがシンラを俺に手渡す。

 なんだなんだ? シンラよ、俺に遊んでほしかったのか?

 いつにないくらい笑顔なシンラを見て、俺はシンラに嫌われていないことを喜んだ。

 ただ、何をして遊べば良いのか分からなかったので、シンラにつきあうことにした。

 俺の膝の上で俺の胸や腹に向かって、拳を何度も突き出す仕草をしている。先日見た、妻たちとの模擬線を思い出してるのかな?

 なら、ボクシングのミット打ちモドキをしようか。

 シンラの拳が届く位置に手も出して、シンラに殴らせてみる。ペチペチと情けない音ではあるが、まだ赤ちゃんなのでそんなもんだろう。

 シンラも叩いて音が鳴るのが面白いのか、何度も何度もパンチをしてくる。10分ほどパンチを続けていたが、疲れて何時ものオッサン座りになった。

 そんな様子がおかしくて、シンラの顔をモニモニとマッサージをしていたら、怒ったようでスライムたちに何かを言った。

 そうすると、シンラと一緒に来ていたスライムたちが、俺に群がってきた。

 半分横になっている状態で襲撃されたため、掴んでは投げてもたいして遠くまで飛ばせずに、直ぐに戻ってきやがる。

 子どもたちの体力もスゴいのだが、スライムたちの体力は、本当に無尽蔵なので諦めてなされるがままにした。顔をおおうのだけは無しな。

 諦めたあたりで、シンラから笑い声が聞こえた。

 こいつ、もしかしてスライムたちに命令したのか? 親の俺たちより先に、スライムたちとコミュニケーションをとることに成功したのか!!

 そんな笑っているシンラには、お仕置きで『頬っぺたグニグニの刑』だ!

 今日のところは、痛み分けということで終了しよう。

 疲れたし昼寝でもするべ!
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