ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,719 / 2,518

第1719話 それってあり?

しおりを挟む
 エリクサーをかけた俺の腕は、シュワシュワ泡を立てている。そういえば、ふりかけてポーション系のアイテムを、自分に使うのは初めてかもしれないな。

 飲んで治したことはあるけど、かけるとこんな感じで治るんだな。視覚的なものはかけた方が圧倒的にいい気がするな。飲む方だと治っていく過程が分かるので、地味に気持ち悪いのだ。だけど、かけて何とかなるのは、外傷だけなんだよな。

 外相を伴わない体の中の負傷だと、かけても多少は治るが飲むより効果が薄くなってしまう。飲ませる余裕がない時とかはかける感じだろうか? 今までも妻たちが使っている所を見たことあるが、意識的に見ていなかったので気付けなかった。

 部屋の温度が氷点下になったと思われる。

 ここで魔法を止めると、溶岩の川がまた動き始めると思う。なので気は抜けない……

「状況確認! 動いている敵はいるか? 追加で増えそうな気配は?」

 俺は自分の目でも確認はしているが、自分以外の目でもしっかりと確認してもらうために指示を出す。

 どうやら、今のところ敵については問題ない様だ。

「負傷に関してはどうなってる?」

 全員の治療が終わったとキリエから報告がある。だが、俺と同じで攻撃をくらって溶岩が体にまとわりついたメンバーの装備に関しては、メンテナンスが必要なほどに痛んでいる部分があった。

 ドッペルの体とはいえ、心臓によくないな。なんて呟いたら、妻たちから総スカンをくらったよ。俺の方は2回目なので、めっちゃ小言を言われた。

 どうするか?

 魔法を止めるわけにはいかないが、続けているわけにもいかない。魔力が枯渇すると大変だからな。

「少し馬鹿げた話だけど、聞いてもらっていいか? あくまでも仮説として聞いてほしい。この部屋の魔物は、実は1匹ってことは無いか? 隔離したのに同じサイズのマグマゴーレムが復活したのに疑問を感じて、溶岩の中からマグマゴーレムが出てきて更に疑問が深くなった。

 明らかに変だと思う。増えるにしても、気配が直前までなかった。ゴーレムの特性かもしれないけど、動いたのに気配が薄いってことは、操られているんじゃないかなって。だから、この部屋自体が魔物の可能性か、この部屋のどこかに核となる何かがあるんじゃないかと考えてみた」

 俺は自分の考えたことをみんなに伝える。納得してくれたようで前衛組は、俺たちが冷やしている溶岩の川の中を調べるために、叩き壊し始めた。他のメンバーは、確認するように部屋の壁や床などを叩き始める。遠距離組は、天井や壁の高い位置に攻撃をしている。

 反応らしき物は無いな。俺の勘違いだったかな?

 結構魔力を使ったな。魔法を行使しながら、魔力を回復するためマジックポーションを飲む。

 ずっと続けているわけにはいかないんだよな、魔力は無限じゃないからな。無限……魔核で何とか代用できねえかな?

 冷やしたい場所に置くタイプならいけるかな? 魔核の周囲を冷やす感じにしておけばいけるか?

 さすがに今の状態でクリエイトゴーレムするのはしんどい。

「ちょっと試したい事があるから、一時的に俺の場所を肩代わりしてくれ」

 そういうと、魔法組の妻たちがアイコンタクトを取り、少しずつ自分たちが受け持っているエリアを広げた。

 俺はAランクの魔石を大量に取り出し、周囲が-100度になるような魔法をイメージして書き込んでみるが、ただ周囲を冷やすだけじゃこの部屋が際限なく冷やされるよな。

 ある程度範囲を指定して冷やす、そんな感じにした方がいいか?

 範囲を決める、その範囲内の温度を下げる。あれ、そこまで広くできないな。範囲を考えるとこの部屋に使う魔核は30個程必要だった。

 出し惜しみする必要もないし、多めに40個用意した。そして、少し間隔を詰めて設置していく。

 一応、回収する時のことを考えて、音声でオンオフが出来るようにプログラムを組んでおいた。

「一先ず、これで時間は稼げるかな? 溶岩の方は何かあったか?」

「特に気になるものはありません。まだ4分の1も掘り返していないので、結論を出すには早いと思いますが、壁や床は何かあった?」

 シュリが前衛を代表して答え、部屋の隅々を攻撃していたメンバーに途中経過を聞いた。

「こっちも、特に変わった様子はありませんね。ただ、他のダンジョンの壁より全体的に脆い気がします。鉱石がとれる場所よりは、はるかに頑丈だと思いますが」

 アリスがそう答えた。

 ダンジョンの壁の硬さって、結構まちまちだったりするんだよな。それこそ、鉱石を生み出す壁だと結構簡単に掘れたりするんだよな。ダンジョンの壁はかなり頑丈だけど、壊そうと思えば壊せるからな……ん?

 壊せるんだから、いちいち扉をくぐる必要なくね?

「なぁ、聞いてくれ……」

 俺は、今思ったことを素直に伝えてみた。

「……盲点でしたね。倒すのに時間がかかるなら、扉の近くに穴をあけて進めば問題ありませんね」

 そうなると俺たちの行動は早かった。

 35階へ降りる階段のある方の壁を壊し始めた。10分もしないうちに人一人が通れる隙間が空いた。

 魔核は放置して、マグマゴーレムが復活しないように置いておくことにした。もしかして、後ろから追ってこられても迷惑だからな。

 それにしても、俺たちがここまで攻撃を受けたのって久しぶりじゃないか? 回復が必要なメンバーが8人も出たんだよな。不意打ちとはいえ、さすがにやられ過ぎたな。まさか、ここまで格下のダンジョンに手こずるなんてな。

 もっと気を引き締め……ても、無理か。今回はさすがにどうにもならなかっただろうしな。

 予想外のことが多すぎた。あそこまで索敵に引っかからない魔物がいるなんてね。予想外過ぎるわ! 気合を入れて索敵してたのに、最後の部屋でまさかの溶岩の川からの不意打ち、気付けるわけないっての。

 倒し方の分からない魔物もこれが初めてだよ。放置できそうだから助かった感じだな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...