1,694 / 2,518
第1694話 怖い病気
しおりを挟む
俺は子ども部屋の扉を開いて、大丈夫か! と叫ぼうとしたが、叫ぶ前に全身を水で包まれ動けなくなった。
すべてを撥ね退けてきた俺だが、リバイアサンのメグちゃんの水には対抗できなかったのだ。とはいえ、ただやられるわけにはいかない! 子どもたちが寝込んでいるんだぞ!
ここで火魔法を使うと水が蒸発するだろうけど、そうすると俺が大火傷をしてしまうだけだろう。ならば、吹っ飛ばす! 魔力を練り上げて、周囲に爆発するような風をまき散ら……
ゴンッ
後頭部に強い衝撃を受けて、意識を手放した。
目が覚めると、体が全く動かなかった。ベッドの上だというのは分かるがいつものベッドではなく、病院の診察室にあるようなベッドだ。あれは、ベッドと呼んでいいのか?
あれよりは幅が広いが、動けないように至るところを拘束されている。手錠やワイヤーなどで……
なんでこんな状況になってるんだ?
仕事に行って、みんなで飲んで、家に帰ってきて、子どもたちがもう寝てると聞いて、顔だけ見に行こうとしたら……そうだ! 子どもたちが寝込んでいるんだった! くそ! 何でこんなことになってるんだ?
ワイヤーも手錠も邪魔だ! 鑑定すると、アダマンタイトで作られた物だった。
ミスリル合金とかにアダマンコーティングなら、多少体が傷付くが力任せに引きちぎれるのだが、総アダマンタイトではさすがにどうにもならん。が、俺には魔法がある! 魔力を大量に使えば、クリエイトゴーレムでも変形させることは可能だ。
クリエイトゴーレムを使おうとして、違和感がある。魔力は練れるのだが、魔法が行使できなかったのだ、なんぞこれ?
というか、何でこんな独房みたいなところに俺は入れられてるんだ?
キョロキョロしていると、部屋の扉が開いた。
「シュウ君、少しは落ちついたかな?」
「何で俺が拘束されてるんだ? 理由によっては……さすがに怒るぞ。娘たちが寝込んでいるから、原因を取り除いて治してやらなきゃいけないんだぞ」
「分かってるわよ。でもね、よく考えて。私はそこまで得意じゃないけど、みんな回復魔法を使えるのに回復していない現状をね。万能薬だってあるけど、誰一人として飲ませていないことをね」
魔法も万能薬も使ってない、使っても意味がないってことか?
「魔法や万能薬では治らないのか? それなら尚更大変じゃないか!」
「違うの。魔法でも万能薬でも簡単に治るのよ」
「じゃあ何で治さないんだ!」
「それはね、子どもたちがかかっている病気が、魔法や万能薬で治すととても大変な事になるからよ」
大変な事になる……?
「シュウ君は知らないと思うから言うけど、特に名前の付けられている怖い病気じゃないのよ。3~4日も寝ていれば問題なく治るの。そして1度かかれば2度とかからないタイプの病気なのよ」
麻疹みたいなものか? 何で治さないんだ? 治るんだろ?
「細かい原理は分かっていないけど、この病気を途中で魔法や薬で治すと、何度もかかるようになってしまうんです。昔、貴族が自分の子どもたちを万能薬で治していて分かったのです。
それ以来、魔法や薬で治すことはタブーとされているんですよ。子どもの頃なら3~4日寝てれば済みますが、大人になってかかると1週間は寝込むことになるんですよ」
マジか、俺が魔法で治すことを考慮して、みんなが全力で止めてくれたのか。
「本当なら、知られずに4日間過ごせればよかったのですが、シュウ君が知れば絶対に魔法で治そうとするだろうと思って、全力で阻止したんですよ。寝込んだと聞けば、絶対に私たちの話を聞かないで、治しに向かうことは分かっていたからね。だから、悪いと思ったけど黙ってたのよ」
俺は何も言えなくなった。実際に俺は話を聞こうとせずに突っ走ったからな。
「状況は分かった。とりあえず、この拘束を解いてくれないか? 直接見に行くのは許可されないと思うから、カメラで覗くのは良いだろ? 子どもたちは苦しんでるのか?」
「熱が出ていて、体が少しダルいみたいだけど元気よ。今日いっぱいは寝ているだろうけど、明日には体を起こせるようになると思うわ。多分、みんなでアニメを見るかゲームをするくらいには、回復するんじゃないかな? 熱が出ているから疲れやすくなってて、すぐ寝ると思うけどね」
そこまで厳しい病気ではないんだな。今日は辛いかもしれないけど、明日は元気な姿をみれるのか……
「カメラ越しで見るのは、明日にするわ。見たらまた沸騰してしまいそうだからな」
「子どもたちのことを思ってくれるのは嬉しいけど、今回ばかりはね。さすがに1人にするわけにはいかないから、今日はシリウス君に見張ってもらうことになるわ。引き続き子ども部屋には、メグちゃんが待機するけどね」
信用ないな。確かに苦しんでいれば、我を忘れていく可能性だって否定できないからな……
「了解。今日は大人しく、趣味部屋……だとすぐに子ども部屋に行けちゃうから、クルーザーにでも行っておくか。近くに水があれば、シリウス君が俺を止められないってことも無いだろうし。誰か、一緒に行ってくれる人はいるかな?」
「それなら、年少組のメンバーがついていってくれるわ。1人にしておくのは違う意味で心配だからね」
そこまで考えられていたのか、拘束を解いてもらって、俺は年少組の妻たちとクルーザーへ向かった。後、大量にスライムたちがついてきた。それ以外の従魔は全員が娘たちの近くにいると言って、スライムたちだけの同行だ。っと、聖獣3匹もいたな。
気を紛らわせようと、いろんなことをしてくれたが、俺の頭の中は子どもたちの事でいっぱいだった。
風呂に入って寝ようとしたが、まったく寝れない。かといって本を読む気にもゲームをする気にもなれない。ずっとグルグルと考えていると、朝になっていた。
子どもたちが元気になったと聞いて、カメラ越しに少しだけ話すことができた。少し目がトローンとしていて顔が赤いが、元気に会話をしていた。
俺はそこで張りつめていた緊張みたいなものがキレて、倒れるように眠ってしまったらしい。
すべてを撥ね退けてきた俺だが、リバイアサンのメグちゃんの水には対抗できなかったのだ。とはいえ、ただやられるわけにはいかない! 子どもたちが寝込んでいるんだぞ!
ここで火魔法を使うと水が蒸発するだろうけど、そうすると俺が大火傷をしてしまうだけだろう。ならば、吹っ飛ばす! 魔力を練り上げて、周囲に爆発するような風をまき散ら……
ゴンッ
後頭部に強い衝撃を受けて、意識を手放した。
目が覚めると、体が全く動かなかった。ベッドの上だというのは分かるがいつものベッドではなく、病院の診察室にあるようなベッドだ。あれは、ベッドと呼んでいいのか?
あれよりは幅が広いが、動けないように至るところを拘束されている。手錠やワイヤーなどで……
なんでこんな状況になってるんだ?
仕事に行って、みんなで飲んで、家に帰ってきて、子どもたちがもう寝てると聞いて、顔だけ見に行こうとしたら……そうだ! 子どもたちが寝込んでいるんだった! くそ! 何でこんなことになってるんだ?
ワイヤーも手錠も邪魔だ! 鑑定すると、アダマンタイトで作られた物だった。
ミスリル合金とかにアダマンコーティングなら、多少体が傷付くが力任せに引きちぎれるのだが、総アダマンタイトではさすがにどうにもならん。が、俺には魔法がある! 魔力を大量に使えば、クリエイトゴーレムでも変形させることは可能だ。
クリエイトゴーレムを使おうとして、違和感がある。魔力は練れるのだが、魔法が行使できなかったのだ、なんぞこれ?
というか、何でこんな独房みたいなところに俺は入れられてるんだ?
キョロキョロしていると、部屋の扉が開いた。
「シュウ君、少しは落ちついたかな?」
「何で俺が拘束されてるんだ? 理由によっては……さすがに怒るぞ。娘たちが寝込んでいるから、原因を取り除いて治してやらなきゃいけないんだぞ」
「分かってるわよ。でもね、よく考えて。私はそこまで得意じゃないけど、みんな回復魔法を使えるのに回復していない現状をね。万能薬だってあるけど、誰一人として飲ませていないことをね」
魔法も万能薬も使ってない、使っても意味がないってことか?
「魔法や万能薬では治らないのか? それなら尚更大変じゃないか!」
「違うの。魔法でも万能薬でも簡単に治るのよ」
「じゃあ何で治さないんだ!」
「それはね、子どもたちがかかっている病気が、魔法や万能薬で治すととても大変な事になるからよ」
大変な事になる……?
「シュウ君は知らないと思うから言うけど、特に名前の付けられている怖い病気じゃないのよ。3~4日も寝ていれば問題なく治るの。そして1度かかれば2度とかからないタイプの病気なのよ」
麻疹みたいなものか? 何で治さないんだ? 治るんだろ?
「細かい原理は分かっていないけど、この病気を途中で魔法や薬で治すと、何度もかかるようになってしまうんです。昔、貴族が自分の子どもたちを万能薬で治していて分かったのです。
それ以来、魔法や薬で治すことはタブーとされているんですよ。子どもの頃なら3~4日寝てれば済みますが、大人になってかかると1週間は寝込むことになるんですよ」
マジか、俺が魔法で治すことを考慮して、みんなが全力で止めてくれたのか。
「本当なら、知られずに4日間過ごせればよかったのですが、シュウ君が知れば絶対に魔法で治そうとするだろうと思って、全力で阻止したんですよ。寝込んだと聞けば、絶対に私たちの話を聞かないで、治しに向かうことは分かっていたからね。だから、悪いと思ったけど黙ってたのよ」
俺は何も言えなくなった。実際に俺は話を聞こうとせずに突っ走ったからな。
「状況は分かった。とりあえず、この拘束を解いてくれないか? 直接見に行くのは許可されないと思うから、カメラで覗くのは良いだろ? 子どもたちは苦しんでるのか?」
「熱が出ていて、体が少しダルいみたいだけど元気よ。今日いっぱいは寝ているだろうけど、明日には体を起こせるようになると思うわ。多分、みんなでアニメを見るかゲームをするくらいには、回復するんじゃないかな? 熱が出ているから疲れやすくなってて、すぐ寝ると思うけどね」
そこまで厳しい病気ではないんだな。今日は辛いかもしれないけど、明日は元気な姿をみれるのか……
「カメラ越しで見るのは、明日にするわ。見たらまた沸騰してしまいそうだからな」
「子どもたちのことを思ってくれるのは嬉しいけど、今回ばかりはね。さすがに1人にするわけにはいかないから、今日はシリウス君に見張ってもらうことになるわ。引き続き子ども部屋には、メグちゃんが待機するけどね」
信用ないな。確かに苦しんでいれば、我を忘れていく可能性だって否定できないからな……
「了解。今日は大人しく、趣味部屋……だとすぐに子ども部屋に行けちゃうから、クルーザーにでも行っておくか。近くに水があれば、シリウス君が俺を止められないってことも無いだろうし。誰か、一緒に行ってくれる人はいるかな?」
「それなら、年少組のメンバーがついていってくれるわ。1人にしておくのは違う意味で心配だからね」
そこまで考えられていたのか、拘束を解いてもらって、俺は年少組の妻たちとクルーザーへ向かった。後、大量にスライムたちがついてきた。それ以外の従魔は全員が娘たちの近くにいると言って、スライムたちだけの同行だ。っと、聖獣3匹もいたな。
気を紛らわせようと、いろんなことをしてくれたが、俺の頭の中は子どもたちの事でいっぱいだった。
風呂に入って寝ようとしたが、まったく寝れない。かといって本を読む気にもゲームをする気にもなれない。ずっとグルグルと考えていると、朝になっていた。
子どもたちが元気になったと聞いて、カメラ越しに少しだけ話すことができた。少し目がトローンとしていて顔が赤いが、元気に会話をしていた。
俺はそこで張りつめていた緊張みたいなものがキレて、倒れるように眠ってしまったらしい。
0
お気に入りに追加
449
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~
霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。
ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。
これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる