ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,749 / 2,518

第1749話 今日も頑張る

しおりを挟む
 グリエルが奥さんとのクルーザーデートから帰ってきた。

「グリエル、腕の方は大丈夫だったか?」

「ええ、この通り何の問題もありません。それに四肢が無くなったとしても、シュウ様が何とかしてくださると分かっていましたので、痛み以外には気になることはありませんでした」

「……その痛みが問題だと思うのだが、本当に面倒な役割を押し付けてしまって、すまんな」

「痛かったですが、その後にゆっくりさせてもらいましたので、久しぶりに妻とゆっくりできました。本当にありがとうございます」

「ゆっくりできたのならよかったよ。明日からはグリエルが忙しくなるから、病み上がりだけど頑張ってくれ。ガリアにもゆっくりしてもらいたいからな」

「大丈夫です。調子が悪かったのは、目が覚めて3~4時間ほどだけでしたから、早くここへ戻ってきたかったくらいです」

 ワーカホリックか?

「それに、シュウ様の仕事ぶりの報告も受けてますよ。ガリアと部下たちは及第点と言っていましたが、私たちが政務にあまり関わらせなかったのに、ここまでの判断ができるなら十分だと思いますよ。元々学生で、にこ働いたことの無いのですから」

 褒められているようだが、そうでもない気もする……

「ほどほどに頑張ってるよ。仕事を覚えればできるようになるとは思うけど、グリエルたちのように仕事をこなせる気はしないな。それにデスクワークより、畑仕事とかのうほうが好きだからな。仕事を教えるなら、俺の子どもたちの中で興味を持った子にお願いするよ。

 可能な限り俺も頑張るけどさ、優秀なグリエルとガリアがいるから、俺が頑張りすぎるとおかしことになっちゃうかもしれないしね。だから、2人が元気な間は頑張ってもらいたいね」

「それはもう、動けなくなるまで頑張ります。動けなくなる前に後継者を育てないといけないですから、人選を考えないといけませんね」

 グリエルとガリアは、大きな声で笑い合っていた。後継者か、自分の子どもたちかね? それとも部下から引き上げるのかね?

「私たちは業務の引継ぎをしますので、シュウ様は昨日まで通りに報告書を読んでいてください。何かありましたら相談に乗りますので、先に仕事を始めていてください」

「りょーかい。現場でしてもらいたい判断だったら送り返す中に入れておくぞ」

「それで問題ありません。ですが、送り返す報告書は私たちも確認しますので、別でまとめておいてもらえると助かります」

 俺だけの判断で送り返すのは、良くないか。何人かでチェックするべきだもんな。

 裁決権を戻してからは、俺に上がってくる報告書は減ったが、それでもグリエルたちが確認していたときよりも倍以上はある。

 個人的には、数字の報告書……収支報告書のような物の方が気が楽だな。あれは、数字を見るだけでいいからシンプルでわかりやすい。それに違和感があればすぐに確認できるのもいいね。

 例えば、購入費の異常なんかは、過去や他の報告書の類似品を見ればわかるしね。相手の商会とかも関係していると、嘘に嘘を塗り固めているからすぐにボロが出るもんな。

 それに対して、業務報告書だと書いている人の主観とかも入って、確認するのも大変だったりするんだよね。違和感があってもすぐに確認を取れないし、記憶を掘り起こして話をしてもらうことになるから、ズレていることもあるからね。

 っと、そんなことを考えている間に収支報告書に違和感を発見する。

 一部の支出が高いと何かしているとすぐにバレるが、全体の値段を少しずつ上げていると、需要と供給の差で上下する値段だと勘違いしてスルーされるだろうな。

 だけど俺の目はごまかせないぞ! 全体的に値段が上がることはあるだろうが、全部が全部値上がりすることはほとんどない。なのに、全部が値上がりしているこの報告書は、違和感を覚えるのだ。

 俺のカンで言うと、通常の値段から1割は多くなっていないが、結構な差額があると思われる。

 俺の商会を調べて、そこを基準にこれ以下の料金や値段で取引されているのであれば、企業努力によるモノだろう。これ以上の料金や値段であるなら、不正の可能性が高い。これは経験則だけどね。

 ゼニスが本気を出せば、俺の商会以外を駆逐することも出来るが、それでは健全な経済活動とは言い難い。なので、俺の商会の料金や値段は、工夫をすれば問題なく利益を生み出せるあたりに設定されている。全部、ゼニスの仕事だけどね。

 で、実際にその街を調べてみると、全体的に見ると例年より1割ほど商品が安く、施工費なども少しだが安くなっていることが判明する。この街の商人や大工、その他の職種も頑張ってるんだな。

 俺がそんなことを知れるのは、ゼニスが管理してくれている俺の商会の情報を全部閲覧することができるからな。

 この街の商人や職人たちは頑張っているのに、そこにつけ込む屑が庁舎内にいるようだな。どんなお金の流れになっているか分からないが、その金は街のために使われるものであって、屑が触れていい物ではない!

 その街のデータベースへアクセスし、担当者の情報を閲覧する。

 街の大店商会のコネで入ってきたのか? コネだけじゃ入れないはずなんだけどな……面接担当者もグルか? 確認できるけど、細かい捜査は俺の分野じゃない! ということで、

「グリエル、ガリア、ちょっと来てくれ」

 2人を呼んで、更にその街を担当している部下を呼んで、不正をしている疑いのある人物の話をした。

 担当者は寝耳に水だったのか、目を白黒させていた。しばらくすると落ち着き、自分で気付けなかったことを悔しがっていた。多分だけど、たまに報告書を確認している俺だからこそ、気付けるものだったと思うぞ。

 君は君でしっかり仕事しているのは、2人から聞いているから、そんなに落ち込まないでくれ。今悔しがっている担当者が来る前に、2人が必死に擁護していたから悪い人じゃないのは分かってるから。別に悪いことをしていないなら、何もしないっての。

 グリエルたちは、俺が不正などに厳しいのを知っているから、部下を守ろうとしたのだろう。確かに怖い存在かもしれないけど、俺だって闇雲に切り捨てているわけじゃないからな! 2人が俺のことをどう思っているのか、一度聞いてみたいところだな。

 暗部を使って調べるとは言うけど、鬼人たちには向いてないんじゃないか? あいつらは荒事専門だろ?

 だけど、問題なく対応できることが分かった。ってか、俺の知らない間に暗部で働くモノが増えていた。前々から重宝していた、陰に潜むシャドー君をグリエルたちがスカウトして、内部調査などを請け負ってもらっているようだ。

 どこにでも侵入できるシャドー君、誰にも見つけられないシャドー君、これほど調査に向いた人材はいないな。何か欲しい物はないかね? 活躍しているみたいだから、ボーナスを出すぞ。

 後日連絡があり欲しい物を聞いて、首を傾げた。

『遮音に優れ、光も入ってこない空間が欲しい』

 だってさ。理由はすぐに分かったんだけど、シャドー君たちにとって静かで暗い場所は落ち着くんだってさ。俺の素敵空間みたいなものらしい。それが分かったので、暗部の待機場所には遮音暗黒部屋を作った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...