ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1526話 プロトタイプ

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 先ほど思考したように、2段階で判断するように作ってみよう。

 まず初めに、目から取り入れた情報を判断する魔核……情報を判断するという基準は、どうすればいいんだ? 動きを真似、模倣するだけなら同じように動けばいいだけなのだが、見たものを自分で判断するってどうすればいいんだ?

 人造ゴーレムを作った時のことを思い出す。

 攻撃に対しての対処法は、どう設定したんだっけ? あやふやな記憶を思い出そうとするが、無理だったので諦めた。

 今どうやって作っているのかを考えたが、今は集めた情報を蓄えているサーバーのような役割をしている魔核から、コピーしているだけだったな。

 初めの頃ってどうだったっけ?

 動き方を簡単に設定してから、自分で学習させたんだったな。行動の最適化を魔核自体がしてくれていたような。ん~どう作っていいかわからんな。

 見たものを判断するというよりは、見たものを理解できるようになってもらわないと、判断も何もないよな。

 判断ね。魔核でアバウトにイメージしたらできたりしないだろうか?

 まずは見る機能、目を作る。それにつなげるように、見たものを取り込むというか、記憶する機能を作成。

 実験のために、監視カメラの映像を見せてみることにした。まずは、何も動いていない映像を覚えさせる。それを覚えたところで、物が動いたら知らせるように音を出す仕組みとつなげる。

 監視カメラの近くで遊んでいた娘たちに、カメラの近くによって手を振ってもらうようにお願いすると、それを見た試作中の人造ゴーレムが音を発した。

 一応、違いを判断することはできているようだが娘たちでも、ほかの人間でも、おそらく風で飛んできたある程度大きなものであればこいつは音を発するだろう。

 違いを覚えさせるためには、学習させるしかないけど、どうやって教えるかが問題だな。下手に覚えたら、間違いを間違いのまま、正常だと判断してしまう恐れがある。

 ん~考えれば考えるだけ、頭が痛くなってくる。

「とりあえず、違いを判断することはできる。今度はそれを判断する魔核を作れればいいんだが」

 近くで教えることのできる人間がいれば、ん? 別に人間じゃなくても、俺たちに近い思考をしている者たちならいいんじゃないか?

 ここにきて俺は名案を思い付いた。

 召喚をした相手には俺の知識の一部が転写されている。それにドッペルは、俺が意識を移す特性上、思考をトレースしている形跡がある。俺たちがドッペルから出た後も、俺たちに近い行動や発言がみられると誰かが言っていた。

 ドッペルであれば、四六時中近くにいて人造ゴーレムに教えてくれるのではないか?

 とにかく、経験させることが必要かトップダウン型だと、こういう判断って困難だということがよくわかるな。自分で考えることが苦手なのが、トップダウン型の特徴ともいえるか。

 人間いや、魔物でも何でもいいのだが、その判断基準を覚えさせることができれば多少違うか?

 考えが煮詰まってきた気がする。

 時計を見るが、思ったより時間が経っていない。バザールたちと合流するまでにまだ2時間ほどある。

 少し休もうとしたところで、タブレットがピロンッと音を立てた。誰かからメッセージが来たようだ。

 確認すると、娘たちからだった。先ほど、お願いした実験の協力について、報酬を要求する! みたいなことが書かれており、その報酬は一緒におやつを食べよう! というものだった。かわいらしい報酬があったものだ。

 ほほえましく思いながら、娘たちに連絡を返す。おやつを食べて少しゆっくりすれば、合流する時間になりそうだな。

 娘たちは、元気いっぱいだった。突然、マイワールドに作った新しい家(ディストピアにある家と同じ物)に移動するようにお願いしたのに、それを思わせないような元気な姿だった。ドッペルを操ることがまだできないので、窮屈な思いをさせることになりそうなのが心苦しいな。

 おやつの時にも悩んでいたようで、何を考えているのか教えてほしいとお願いされたので、なるべくわかりやすく説明したが、伝わったかどうか?

「ん~内容はよくわかんない! でも、綾乃お姉ちゃんが作ってるゴーレムに、物を覚えさえようとしているってことだよね? その判断をする、まかく? が作れないから困ってるんでしょ? なら、魔核を召喚してみたら、ハクたちみたいに頭がよくなるんじゃないの?」

 ……ん? ミーシャは、召喚した魔物たちを頭がいいと評した。確かに普通の魔物に比べれば、召喚で直接生み出した魔物は、俺の知識の一部を引き継いでいるので、頭がいいのは確かだ。

 それを応用して、魔核を召喚してみてはどうか? と、ミーシャは言っているのだろう。子どもの発想は、時に大人が乗り越えられない壁を容易く乗り越えてしまう発想を出してくる。

 そもそも、魔核を召喚するという発想がなかった。出来る出来ないは関係ないのだ。召喚することによって、知識の一部を焼き付けるという発想が今重要なのだ。

 魔石を生み出したところで、魔核ではないので焼き付けることはできない。探してみたが、クリエイトゴーレムで作る魔核は召喚リストにはなかった。

 ではどうするか、答えは簡単だ。

 人造ゴーレムを作った際の実験で、普通のゴーレムに魔核を埋め込んだ場合どうなるのか、という実験をしたのを思い出す。その時に判明したのは、魔核による各種強化は可能だった。重要なのは、判断能力速度も高くなっていたと、実験結果が出ている。

 魔改造で強化したゴーレムに、学習させたい魔核を埋め込んで、ゴーレムに直接書き込ませればいい。

 実験の結果、半分成功半分失敗といった感じだろうか?

 成功は、一定以上の知識を魔核に書き込むことに成功したこと、失敗は判断する能力がその魔核自体にはなかったことだ。

 どういうことかというと、ある行動に対して異常だということまではわかるのだが、それを異常だと外に伝えることができなかったのだ。

 ゴーレムに書き込ませた魔核は、もう一度手を加えるとデータがすべて飛んでしまうため、メインの魔核とつなげて判断を吸い出す形をとったのだ。そうすれば、メインの魔核が異常とかおかしいといった判断のなされたものに対して、外部に聞くシステムを構築した。

 外部に聞くというのは、ドッペルのことなんだけどね。ドッペルとゴーレムの書き込んだ魔核は、同じ判断基準を有している。俺が基本となっているからだ。なので、ドッペルから何が異常なのかを教えてもらい、勉強をさせるということだ。

 回りくどい形になったが、時間をかければある程度対処できるだろう。俺だけじゃなく、バザールにも同じように作ってもらえば、正確性が高まるかもしれないな。
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