ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,430 / 2,518

第1430話 どうすんべ?

しおりを挟む
「シリウス、よろしく」

 さすがにフル装備で波に逆らうわけではないので、足元にボードのような物を装着して、シリウスの水流操作で海賊船の上に打ち上げてもらう予定だ。

 キューっと鳴くと、近くに来た海賊船に打ち上げてくれる。

「おっとっとっと、簡単に外れるようにしといてよかった」

 今回は、サーフボードやスケートボードのような何も固定するタイプではなく、スノーボードのような足を固定するタイプのボードを使っている。それでもすぐに外せないと困るので、簡単に外せるような作りにしてあったのだ。

 まぁ俺たちの中で、ボードというとスノーボードのイメージが強く、ボードといった時に普通にそれになった感じである。

 海賊船の甲板に乗った俺たちが取った行動は、まず俺がグレイプニルを使って甲板で手をふっていた(本当は何とか攻撃しようとあがいていただけ)パイレーツスケルトンたちを拘束する。

 かなり簡単に拘束出来たと思うけど、昨日の16体から倍の32体になったので、それなりに苦労している。それでもそれなりでしかなく、Lv999の魔物を32体を拘束したにしては、大した手間がかかっていないのが現実である。

「みんな、他に魔物がいないか確認してくれ。後衛組は、収納していた人造ゴーレムを出して周囲警戒」

 見えている範囲にいたのは32体だったが、船の中にいないとも限らないので探すように命令する。大きな船なので、どこに敵が隠れているか分からない。

 さすがに、魔法使いであるライム、ジュリエット、レミーはさすがに船内に入って探索に加わるのは難しいので、俺と一緒に待機だ。ただ待っているのもあれなので、俺たちは昨日と同じくキングから魔力を吸い取る作業をしながら待つ事にした。

 後この場に残っているのは、キリエだけだ。キリエも後衛でヒーラーなので、他の妻たちに比べると近接戦闘は得意ではないのでここで待機しながら、昨日と同じように人造ゴーレムたちを指揮している。

 手分けして30分程船の中を探したようだが、特に魔物はいなかったそうだ。構造上、木材でできている。魔法生物の特性上、素材に影響されて柔らかい魔物となるのだが、その木材がイビルエントという魔物の素材らしくかなり頑丈なのである。しかも、大きい為かなりタフである。

 まだタフなのはいい、一番問題なのは回復力が高いのだ。回復にもタイプが2種類ある。決まった量を回復するモノと、決まった割合を回復するモノの2種類だ。そして今回の海賊船は、後者の割合回復が採用されている可能性があるということだ。

 それを調べたのは、待機していたキリエが人造ゴーレムたちに指示を出して甲板で叩かせていたのだ。

 その様子を観察して、可能性の1つとして報告してくれたのだ。

「この巨体だからそれだけタフだよな……それが割合回復とか本当に勘弁してほしいな」

 基本的に魔物は、大きくなればなるほど体力も高くタフになるのが普通なのだ。それに当てはめると、この海賊船もかなりタフだということになる。しかもイビルエント、木の魔物としてはかなりランクの高い魔物の木材を使った船なので、普通の木材に比べたらかなりタフである。

 それに、船が魔法生物だったことにも驚いているが、それ以上に素材が表記されるとは思っても見なかったな。

「シュウ様、少し気になってんですが……このキングも、魔力が回復している気がするんですが」

 え? まじで? ライムから聞いた情報を確認するために、キングの鑑定を行っていると、1分に1度程見えている魔力ゲージが回復する様子が見られた。

「回復してるな。どのくらい回復しているか分からんが、一応ドレインしている量の方が多いから、維持し続ければ倒せるだろうけど、昨日は回復してなかったから、この海賊船の効果なんだろうな。能力が強化されるだけじゃなかったんだな」

 俺の言葉を聞いて、みんな苦笑している。

「とりあえず、30分位海賊船を攻撃してみようか? ほどほどでいいから、攻撃してみよう」

 みんなが個々に武器を準備して、自分が攻撃しやすい場所へ移動していく。しばらくするとドカドカ音が聞こえてくる。

 異形型の人造ゴーレムたちは、船内に入ると窮屈で攻撃どころではないので、甲板でえーこらえーこら頑張っているが、異形型だけあってみんな独特だった。

 まずケンタウロスタイプは、甲板の上を全力で走りながらそこら中を叩いていた。走る力を強くして踏み込む力でダメージを与えながら、いろんな所を叩いてさらにダメージを増やしているようだ。

 次にアラクネタイプは、魔法型なので一番ダメージを与えやすそうな、帆に向かってバカスカ魔法を撃ちこんでいた。

 ラミアタイプは、マストに巻き付いてグイグイ締め付けて上半身でマストを殴っているのと、体を振り回して鞭みたいに尻尾を使って色々な所を叩いている。

 一番まともに見えるのはハーピータイプの人造ゴーレムかもしれないが……こいつらはこいつらで、かなり異常である。羽根を使って、攻撃に手足を上手く使うため人型ゴーレムの2倍くらいの密度で攻撃をしている。

 人型は武器を持って叩いているので結局のところ、実際に与えているダメージは同じ位である。

 30分程頑張ってもらって判明したことは、

「みんな、一旦終了!」

 ダメージが入っていれば止めるつもりは無かったんだが、回復する量の方が圧倒的に多いのか総合的に見て、ダメージを与えられていない。

「この回復に何かしらのルールがあるのか分からないけど、ダメージを与えられない海賊船を攻撃するより、時間がかかっても確実に倒せるこいつらを先に倒してみよう。もしかしたら、レイスみたいに海賊船に召喚されるかもしれないけど、倒してみないと分からないからな」

 そう俺が言うと、シュリがみんなを集めて、攻撃する対象を指示している。同時に攻撃できる人数も決まっているし、武器によってはまた話が変わってくる。あれ?でも、何か話が進んでいないように思える。

 シュリたちの様子をうかがいながら、俺たちが今現在魔力を吸収しているキングを見る。目算で1割ほど減ったと思われる状態だ。このままいけば後4時間半……なげえな。それでも体をフルに動かしているメンバーよりは疲れないけどな。

「シュウ様、全員でパイレーツスケルトンたちを攻撃するのではなく、一部の人間だけで攻撃させてもらってもよろしいですか? 多分、長期戦になると思われるので、交代して持続的に戦う必要があると思います。それに、安全地帯を作ってもこのサイズだと、壁が壊されてしまうかと」

 アダマンタイト製の壁でも、繋げている部分があるので、その部分から壊れる可能性がたかい。ならば、この上で持続的に戦っている方がいいかもしれんな。

 許可を出すと、嫁たちの大半が休憩に入った。そして、ブラウニーたちや従魔たちもこっちに来てもらうように、シリウスにお願いをして連れて来てもらう事になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...