ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1686話 回復魔法の恐ろしさ

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 そういえば全員捕まえたけど、この後どうするんだ? 二度とこんなことをしないように、教えることが必要で、そのためのホモークたちだったけど、全部任せてもいいんだろうか?

 ダブルの冒険者チームのリーダーに確認することにした。

「ギルドからの要望は、舐めたまねを許すな! みたいな感じです。ですので、ホモークさんたちの効果は、絶大だと思われます。しばらくここで待機して、ホモークさんたちには好きなだけ、活躍してもらうのがいいと思いますが、どうですか?」

 恐怖って意味では、これ以上の恐怖はなかなかないよな。だけどさ、これって実際に体験しないと分からない恐怖だと思うんだよね。いや、知りたくもないから考えるのやめよう。

 その後話し合って、ホモークたちには1週間ほどこの中で、自由にする権利を与えることにした。好きなだけつまみ食いをしてもいいぞ! 自分の部屋に連れ帰って声だけ聴かせてもいいし、捕まえるときみたいに大勢の前で犯してもいいぞ。

 だけど、女性と男性はしっかりと分けるんで、遠慮なくやってくれていいぞ。

 女性の兵士たちも、オリバーにアウト判定をもらった者たちは、オークたちの処罰対象になる。正直、男でも女でも、犯されている姿も声も嫌になってくる。

 もうね穴の下は、阿鼻叫喚といった感じだよ。時々聞こえる「アァーーーーッ」って野太い声、ほんとどうにかならんかな。妻たちは平気みたいだけどさ、男の冒険者も帝国の騎士たちも顔が青くなってるんだよね。

 みんな考えていることは同じだと思う。もし自分があの立場になったら……と思うと玉が縮みあがっているのだと思う。俺がそうだからな!

 4日過ぎた頃には、穴の下は一部の声を除き静かになっていた。

 ホモークたちがどれだけの体力があるのか分からんが、四六時中ずっといたしている声が聞こえれば、心も折れると思う。近くにいない俺でも心が俺そうだったもん。近くにいて助けを求められる側だったら、俺には無理だね。

 しかも、助けを求めても誰も助けに入らず犯されていれば、絶望しかないだろう。

 それから3日後。

 食事は自分たちで用意できるように、敵軍の兵糧から一部を穴の底に卸しておいたのだが、必要最低限の食事量の半分も減っていなかったと報告がある。あんな声が近くでしてて、仲間が助けを求めてくるような状況で、食事なんて食えたもんじゃねえか。

 処罰対象になっていない人たちも、食欲が落ちているようだ。そして、処罰対象になっていた人間の8割程が、生きることを諦め食事をしていない状況らしい。

 俺も様子を見に穴の底へ降りる。変なにおいが充満しているのではないか……とか思っていたが、そんな事はなく清潔だった。そうならないようにお風呂とかを準備したので、当然と言えば当然かもしれないが、意外だったな。

 そういえば、生きることを諦めていない2割の人間は?

 帝国の騎士もダブルの冒険者たちも苦い表情をしている。マジでどういう事? もうすでに自分で命を絶ったのか?

 無言のまま誘導された先で見たモノは、肌がテカテカな人間たちが飯を食っていた。

「なにこれ?」

「非常に申し上げ難いのですが、そちらの道に目覚めてしまった者たちですね」

 おうふ、聞きたくなかった。そういえば、ディストピアでもホモークが正義の断罪者として処罰した相手が、そっちの道に目覚めてしまった事例がいくつもあったな。

 もしかして、兵糧の減り具合ってこいつらが食べた量であって、生きることを諦めた奴らって、1週間食事を摂っていないのか? 人が水なしで生きてられるのって、大体3日だっけ? 1週間は水だけでも生きていけるけど、何もできなくなる程疲弊するんじゃなかったっけ?

 4日目に声が聞こえなくなったのって、そういうことだったのか?

「なるほど、ブラウニーたちがよくわからん、ドロドロしていた物を準備していたのって、このためだったのか。簡単に死ねると思うなよ! ネルとキリエ、近くに来い。体の方はどうにもならないけど、回復魔法で体力だけを強制的に復活させるぞ」

 3人で穴の底全体に回復魔法を行使する。

 回復魔法は文字通り傷などを回復させることもできるが、それ以外にも体力を回復させることもできるのだ。栄養不足で筋肉も生命維持のために、分解されている状況でこれを使うと……ブラウニーたちが作った食事に飛びつく事になる。

 何せ、見た目はドロドロでもにおいが食欲をそそるのだ。その上、回復魔法でやせ細っている体を、何とか動かせるまで回復し一緒に胃腸の状態を回復させた。普通に食事をしても大丈夫な状況まで引き上げているので、食べる事を止められなくなったのだ。

 先ほどまで死のうと思っていた人間たちの動きじゃないな。それに、ポーションまで食事に混ぜているみたいで、やせ細っていた体が細いが、問題ないレベルまで体が復活していた。

 極限の状態で食事ができるようになれば、死にたいとも考える暇もなく食事に飛びつくか……

 そう考えると、極限の状況まで自分を追い込み、自らの肉体をミイラにして残したお坊さん……即身仏をやってのけた昔の人って、かなりすごいことなんだろうな。俺なら、2日もしないうちに挫折するだろうな。

 そして、復活してしまったということは、ホモークたちにまた追いかけられることを意味するのだが、逃げようとする者たちはいなかったな。逃げても無駄だとわかりあきらめの境地で、生きていられるだけでもありがたい、という心境だろう。

「ここまでくれば、2度とバカなことをしようとは思わないよな? でさ、この後はギルドとしてはどうする予定なんだ?」

「えっとですね、損害賠償を各国に送り付けて、払った国には冒険者ギルドを存続させますが、払わなかった国のギルドは撤収すると聞いていますね。私たちの裁量で捕えた兵士の一部は、連れ帰って奴隷にするなどして問題ないと聞いています」

「あ~、だから1匹辺り3人までならお持ち帰りしてもいいって指示を出したのか。帰れる人間は幸せなのか、連れていかれる人間が幸せなのか、微妙な所だな」

「そうですね。帰った人間たちは戦争に負けた責を押し付けられて、処刑されることもあり得るでしょう。処罰した家のお金を使って、損害賠償を払う国もあるでしょうが、そういう国からも撤退すると聞いていますね。殺されるくらいなら、ホモークのもとで生きていられることを望む人もいると思います」

 極限の選択とは言わないが、帰っても連れてかれてもきついだろうな……
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