ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,717 / 2,518

第1717話 あれで死なないの?

しおりを挟む
「時間的には、後1~2階は下りても大丈夫ですね。皆さん、気を引き締めていきましょう」

 キリエが少し緩んだ空気を引き締めた。

 33階は上の階と変わらず、水晶のオブジェクトは無くなったが、所々に溶岩の川が流れていたりしている。24階から上より光源は少なくなっているが、無駄に濃い赤い光を放っていたフロアよりは全然見やすい。

 敵は変わらず亜人系の魔物、オークの上位種や強化種、ゴブリンの上位種などが出てきている。たまによくわからない木人、木のツルがまとまって人の形をして動いているような奴もいたな。

 あれって、分類するとウッドゴーレムとかだったりするのだろうか? 俺の知っているウッドゴーレムは、太い丸太のような胴体をしているので判断できなかった。わざわざ鑑定をするような相手でもなかったしね。

 亜人系の魔物に加えて出てくるのが、昆虫や爬虫類系の魔物だ。やはりクモが厄介だったが、糸の対処法が分かったので特に気にならなくなっている。ただ、毒が強くなってきているためか、油断をするとまき散らされた毒の霧を吸ってしまい、万能薬で解毒している。

 魔物たちには耐性があるようで、フレンドリーファイアみたいな感じにはならないんだよな。魔物に効かない毒、ということではないんだよな。それならドッペルだって同じ魔物だからな。

 環境的な要因で強化された毒だと思うけど、何でオークたちにも効かないんだろうな?

 怪しい岩があれば、サイズに関係なく弾丸に撃ち抜かれてはいるが、ゴーレムは出てくる気配がないな。

 最短ルートで33階を抜け34階へ到着。

 やっぱり法則通り、ダンジョンの雰囲気は上の階と同じだ。

「今日は、この階を突破したら向こうへ戻りましょう」

 このまま進むようだな。

 予測していた中で2番目に意見が多かった階だ。警戒や索敵をするが、し過ぎにならないように進んでいく。魔物も変わっておらず、強さも変わってないな。

 時折見える溶岩の川ってどうなっているんだろうな? 液状の赤いドロドロが流れているのは分かるのだが、それがどこからきてどこへ向かっているのやら。他のダンジョンの川もそうなんだけどな。水は終点で一旦分解されて、始点で再構築されたりしてるのかね?

 飲んでも使っても減っている気はしないけどな。

 どうでもいいことを考えていたら、隣を移動しているキリエに脇をつねられた。地味に痛いんだけど!?

 特に大きな変化もなく、34階の最後の部屋の前に到着する。今までの部屋とは違い、かなり広いのが分かっているので中ボスとかがいるのでは? と、思っている部屋だ。

 チラッと覗いてみると、

 お前がいるんかい!? と突っ込みたくなる光景だった。ウィスプたちが見つけていなかったから、ワンチャン魔物がいないかと思ってたのだが、堂々とした白熱化したゴーレムが5つほど部屋の中央に鎮座していた。

 俺たちが見れば明らかに怪しい物でも、ウィスプたちには魔物だと判断できなかったのだろう。

 そこにいたのは、マグマゴーレムとでも呼べばいいのだろうか? 今の今まで警戒していた、ゴーレムの強化種が出て来たのだ。部屋の壁付近には溶岩が流れており、扉の前だけに溶岩がない部屋だった。所々に溶岩から突き出た岩なども見られるが、まさか堂々といるとは思わなかったぜ。

「少し拍子抜けですが、あのゴーレムを攻略しましょう。水系は弱点だと思いますが、水蒸気爆発などを考えると悪手だと思いますので、それ以外の攻撃方法で攻略しましょう」

 定石通りで戦うなら、マグマゴーレムの弱点である水で攻めるべきなのだが、あのゴーレムが持っている熱量を考えると、この部屋が高温の水蒸気だらけになる可能性が高い。周囲には溶岩も流れているので、そちらでも水蒸気爆発が起きる可能性も高い。

 昔溶岩エリアを攻略する際に使った、フロア全体を水浸しにする方法も浮かんだが、あれは通路から水を流し込んで壁を作ってやり過ごしてから進んだからな。部屋の中でやろうとすると、大変なことになると思う。

 ヒーラーの2人が、熱の耐性が上がる防御魔法をかける。動いている間に熱さにやられないように、俺はこの部屋の温度を魔法で下げていく。これでも溶岩やマグマゴーレムに近付けば熱さを感じるが、それは仕方のないことだろう。

 戦闘に参加することを禁止されている俺は、補助魔法でみんなへ支援をする。どうやって攻略するつもりなのだろうか? 物理で殴って終わりかね?

 そんなことを考えていると、マリアから放たれた矢が次々とマグマゴーレムに突き刺さ……ってないな。固体に近いと考えていたが、液状のゴーレムのようで刺さったように見えていた矢は、体を抜けて向こう側へ抜けていっていたのだ。

 次は土魔法のロックジャベリン、石の槍を撃つようにキリエが指示している。

 ロックジャベリンは、マグマゴーレムの体に突き刺さり抜けると思っていたのだが、抜けるには勢いが足りなかったようで、刺さった状態で止まった。果たしてこの攻撃は効いているのだろうか?

 長い時間考える必要はなかった。ロックジャベリンが白熱化して、マグマゴーレムに吸収された。

 吸収した所為か、マグマゴーレムが大きくなっていた。これには俺たち全員が苦笑いをするしかなかった。

「物理攻撃は、あまりよろしくなさそうですね。定石通り水と言いたいところですが、今回は魔力のゴリ押しで周囲の温度を極限にまで冷やして、相手の生み出す熱量を超す冷気を生み出してみましょうか」

 キリエの指示により、水や氷などで冷やすのではなく、俺が使った温度を下げる魔法を大規模にして、更に温度を下げた状態にしてみるようだ。

 理由はよくわかっていないが、温度を下げる方が上げるよりはるかに難しい。何かの漫画で、温度を上げる場合は分子の動きを加速させ、下げる時は動きを止める、みたいな話があったっけ? 加速させる方がはるかに簡単とか書かれていた気がするが、本当なのだろうか?

 そんなことを考えている内に、マグマゴーレムの周囲の温度が一気に下がっていく。急激に冷やされたせいか、マグマゴーレムに向かって風が吹くように、空気が流れていっている。

 おぉ?

 しばらくすると効果が出たようで、マグマゴーレムの白熱化がとまり通常のゴーレムのような色に戻っていた。そこは、冷えた溶岩みたいに黒っぽくならないんだな。

 動きは鈍っているようだが、まだまだ動いているな。どう倒すのかと思ったら、前衛陣が近付かずに斧やハンマーを投擲し始めた。

 マグマゴーレムは全身を砕かれ、動かなくなった。

 低温の魔法は解除され、35階へ降りようと進んでいくと、マグマゴーレムの破片たちが白熱化をはじめ集まり始めた。お前は、未来から送り込まれた液体金属サイボーグか! と突っ込みたくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...