ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1530話 考え事

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 のんびりとした日が続いていたある日、事件が起きた。

 ハイハイをするようになったシンラが、プラムとシオンから逃げるようになったのだ。そして姉たちの近くにいると、プラムたちが姉たちに抱き着くので自分が解放されることを、1歳になる前に学んだようだ。

 姉たちは、弟妹たちが可愛くてしょうがないので、ついつい一緒に遊んでしまうようだ。会話ができるわけではないのでスキンシップをとって、一緒にアニメを見たり遊びっぽいことをするくらいなのだが、子どもたちにとってはそれで十分なようだ。

 遊んだ後は、一緒にお風呂に入り汗を流してから、子ども部屋にある大きなベッドで一緒に寝るのがルーティーンとなっているようだ。

 姉たちがいれば、プラムとシオンがぐずらないと理解したシンラに、ちょっと戦慄した。

 やはり、プラムとシオンのことが負担になっているのは間違いなさそうだが、3人を引き離すわけにもいかないので、姉たち、ウルたちに協力してもらってシンラの負担を減らそう。俺だと蹴られるからな。

 ウルたちも、唯一の男姉弟としてシンラのことは気になっていたようで、快く引き受けてくれた。交換条件みたいに、一緒に遊ぶことを約束させられたけど、子どもたちと一緒に遊べるなら交換条件にもならないのだけどね。

 事件のようで事件じゃない、シンラの精一杯の抵抗が成功したようで、寝るとき以外はプラムとシオンの依存が日に日に少なくなっていったとかいないとか。

 子どもの成長って面白いもんだな。同じ環境で育った姉たち、ミーシャ、スミレ、リンドの3人は比較的に似た成長をしている気がするが、シンラはプラムとシオンとは違う成長をしていると思う。男と女の違いなのか、2対1のせいなのかわからないが。

 姉がいる環境という意味では、ミーシャたちとプラムたちは違うが、世話をしてくれる人がたくさんいる……という意味では同じ環境で育っているためか、くっ付いて寝るのが好きなのは一緒だな。

 ミーシャたちは今も一緒に寝ているが、昔はもっと密着して、それこそ、プラム、シンラ、シオンの3人と同じようにくっ付いて寝ていたっけな。

 そういえば下の子たち、離乳食が始まってたな。日本の基準で考えれば遅いのかもしれないけど、ちょっと前まではまだ離乳食はまだ食べてなかったんだよな。母乳とミルクだけで栄養が賄えるのか心配だったが、そんなことは関係ないとばかりにすくすく育っていたけどな。

 ミルクも地球の知識をフルに使って、シルキーたちが開発した特性のミルクだったから問題なかったのかもしれないな。それに離乳食もシルキーたちの特製なので、今もモリモリと食べている。反対に食べすぎじゃないかと心配になるくらいなので、食事の量は調整しているのだとか。


 ディストピアでは環境がいいのか、赤ちゃんの数が増えている。日本みたいに保育所不足にならずに済んでいるのは、近所で助け合いながら子育てをしているからだろう。

 例えば、ディストピアでは週休2日が基本となっている。自営業、露店や屋台、飲食店をしている個人は、自己責任となっているが、街が管理している店は週休2日がきっちり守られている。地球でいう土日に休めるわけではないが、それは地球でもそういう人たちはいる。

 休日がしっかりあるので、近所で休みを調整しながら持ち回りで子どもたちの面倒を看ているらしい。

 さすがに家の中でとなると、プライベートの問題もあるので、土地がまだまだ余っているディストピアでは、区画ごとに自由に利用できる集会場のような場所を作っている。子どもたちの面倒が看やすいように、可能な限り視界を妨げることのない作りになっていたりする。

 もちろん、赤ちゃんのおしめを替えたり、体をきれいにする場所には壁があったりするが、子どもたちだけでは入りにくい造りになっている。中に入るためには鍵が必要になるのだが、そのカギがドアノブの役割も果たす仕組みになっている。

 そのカギを保管している場所は、子どもたちの手の届かない高所であり、鍵をとるための道具も準備している。安全対策を何重にもすれば、面倒なことが増えるのだが、それは子どもたちの安全のために、利用前と利用後くらいは骨を折ってもらっている。

 他にも、衛生面がしっかりしていたり、妻たちを中心として回復魔法や医療の知識が豊富な人材が多くいるので、子どもの死亡率がかなり下がっている。それでもゼロにならないのは、仕方がないことなのだろうが。

 俺の商会がある街の子どもたちの死亡率も、他の街に比べればはるかに低くなっている。商会支部に孤児院と治療院が併設されているためだ。

 特に治療院で働いている治療師、回復魔法使いの多くが、シングルマザーで子どもたちのために頑張っているということもあり、赤ちゃんや子どもたちのケガや体調不良であれば、深夜でも診ていることがあげられる。

 大人の場合は、死ぬ恐れや生活に大きな支障がない怪我の場合は、どんなに金を積まれてもどんなに偉くても、深夜対応することはないのだとか。

 初めのころは対応していたらしいのだが、小さな傷まで対応しているとキリがなくなってしまったのだとか。そのため、ある一定の線引きが行われた。ゼニスが主となってトリアージのような基準を導入したのだ。その判断をするのは、待機している治療師だったり商会の職員だったりする。

 特に面倒だったのが、金持ち……他の商会のお偉いさんや、貴族のような地位の高い人間、高級士官のような人たちで、寝てれば治るような病気や怪我でも、自分の家にまで呼び寄せて、看病が必要ないのに看病させようとしたりしたらしい。

 中には、強引に自分専属の治療師になるように、脅したりしてくる輩も多かったと報告を受けている。

 反対に、闇に生きる人たち……悪いことは悪いのだが、必要悪として街に溶け込んでいる類の人間は、そこら辺をわきまえているようで、治療院を陰から見守ってくれていると報告にあった。死が間近にある人間には、治療してもらえるところの存在は大きいのだろう。

 ただ、必要悪と本物の悪を治療師たちに見極めることはできないので、商会が必要悪側の人間と交渉をして、情報を提供してもらっているのだとか。

 ただの悪人は、横暴であることが多く、暴れようとすればリビングアーマーが取り押さえてくれるので、セキュリティー面は完璧である。

 ミスリル合金で作った鎧に憑依させたリビングアーマーは、ちょっとやそっとでは壊せないし、重さもあるので強引に突破することも難しい。そして何より、眠る必要がなく長時間の待機も問題にならず、疲れも知らない、最強の警備員である。

 明日は、子どもたちに対する支援策について、グリエルたちに確認してみようかな。
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