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第1757話 カエデとリンドの好物
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いつもと変わらない日々を過ごしていたある日、朝起きると部屋の前にカエデとリンドが待っていた。
この2人が一緒にいるはよく見るが、朝早くに一緒にいるのは珍しいな。趣味というか鍛冶や物作りが2人の共通点だが……何の用だろうか?
「シュウ、そろそろいいと思うの!」
「いや、何が?」
「私たち我慢できない! そろそろ解禁して!」
「はぁ? 何の話だよ!」
「そろそろ、私たちのお酒造りを解禁してほしいの!」
「……?」
「シュウは、私たちに酒造りをさせてくれないじゃない? 今お酒造りはシルキーたちが主導してるでしょ? 私たちも、そろそろ自分たちのお酒を造りたいの!」
「……好きなことしていいって言ってるのに、何でわざわざ俺に聞く必要があるんだ? 作りたいなら作ればいいんじゃないか? 原料が足りないとか? 給料代わりのDPでいくらでも出してもらえるだろ?」
「え? お酒作っていいの? てっきりここではシルキーたちが作ってるから、私たちが作ってはいけないものだと思ってたわ。聖域みたいな扱いで、作ってはいけないものだと」
「そんなことないだろ。確かにディストピアの街では、シルキーたちが指導してブラウニーたちが中心に作業していたりするけど、ここじゃない……ゴーストタウンではバザールが作ってるし、他の街でも酒造りは禁止してないだろ?」
2人は沈黙して、お互い見つめ合っていた。
「2人が作りたいというなら、酒造りをするか! 明日からな!」
「「なんで今日じゃないの!?」」
「実はさ、明日からしばらく休みなんだよね。グリエルやガリアに、庁舎の職員たちも休暇を取っただろ? なら、俺も休みを取るべきだと言われてな、1週間ほど休んでくれと強制されている」
2人とも知らなかったという表情だ。妻たちには伝えていたはずなのだが……
「じゃぁ私は、ドワーフの爺様方に伝えてくるよ。明日はお祭りだね!」
リンドは足早に去っていった。朝食食べなくてもいいのか?
「これで、隠して育てていたブドウが無駄にならずにすんだわ!」
酒は造れないのに、ワインの原料のブドウは作ってたんかい! そういえば忘れがちだけど、カエデってハーフドワーフだったな。リンドもロリドワーフだから、すっかり忘れてたわ。ドワーフたちのお酒への執念を……
明日からの予定がなかったので、キャンプでもいいかなと思ってたが、娘たちも連れて物作り体験でもしようかな?
食堂へ行くと、子どもたちが一生懸命自分で、食事を食べている様子を見て、ちょっとほっこりした。
みんなに話してみると、上の子たちは新しいイベントとか遊びみたいに捉えて喜んでいた。下の子たちは、姉たちが喜んでいるのを見て一緒にテンションをあげている形だった。シンラたちにはまだわからんよな。
さて、明日から遊ぶために今日も一日頑張ろう。
明日から休みということで、多少仕事量が多かったが問題なく時間内に終わった。まぁ俺は街のトップであるので、もしグリエルたちで対応できなければ俺が出張らないといけないんだよね。
上位者は、いついかなる時も責務から逃げてはいけないと思うので、遠慮なく連絡をするように言いつけてある。俺にはゲートという手段があるので、秒で駆けつけることが可能であるのでどこにでも行けるけどな。
家に帰ると、子どもたちに出迎えられ、明日のことについて色々聞かれたが、カエデとリンドの好物を作りに行くんだよと、濁しておいた。
ルンルン気分の子どもたちは、夜も離れずに俺と一緒に寝ることとなった。
次の日、いつも以上に元気な子どもたちより、更に元気なのはカエデとリンド……と、後ろに大量に並んでいる、ビア樽ドワーフたちだ。うむ、お前たちを見ていると、ドワーフって感じがして安心するわ。
それにしても、結構大量に集まったな。この街のドワーフが全部集まってるんじゃねえか? おや? 見覚えのある老ドワーフたちにまじって、ゴーストタウンの領主代行までいるぞ!
となると、ここに集まったのは、ディストピアだけじゃなくゴーストタウンからも集まったってことだろうな。
理由はカエデたちと同じで、酒は自分たちで勝手に造ってはいけないと考えていたようだ。
酒への情熱がすごいね。飲むのも作るのも好きなんだな。
俺の周りで子どもたちが、頑張るぞーと声をあげている姿が微笑ましいな。
今日はワイン造りがメインらしい。まず移動したのが、畑エリアだ。200人以上の移動なので、街の人たちも何事かと見に来ていたが、大半がドワーフということで察してすぐに興味を失っていた。
さて、到着したのはいいが……
「広すぎねえか?」
前に孤児院の子たちと来たときより、かなり広がっていた。カエデたちは禁止されていたと勘違いしていたが、孤児院の子たちは職業訓練みたいなことで、ワイン作りをしていたっけ?
それにしてもあれだな、写真やテレビで見るようなブドウ畑が広がっている。しかも近くに小屋があるのが気になる。収穫の前に確認すると、頭が痛くなるほどの量のブドウが収納の箱に入っていた。この畑の何回分の収穫があるのだろう?
だと言うのに、目の前の畑は実りに実っている。ワームとドリアード、土精霊たちのドーピングで何度も収穫したのだろう。そして、酒造りの許可がもらえた時のために育てていたのだと分かった。
ただ、子どもたちには色々体験してもらいたいので、収穫からはじめることになった。
子どもたちは、母親に手伝ってもらいながら、ブドウの収穫を始めた。プラムたちも、抱っこをされながら取るブドウへ手を伸ばしてもらって掴むが、ちぎることが出来なくてブンブンふっていたのが印象的だ。
ふ~、ブドウって1房1房が結構重いんだな。水分を大量に含んでいる果物だけあるな。
子どもたちは20房ほど収穫して、満足した様子になっていた。
さて、次はどうするんだ?
大きな桶が運ばれてきて、カエデとリンドがホットパンツの理由が分かった、ブドウの破砕の段階を踏むという昔ながらの行程でやるようだ。
だけど、ちょっと待て、
「おい、死にぞこないの爺共、何てめーらも短パンになってるんだ?」
「死にぞこないは、あのハゲだけじゃ!」
「「「「「死にぞこないのハゲは、お前じゃ!」」」」」
「うっさいぞ! お前たち、全員ハゲで死にぞこないだろ! それより、短パンになった理由を簡潔に教えてくれ」
「決まってるじゃろが、ブドウを踏んで汁を出すんじゃよ」
そう言ってブドウの入った桶に近付いていくので、頭を鷲掴みにして後方へ放り投げる。少々乱暴だが、この爺共は戦闘鉱員もしていたので、無駄に体が頑丈なのだ。これくらいやらないと、簡単に止まらないのでこういう扱いをしている。
爺共が怒ってきたが、
「一つだけ聞く、それに反論できるなら話し合いに応じよう。じゃあ聞くぞ、お前たちはどこの誰だか分からないおっさんが踏んで作ったお酒なんて飲みたいか? 例えば……ゴーストタウンの冒険者のおっさんとかが踏んで作った酒を飲みたいと思うか?
俺は、そのおっさんのも、お前さんたちビア樽爺さんたちの踏んで作ったワインより、女性……今日なら、俺の妻たちが踏んで作った酒の方が絶対にいい! 爺様方の踏んだ酒なんて死んでも飲みたくねえぞ」
俺がそう言うと、爺様たちはお互いを見あって、その視線が足元へ向く。
何を感じていたか分からないが、1分ほど顔と足を行ったり来たり……
「「「「「「すまんかった! わしらが間違っていた!」」」」」」
俺の言いたいことが通じたようだ。
この2人が一緒にいるはよく見るが、朝早くに一緒にいるのは珍しいな。趣味というか鍛冶や物作りが2人の共通点だが……何の用だろうか?
「シュウ、そろそろいいと思うの!」
「いや、何が?」
「私たち我慢できない! そろそろ解禁して!」
「はぁ? 何の話だよ!」
「そろそろ、私たちのお酒造りを解禁してほしいの!」
「……?」
「シュウは、私たちに酒造りをさせてくれないじゃない? 今お酒造りはシルキーたちが主導してるでしょ? 私たちも、そろそろ自分たちのお酒を造りたいの!」
「……好きなことしていいって言ってるのに、何でわざわざ俺に聞く必要があるんだ? 作りたいなら作ればいいんじゃないか? 原料が足りないとか? 給料代わりのDPでいくらでも出してもらえるだろ?」
「え? お酒作っていいの? てっきりここではシルキーたちが作ってるから、私たちが作ってはいけないものだと思ってたわ。聖域みたいな扱いで、作ってはいけないものだと」
「そんなことないだろ。確かにディストピアの街では、シルキーたちが指導してブラウニーたちが中心に作業していたりするけど、ここじゃない……ゴーストタウンではバザールが作ってるし、他の街でも酒造りは禁止してないだろ?」
2人は沈黙して、お互い見つめ合っていた。
「2人が作りたいというなら、酒造りをするか! 明日からな!」
「「なんで今日じゃないの!?」」
「実はさ、明日からしばらく休みなんだよね。グリエルやガリアに、庁舎の職員たちも休暇を取っただろ? なら、俺も休みを取るべきだと言われてな、1週間ほど休んでくれと強制されている」
2人とも知らなかったという表情だ。妻たちには伝えていたはずなのだが……
「じゃぁ私は、ドワーフの爺様方に伝えてくるよ。明日はお祭りだね!」
リンドは足早に去っていった。朝食食べなくてもいいのか?
「これで、隠して育てていたブドウが無駄にならずにすんだわ!」
酒は造れないのに、ワインの原料のブドウは作ってたんかい! そういえば忘れがちだけど、カエデってハーフドワーフだったな。リンドもロリドワーフだから、すっかり忘れてたわ。ドワーフたちのお酒への執念を……
明日からの予定がなかったので、キャンプでもいいかなと思ってたが、娘たちも連れて物作り体験でもしようかな?
食堂へ行くと、子どもたちが一生懸命自分で、食事を食べている様子を見て、ちょっとほっこりした。
みんなに話してみると、上の子たちは新しいイベントとか遊びみたいに捉えて喜んでいた。下の子たちは、姉たちが喜んでいるのを見て一緒にテンションをあげている形だった。シンラたちにはまだわからんよな。
さて、明日から遊ぶために今日も一日頑張ろう。
明日から休みということで、多少仕事量が多かったが問題なく時間内に終わった。まぁ俺は街のトップであるので、もしグリエルたちで対応できなければ俺が出張らないといけないんだよね。
上位者は、いついかなる時も責務から逃げてはいけないと思うので、遠慮なく連絡をするように言いつけてある。俺にはゲートという手段があるので、秒で駆けつけることが可能であるのでどこにでも行けるけどな。
家に帰ると、子どもたちに出迎えられ、明日のことについて色々聞かれたが、カエデとリンドの好物を作りに行くんだよと、濁しておいた。
ルンルン気分の子どもたちは、夜も離れずに俺と一緒に寝ることとなった。
次の日、いつも以上に元気な子どもたちより、更に元気なのはカエデとリンド……と、後ろに大量に並んでいる、ビア樽ドワーフたちだ。うむ、お前たちを見ていると、ドワーフって感じがして安心するわ。
それにしても、結構大量に集まったな。この街のドワーフが全部集まってるんじゃねえか? おや? 見覚えのある老ドワーフたちにまじって、ゴーストタウンの領主代行までいるぞ!
となると、ここに集まったのは、ディストピアだけじゃなくゴーストタウンからも集まったってことだろうな。
理由はカエデたちと同じで、酒は自分たちで勝手に造ってはいけないと考えていたようだ。
酒への情熱がすごいね。飲むのも作るのも好きなんだな。
俺の周りで子どもたちが、頑張るぞーと声をあげている姿が微笑ましいな。
今日はワイン造りがメインらしい。まず移動したのが、畑エリアだ。200人以上の移動なので、街の人たちも何事かと見に来ていたが、大半がドワーフということで察してすぐに興味を失っていた。
さて、到着したのはいいが……
「広すぎねえか?」
前に孤児院の子たちと来たときより、かなり広がっていた。カエデたちは禁止されていたと勘違いしていたが、孤児院の子たちは職業訓練みたいなことで、ワイン作りをしていたっけ?
それにしてもあれだな、写真やテレビで見るようなブドウ畑が広がっている。しかも近くに小屋があるのが気になる。収穫の前に確認すると、頭が痛くなるほどの量のブドウが収納の箱に入っていた。この畑の何回分の収穫があるのだろう?
だと言うのに、目の前の畑は実りに実っている。ワームとドリアード、土精霊たちのドーピングで何度も収穫したのだろう。そして、酒造りの許可がもらえた時のために育てていたのだと分かった。
ただ、子どもたちには色々体験してもらいたいので、収穫からはじめることになった。
子どもたちは、母親に手伝ってもらいながら、ブドウの収穫を始めた。プラムたちも、抱っこをされながら取るブドウへ手を伸ばしてもらって掴むが、ちぎることが出来なくてブンブンふっていたのが印象的だ。
ふ~、ブドウって1房1房が結構重いんだな。水分を大量に含んでいる果物だけあるな。
子どもたちは20房ほど収穫して、満足した様子になっていた。
さて、次はどうするんだ?
大きな桶が運ばれてきて、カエデとリンドがホットパンツの理由が分かった、ブドウの破砕の段階を踏むという昔ながらの行程でやるようだ。
だけど、ちょっと待て、
「おい、死にぞこないの爺共、何てめーらも短パンになってるんだ?」
「死にぞこないは、あのハゲだけじゃ!」
「「「「「死にぞこないのハゲは、お前じゃ!」」」」」
「うっさいぞ! お前たち、全員ハゲで死にぞこないだろ! それより、短パンになった理由を簡潔に教えてくれ」
「決まってるじゃろが、ブドウを踏んで汁を出すんじゃよ」
そう言ってブドウの入った桶に近付いていくので、頭を鷲掴みにして後方へ放り投げる。少々乱暴だが、この爺共は戦闘鉱員もしていたので、無駄に体が頑丈なのだ。これくらいやらないと、簡単に止まらないのでこういう扱いをしている。
爺共が怒ってきたが、
「一つだけ聞く、それに反論できるなら話し合いに応じよう。じゃあ聞くぞ、お前たちはどこの誰だか分からないおっさんが踏んで作ったお酒なんて飲みたいか? 例えば……ゴーストタウンの冒険者のおっさんとかが踏んで作った酒を飲みたいと思うか?
俺は、そのおっさんのも、お前さんたちビア樽爺さんたちの踏んで作ったワインより、女性……今日なら、俺の妻たちが踏んで作った酒の方が絶対にいい! 爺様方の踏んだ酒なんて死んでも飲みたくねえぞ」
俺がそう言うと、爺様たちはお互いを見あって、その視線が足元へ向く。
何を感じていたか分からないが、1分ほど顔と足を行ったり来たり……
「「「「「「すまんかった! わしらが間違っていた!」」」」」」
俺の言いたいことが通じたようだ。
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