ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,382 / 2,518

第1382話 うまれた

しおりを挟む
 娘たちが眠ってからどれくらいの時間が経っただろうか? 規則正しい4つの寝息を聞いていると、短いような気もするが長いような気もする……ん~ピーチは大丈夫なのだろうか?

 それにしても子供って体温が高いんだな。今は両サイドに2人ずついるので、保温力もかなり高い。

 ぼーっといろんなことを考えていたら廊下から慌ただしい音が聞こえてきた。

「シュウ君、赤ちゃんが生まれたわよ」

 そういってミリーが部屋に入って来た。その後ろからカエデとリンドもついてきている。娘たちを連れて行くために一緒に来てくれたようだな。

 娘たち4人は起こされるが、まだ半分以上夢の中でミーシャたちは母親に、ウルは俺にしがみつくような形になり顔を胸に擦り付けている。

 次第に目が覚めるだろう。4人を連れてピーチの下へ向かう。

 分娩室ではピーチの赤ちゃんが産湯に入れられており、体を綺麗にしてもらっていた。現代の出産施設では、産湯は賛否が分かれるらしいがここでは産湯に入れている。

 産湯に入れるデメリットとしてあげられるのが、体温の低下だと言われている。だけどここではそんなことは起こらない。シルキー監修の下、ブラウニーたちが管理しているこの部屋が、赤ちゃんに悪影響を与えることはまずありえない。

 それに1人が専属でバイタルをモニターしているので、何かあればすぐに対応が可能である。先ほどまでは涼しかったはずの部屋が、今では少し暑く感じる位に温度があげられているのだ。

 うーん。ピーチの赤ちゃんは、俺の赤ちゃんでもあるんだけど……やっぱり何か、お猿さんみたいだな。ミーシャの場合はネコミミがあったし、スミレもブルムも今の姿をちっちゃくした感じだったから、ピーチの子供もそうなのかと思っていたが違った。

 そういえば、産まれてすぐの人間の赤ちゃんを見るのって、初めてじゃないか? ミーシャは獣人、スミレとブルムはドワーフだもんな。

 キレイにしてもらった赤ちゃんが、ピーチの腕の中におさまる。部屋の外から見ていたから分かりにくかったが、ピーチが抱くとその小ささがよく分かるな。ミーシャたちも小さかったもんな。

 そんな様子を見ていると、腕の中にいたウルの目が覚めたようだ。抱っこされているのは問題なかったのだが、何で抱っこされているのか分からなかったらしく首を傾げていたので、赤ちゃんが生まれた事を伝えると……

「赤ちゃん!? どこどこ?」

 そう言って周りを探し始める。ウルの声で3人も目が覚めたようだ。4人の視線がピーチの腕の中にいる存在に釘付けになる。

 今は顔が見えないが、腕の中に何かがいるのは理解しているようだ。

 みんなの目が覚めた事に気づいたピーチが、俺たちの立っている窓の近くに来てくれた。普通なら出産後にこんなに動けるはずはないのだが、キリエのサポートもあり既に動けるまでに回復している。

 この窓をはさんでいると声は聞こえないのだが、マイクとスピーカーを設置してあり、今は話ができるようになっている。

「まだ見えないけど、お姉ちゃんたちがいますよ~」

 ピーチが赤ちゃんの顔が見えるように体の位置を変え、ウルたちに挨拶しているような感じで話をしている。

「ちっちゃいね」

 そう言ったのはブルムだ。娘たちの中で一番小さいのがブルムである。ブルムは自分より小さいものを見るのが初めてなのだ。小さいものと言ってもシルキーやブラウニーたちを除いて、という意味だが。

 ミーシャは獣人で成長が早く、スミレは種族としてはドワーフなのだがロリでもビア樽でもないようで、普通の人と同じような成長をしている。それに対してブルムは、ロリドワーフの血を受け継いだためかスミレより少し小さい。

 なので自分より小さいく、赤ちゃんを見るのが初めてだったのだ。

「そうだね。ブルムも生まれたばかりの時は、このくらい小さかったんだよ。もちろんミーシャやスミレもね」

「そうだな。3人とも小さかったな。ウルも同じように小さかったはずだぞ。4人だけじゃない、俺だって他の皆だって生まれた時はみんな一緒で小さかったんだぞ」

 リンドがミーシャたちに話し掛けていると、ウルが少し寂しそうな顔をしたので、寂しい気持ちを紛らわせるために自分たちの話も付け加える。

「ピーチ、あなたの赤ちゃんはどっちだったの?」

「女の子だったわ。ご主人様、名前はどうしましょうか?」

 ん~生まれてから考えればいいかな? とか思ってたからまだ何も考えてないんだよな。後、とても気になることが!

「なぁピーチ、何時までご主人様って呼び続けるんだ? 結婚もしてるし赤ちゃんも生まれた……そろそろ呼び方を変えないか? 今すぐとは言わないけど、娘たちが大きくなってきたのに妻がご主人様って呼んでいるのは、何か嫌だな」

 ピーチは黙ってしまった。ここに来ていた他の妻たちも黙ってしまった。癖のような感じでしみついてしまっている、呼び方を変えるのは大変かもしれないけど、やっぱり呼び方は変えてほしいわけで……難しいかな?

 ちょっと変な空気になってしまったけど、

「ピーチ、俺の子を産んでくれてありがとな。大変だったと思うけど、嬉しいよ。これからもよろしくお願いします」

 ピーチにお礼の言葉をかけると泣いてしまった。

 抱かれているウルたちは、ピーチが何で泣き出してしまったのか分からないので、頭にクエッションマークを浮かべているが、ミリーたち母親は「いきなりそれは泣いちゃうよね」と窓をはさんでピーチを落ち着かせている。

 途中、泣き過ぎて足に力が入らなくなってしまったピーチは、付き添っていたキリエに支えられてベッドに戻った。

 ピーチの産んでくれた子は3400グラム、日本の平均にすると500グラム程重いがこの世界では、この位が平均的だと言われている。

 問題ないのだろうが、2~3日はここで様子を見てから子ども部屋に移動するらしい。

 先日話し合った結果、子ども部屋を広くしてみんな一緒にいられるように改造している。もちろん寝るタイミングの違う子供たちなので、専用のスペースを用意したりと気を使っている。もし気になる所があったらその都度作り変えて行く予定だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...