ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,630 / 2,518

第1630話 珍しく領主っぽいことをした

しおりを挟む
 昨日は、シンラにつかまり仕事へ行けなかった。グリエルからしばらく来なくても、問題なく庁舎は回るらしいので休んでもいいと言われているが、さすがに2日連続で休むのは、なんか落ち着かないものがある。

 もともと、1日の労働時間は長くない。毎日出勤していれば、平均2時間も仕事をすれば終わってしまう仕事だけに、行かなければと言う気になってしまう。

 なので準備を始めていると、何やらソワソワする。何がそうさせるのか分からないが、俺の部屋に変わったところは無い。そもそも、俺には予知とか予見のようなスキルは無い。気の所為だろう。

 出勤しようとすると、玄関に半数以上の嫁たちが待っており、見送りをしてくれるようだ。

 今更だが我が家は、この世界ではほとんど見ない靴を脱ぐ生活をしている。

 そうすると、デジャヴを感じる。何やら近付いてくる音が聞こえる。廊下の先からシンラが現れる。おうふ、この流れか。朝感じていたソワソワ感は、これだったのだろう。昨日と同じように、シンラにつかまった。

 こうなったシンラは、靴の裏についたガムよりしつこい粘りをみせる。

 そして遅れてきたプラムとシオンも昨日と同じように両足にしがみつく。こりゃ、今日も仕事に行くのは無理だな。

 グリエルに連絡を入れると、笑い声が聞こえてきた。もし可能なら、確認してほしい資料が2件ほどあるのでメールを送っておきます、との事だった。

 仕事あるジャン! とか思ったが、後で読んでみて理解した。別に急ぐ必要は無いけど、早く確認しておけば仕事が進むというだけの物だった。俺が確認しなくても、ある程度先んじて準備できるモノだったので、もし可能ならという内容だったのだろう。

 簡単に言えば、ゴーストタウンで行われる祭りについて、2件資料が届いていたのだ。片方は、報告書のような物、もう片方は祭りを行うための計画書だった。俺が確認しなくても、祭りを行うことは決定しているので、遅いか早いかだけの違いだった。

 昨日と同じように、姉たちに回収され何をするか話し合いになった。

 今日は、昨日と違い雨が降っている。そういえば、ここで雨が降るのって珍しいな。1ヶ月で3~4日位しか降らないのだ。食物を作るには結構シビアな地域なのだが、水精霊と木精霊のおかげで植物が育ちやすくなっている。その上、ワームが耕しているので栄養も十分なのだ。

 外で遊べないので、家の中で遊ぶ事になった。

 遊ぶと言っても、下の子たちの相手をして疲れて眠ったら、アニメを見るという流れのようだ。俺っている必要なくね? とか思ったが、寂しい気持ちになるので考えるのを止めた。

 お昼と食べた後に、ミーシャたちがおやつを作る! と宣言したので、ブラウニーたちと見守る形で一緒に作る事になった。

 普通こういうのって、嫁たちが看る気がするけどミーシャたちが何も言わないのであれば、このままでもいいのだろう。

 今日のおやつは、何故かどら焼きだった。ホットプレートで生地を焼き、あんこを挟んだだけだが娘たちは満足している。

 次の日、また捕まるのはどうかと思い、先手を打っておく。ミーシャたちにお願いして、シンラを確保しておいてもらい出勤することができた。

「シュウ様、お疲れ様です。2日間、お子様たちの相手をしていたみたいですね。どうでしたか?」

「子どもたちと遊ぶのは好きだからいいけど、息子の行動が大丈夫なのだろうか? と思うことがあるから、どうしたもんだかな」

「シュウ様は、他の貴族みたいにお子様の面倒を看るのを嫌がりませんね? 子育ては母親の仕事だ! とかいう貴族が多いと聞きますが」

「普通の貴族がどうか知らんけど、俺は俺だしな。妻たちがいるから面倒をみなくても問題ないけど、娘たちに嫌われたくないっていうのが俺の素直な気持ちだから、関わりを持ってるんだろうな。躾なんかに関しては、シルキーたちがいるから問題ないしね」

「娘ですか? 私には、息子しかいないので分かりませんが、嫌われたら嫌ですか?」

「多分、俺が異世界というか、日本という国から来たから思うことなのかもしれないな。日本の中でもメジャーなのかマイナーなのかは分からないけど、よくネタにされる内容ではあるな」

「そうなんですね。雑談はこの辺にして、昨日確認してもらったお祭りの計画書はどうでしたか?」

「そうだな。舞台の建設費が高く感じたけど、あれの理由って何かあるん? 建材が高くなったとか?」

「ダンジョンから取れるのに、建材が急激に高くなることなんてありえないですよ。私も気になり確認したのですが建設費が高いのは、前に武闘会を開いた時に使った場所を再整備して、拡張するみたいです。あの計画書では分かりにくかったのですが、あの周辺にもう1つコロシアムを作り大きな広場も作るようです」

 あの計画書を見て、コロシアムと広場を作る……なんて、誰が思うんだよ!

「あれ書いたの誰?」

「試用期間中の職員となっていますが、本当に作成したのは現地で初期の頃に採用した者でした。今まではそんな素振り見せませんでしたが、どうやら今回の計画で横領を考えていたみたいです。まだ未遂だったので解雇して、ゴーストタウンから追放するだけに済ませました」

「バレたら試用期間中の職員を、スケープゴートにするつもりだったってことか? そういえば、見積もりを見てないんだけど、コロシアムと広場を作る費用としては、あの金額が普通なのか?」

「建設費自体は、あれが普通のようですね。見積もりを担当したのが、ドワーフたちの作った建設会社でしたので、間違いないです。細かい所を修正してはぶくことで、その部分のお金を横領用としていたみたいですね。可もなく不可もない人材だったので、そんなことをするとは思えませんでした」

「まぁ、事前に分かったのなら、問題ないか。貴族の下で働いている奴らって、着服とか当たり前の権利だと思ってるからな。そうでなくても、お前らには税金から高い給料が払われているっていうのにな」

「それを言うなら、貴族も国に払うお金を抑えて私腹を肥やしている奴らは多いですよ。シュウ様みたいに無頓着だと、反対に心配になります」

「無頓着か? 正直な話、俺って生活する上でお金とか必要ないからな。その上商会からはお金が入ってくるし、最悪DPでいくらでも生み出せるし」

 グリエルは苦笑するだけだった。

 この後、コロシアムと広場の件を詰めるために、ゴーストタウンへ行って祭りの会議に参加した。どうせなので、屋台も出しやすいように区画整備して、側だけは備え付けにすることを決めた。

 安全基準を設けているが、一から十まで屋台を出す人間に任せると、目の届かない場所があるので、屋台を出す際の統一規格を作り、簡単に点検できるようにしたのだ。

 お祭り以外でも申請すれば屋台を出せるようにしたので、祭りが終わったら新しいスポットになってくれるといいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~

桜井正宗
ファンタジー
 異世界で暮らすただの商人・カイトは『レベル売買』という通常では絶対にありえない、世界で唯一のスキルを所持していた事に気付く。ゆえに最強ギルドに目をつけられ、直ぐにスカウトされ所属していた。  その万能スキルを使いギルドメンバーのレベルを底上げしていき、やがてギルドは世界最強に。しかし、そうなる一方でレベルの十分に上がったメンバーはカイトを必要としなくなった。もともと、カイトは戦闘には不向きなタイプ。やがてギルドマスターから『追放』を言い渡された。  途方に暮れたカイトは彷徨った。  そんな絶望的で理不尽な状況ではあったが、月光のように美しいメイド『ルナ』が救ってくれた。それから程なくし、共に世界で唯一の『レベル売買』店を展開。更に帝国の女騎士と魔法使いのエルフを迎える。  元から商売センスのあったカイトはその才能を遺憾なく発揮していく。すると驚くほど経営が上手くいき、一躍有名人となる。その風の噂を聞いた最強ギルドも「戻ってこい」と必死になるが、もう遅い。  見返すと心に決めたカイトは最強ギルドへの逆襲を開始する――。 【登場人物】(メインキャラ) 主人公 :カイト   / 男 / 商人 ヒロイン:ルナ    / 女 / メイド ヒロイン:ソレイユ  / 女 / 聖騎士 ヒロイン:ミーティア / 女 / ダークエルフ ***忙しい人向けの簡単な流れ*** ◇ギルドを追放されますが、実は最強のスキル持ち ◇メイドと出会い、新しい仲間も増えます ◇自分たちだけのお店を開きます ◇みんな優しいです ◇大儲けしていきます ◇元ギルドへの反撃もしていきます ◇世界一の帝国へ移住します ◇もっと稼ぎまくります

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

処理中です...