ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,652 / 2,518

第1652話 予想外

しおりを挟む
「なるほど。シュウ様は、屋台や食堂を経営している人たちに対して、掃除を楽にできる道具の開発をしてみたいという訳ですか。ゴーストタウンやディストピアの衛生管理のルールは厳しいですからね。厳しくしているのであれば、それを楽にする道具を安く使えるようにしてあげたい、ということですね」

 工房へ戻ってきた俺たちがまず初めにしたことは、グリエルとガリアに今度作るものの話を聞いてもらって意見を聞いている。

「んだな。不衛生では困るけど、清潔に保つのに手間がかかっている状況は、領主的には本末転倒な気がするんだ。屋台の方は、基本的に持ち運ぶことができるような物を、安く作れる仕組みもあるから参入しやすくなってるけど、掃除に手間がかかるのはね。ある場所で掃除できる仕組みを作れたら便利かなってね」

「なるほど。屋台用の掃除エリアですか。安く利用できるようにするってことですかね? 屋台の方はそれでいいかもしれないですが、食堂の方は移動させるわけにはいかないですよね? どうするおつもりですか?」

「そこなんだよな。俺の商会でもいいし街の政策としてでもいいし、清掃業務を請け負う部署を作るのはどうかな?」

「ん~雇う人によりますかね。自分の食堂を綺麗にしてくれる業者といっても、赤の他人ですから入れたがらない店主も多いかもしれませんね」

「そっか、基本的には、奴隷を使うっていうのはどうだ? 朝や深夜の大変な時間の仕事になるから、借金奴隷や労働奴隷として、ゴーストタウンに連れてこられた人たちを使うっていうのはどうかな? どうせお金を出すのは、俺だからさ。多少金がかかっても問題ないかなって思うんだが」

「規模やかかる金額にもよりますが、奴隷を使うのであれば政策として、行う方が良いかもしれないですね。商会の方であれば、二の足を踏む人がいるかもしれないですし、街が行う政策であれば、利用しやすいと思います」

「ん~、そこらへんは任せてもいいか? とりあえず、いくつか試作してみて使えそうだったら、政策として考えてみるか」

 グリエルたちと話し合いを終えて、俺たちは魔道具を作り始める。

「綺麗にする魔道具ね。設置型なら、やっぱりスチーム系かしら?」

「一応作ってみるか」

「そうでござるね。まずはクリエイトゴーレム製の魔道具を作ってから、普通の魔道具で作ってみるでござるよ」

「ゴーストタウンで行う政策であれば、クリエイトゴーレム製でもいいと思うんだけど、普通の魔道具で作る必要あるのか?」

「念のためでござる。おそらくでござるが、お金持ちであれば自分の家専用に、欲しがる人も出てくると思うでござる。そういう人たちに対しては、クリエイトゴーレム製はどうかと思うでござる」

 そういうことか。

「それなら、外見だけはクリエイトゴーレム製も普通のも、同じような見た目にするべきじゃないかしら。見た目があまり違うと、違うものだと思われそうだしね」

「あ~なるほどね。だったら普通のから作って、それに似せてからクリエイトゴーレム製を作るほうがいいだろうな」

 そういって、俺たちは作業を始めた。

 まず作るのは、スチームを作り出す機能かな。水を生み出すのに魔道具を使うのは、さすがに魔石が勿体ないわな。ゴーストタウンは上水道をほぼ完備してるからな。となると、スチームの素となる水はタンクに入れるのがいいかな。

 タンクの付け外しを簡単にできる方が良いよな。でも、屋台用の備え付けはそこら辺を気にする必要はないか? 備え付けは、盗まれないようにする必要もあるか?

 どっちにしても、まずは水をスチームに変える仕組みか……そういえば、あのタイプの家電製品ってどういう造りしてるんだろうな。

 原理は簡単だった。タンクの水を熱してスチームとして、ホースの先などから出せばいいだけだからな。だから、タンクとホースの間に水を熱する機能があるんだろうな。

「試作品できたござるよ!」

 言わなくてもわかってるわ!

 だけど、試作した魔道具は失敗作だった。逆流弁をつけていなかったので、タンクの中に熱した水が逆流してしまったのだ。

 簡単にできるかと思っていたが、思ったより苦戦することとなった。

 ただ単に逆流弁付けただけではだめだった。タンクから熱するところの間に逆流弁をつけてみたのだが、それだけだと逆流弁が機能せずにタンクから水が流せなかったのだ。

 いろいろ工夫してみて、タンクに少しずつ空気を送るようにして熱する部分に多少工夫を加えたことによって必要な条件を満たしたみたいで、機能するようになった。

「まぁこんなもんか?」

「ん~家電製品のあれみたいに、安定してスチームが出ないでござる。機能するようになったでござるが、ムラがあるでござるよ」

「もう少し改良が必要か……」

「というかさ、あれを召喚して分解して、ヒントを得たらいいんじゃない? この世界には法律がないんだし、今までも同じようなことやってきたのに、何で今回はしないの?」

「「……」」

 俺たち2人は普通に作り始めたことによって、製品を召喚して内部構造を調べるということを忘れていた。綾乃に指摘されて気付いた。

 慌てて召喚して内部構造を調べて、それを真似する形でスチームの掃除機が完成した。これで、油汚れは取りやすくなるかな? 清掃部門になら重曹も召喚していいかもしれんな。

「もう1個の問題点は、床だよな。清掃部門を作っても自分たちでしたいっていう人たちもいるし、どうすっかな」

「とりあえず、業務用の床掃除するクリーナーを作ったら? それから色々考えたらいいんじゃない?」

「待つでござる! 地球みたいな床じゃないでござるよ。ほとんどが木の床か、土とか石でできているでござる」

「そうだった。イメージしている床掃除は無理だな。どうすんべ?」

「でもさ、土の所はあまり床掃除に関しては、問題なかったんじゃなかったっけ? バザールメモしてない?」

 バザールがメモをペラペラめくって調べている。

「綾乃殿の言う通りでござるな。床掃除に使う魔道具は慎重に考えた方が良いでござるね。学校とかスーパーで使われているあれを使えば、床を傷めるでござるね」

 確かにそうだな。あまり水を使う魔道具だと、床が腐ってしまう可能性もあるから、色々注意が必要だな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~

桜井正宗
ファンタジー
 異世界で暮らすただの商人・カイトは『レベル売買』という通常では絶対にありえない、世界で唯一のスキルを所持していた事に気付く。ゆえに最強ギルドに目をつけられ、直ぐにスカウトされ所属していた。  その万能スキルを使いギルドメンバーのレベルを底上げしていき、やがてギルドは世界最強に。しかし、そうなる一方でレベルの十分に上がったメンバーはカイトを必要としなくなった。もともと、カイトは戦闘には不向きなタイプ。やがてギルドマスターから『追放』を言い渡された。  途方に暮れたカイトは彷徨った。  そんな絶望的で理不尽な状況ではあったが、月光のように美しいメイド『ルナ』が救ってくれた。それから程なくし、共に世界で唯一の『レベル売買』店を展開。更に帝国の女騎士と魔法使いのエルフを迎える。  元から商売センスのあったカイトはその才能を遺憾なく発揮していく。すると驚くほど経営が上手くいき、一躍有名人となる。その風の噂を聞いた最強ギルドも「戻ってこい」と必死になるが、もう遅い。  見返すと心に決めたカイトは最強ギルドへの逆襲を開始する――。 【登場人物】(メインキャラ) 主人公 :カイト   / 男 / 商人 ヒロイン:ルナ    / 女 / メイド ヒロイン:ソレイユ  / 女 / 聖騎士 ヒロイン:ミーティア / 女 / ダークエルフ ***忙しい人向けの簡単な流れ*** ◇ギルドを追放されますが、実は最強のスキル持ち ◇メイドと出会い、新しい仲間も増えます ◇自分たちだけのお店を開きます ◇みんな優しいです ◇大儲けしていきます ◇元ギルドへの反撃もしていきます ◇世界一の帝国へ移住します ◇もっと稼ぎまくります

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

処理中です...