ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1425話 金属に回復魔法だと……

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「キリエ! 落ち着け! 慌ててもいいことはないぞ! 流れは良くなくても、状況はこちらが有利だ! ゆっくりと試せることを試せ!」

 キリエが焦り始めている状況から、戦闘開始時まで時間が遡る。

 パイレーツスケルトンたちをバーストチェインで、引き寄せた。

「一旦、俺が前に出るよ。【グランドバースト】」

 俺が今使っている武器は、骨系に有効である槌を使っている。そのなかで、土魔法を合わせて使うスキル、グランドバースト。地面が爆発するように、地面から岩がはえる全周囲攻撃である。なので、前に出てパイレーツスケルトンたちの中心でスキルを使った。

 スキルを使いその勢いで、一旦みんなの下へ戻る。

 そうすると準備していたのか、まだ鎖で繋がっている状態のシュリが強引にパイレーツスケルトンたちを引き寄せ、本来は両手で扱う武器である2メートルを超える両手斧を片手で持ち、パワースイングを使用する。

 横薙ぎに振るわれた斧は、相手を粉砕する勢いでせまる。

 骨を叩いたとは思えない音が鳴り響くって、見た目は骨でもオリハルコンでできているんだから、この音は必然かもしれないな。

 チェインの移動距離限界まで吹き飛ばされたパイレーツスケルトンたちは、またもや強引に引き寄せられ前衛を任されている残りの4人が、各々に強力な攻撃スキルを使用し吹き飛ばす。

 本来のパイレーツスケルトンであれば、これで骨の2・3本を軽く砕いていたはずなのだが、そこはやはりオリハルコンというだけあって、凹みはしたが壊れている個所は1ヵ所も無かった。ナイトとルークに至っては、俺以外の攻撃をクイーンとビショップ、キングに届かないように守っていた。

「シュウ様、予想以上に硬いですよ。一番弱いポーンですら、全体から見て3パーセント程しかダメージを与えられていませんね。待ってください! クイーンが回復させたようですね」

 人造ゴーレムもパイレーツスケルトンたちも、金属でできているのは変わらないのだが、パイレーツスケルトンたちは魔物である。そのため、回復魔法が有効だったのだ。

「そっか、魔物だもんな、骨が金属でも回復できるよな。よし、アリス。ポーンでいいから釣り上げて後ろのメンバーと協力して、フルボッコにしてみてくれ。倒せそうならそのまま倒してしまってかまわないぞ。シュリは俺とメインに防御、残りはバラつかないように注意してくれ」

 俺が指示を出すと、すぐに行動を開始する。アリスが発動していたバーストチェインを解除して、単体用のチェインを使用しポーン1体を釣り上げることに成功する。

 残りの15体は、釣り上げられたポーンを追いかけるように移動し始めた。

「マジかよ! ヘイトを無視して不利な仲間を助けようとするのか! キングがいるせいか? それともこいつらの特性? そんなことを考えている場合じゃない。【ショックウェブ】」

 体を1回転させるようにして遠心力をつけた槌で、思いっ切り横薙ぎに叩きつける……何もない空中を。そうすると、槌が止まった場所からハウリングを起こしたような音が一瞬だけ聞こえて、空気が震えた。

 衝撃波がパイレーツスケルトンたちに襲い掛かる。行動を始めていたが、衝撃波によってその場に押し留められた。

 所詮、形無き攻撃、金属である奴らには効果が薄い。分かっていても、有効的な範囲スキルが思いつかねえんだよ! 色々な武器を極めている弊害かもしれない。特に普段使わない武器は、スキルを良く忘れてしまう。

 俺に続いてシュリが、メガトマホークを使用して、15体に対して斧を投げた。スキルなので世界の法則を歪めて、斧が複数に分裂して相手にせまる。原理は全く分からないが、敵にあたった後に手の中に戻ってくる本当に謎スキルである。

 他のメンバーもシールドスイングやシールドチャージなど、盾を使ったスキルを中心に移動するのを阻む。

 パイレーツスケルトンたちは助けに行きたいが、目の前にある壁を越えなければたどり着けないことを理解したようで、ポーンが中心になって大盾持ちの俺とシュリを攻略しようと攻撃を始めた。

 大盾である程度波状攻撃は防げたのだが、さすがに3~4体が同時に攻撃仕掛けた後に、死角から、ポーンの後ろからナイトが仕掛けてきた攻撃を盾で受けることができず、籠手で攻撃を防ぐ場面もあった。多少動きにくいけど、金属鎧を装備しておいてよかった。

 俺たちは、基本的に時間を稼ぐことが目的なので、吹っ飛ばし効果のあるスキルを使って有利に立ち回れるように反撃をしている。

 後ろに連れて行かれたポーンは、集中攻撃を受けて体力が削られているのだが、ダメージが50パーセントをこえると、どんな状況で会ってもクイーンが回復を始めるのだ。

「クイーンも引き離して、回復魔法を使えない状況を作り出せれば倒せると思うけど、本当にそれでいいのか?」

「今は、無理して倒す必要は無いのでは?」

「確かにそうだな。えっ!? キリエの方のレイスが復活してないか?」

 俺は、目を疑う光景を目の当たりにしてしまった。人造ゴーレムたちが倒したブラッドリーレイスが次の瞬間、キングレイスの横で復活したのだ。シュリもその状況に驚いている。何でキングから倒していないかよく分からないが、向こうはこちらより良くない状況だと判断する。

「アリス、そのポーンをあっちに帰してやってくれ。このまま無理に倒さず、キリエたちの様子を観察しながら時間稼ぎをするぞ」

 後ろのメンバーの援護もあり、先程よりキリエたちの様子を観察できるようになった。

 あれはDPで召喚されている可能性が高いな。創造神は、理不尽なことを言うが、ルールに従ってダンジョンが作られているはずなので、無限わきなどという理不尽なことはないはずだが、どれだけDPが溜まっているか分からない状況では、持久戦はあり得ない。

 おそらく、キングの側にわくというのがミソなのだろう。多分、起点になっているだけだと思うから、キングを排除するのが良い気がするのだが……初めの作戦通りなら、人造ゴーレムたちでフルボッコにするはずだった。何かしらのアクシデントがあり、方向転換した。

 その理由は分からないが、向こうを指揮しているキリエがそう判断したのなら、何かがあったのだろう。そして、近くにいない俺たちは支援することもできない。

 決定的に分かり切っている状況が1つだけある。こちらは相手にダメージを与えられているが、向こうは有効打が1つもない。流れは悪くとも、状況ではこちらが有利だということだ。

「キリエ! 落ち着け! 慌ててもいいことはないぞ! 流れは良くなくても、状況はこちらが有利だ! ゆっくりと試せることを試せ!」

 そう叫んだ。
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