ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,365 / 2,518

第1365話 仕入れ

しおりを挟む
「「「大量ゲット~~」」」

 伊勢海老の入った生簀を見て、ミーシャ・スミレ・ブルムの3人は声を上げて喜んでいる。その姿は微笑ましいのだが、この船に設置されている生簀なのだが、見える範囲に後5つある。

 どれだけ魚介類を仕入れるつもりなのだろうか?

「次に向かうのは、ホタテの養殖場です!」

 3人が生簀でワイキャイ言っているが、ウルは俺の横で次の予定を話してくれた。こういったところはお姉ちゃんなんだなと思う瞬間だな。

 目の前の物に興味をとられてしまう妹たちと、今日の目的を忘れずに俺のことを考えてくれるお姉ちゃん。普通ならウルも向こう側にいてもおかしくないのだが、環境か妹の所為か分からないがもっと子どもらしくしてもいいと思うぞ。

 そう思いながら、俺に次の予定を説明してくれたウルの頭を撫でてあげる。嬉しかったのか、照れながらも受け入れてくれた。

「「「あ~ウル姉! ズルい!」」」

「おっと、見つかってしまったな。でも3人は伊勢海老に気を取られて、今日の目的を忘れていただろ? そんな子にはしてあげられないぞ」

「「「む~~~」」」

 3人とも頬がパンパンに膨れ上がって抗議の眼差しをしているが、俺のことを忘れて生簀を見ていた間にウルは、ブラウニーに次の行き先を告げていたのだ。

「ウルはしっかりと俺に説明してくれたぞ? 伊勢海老を受け取った所までは良かったけど、その後に生簀を見てお父さんを放置してたよね?」

「「「そんなことない!」」」

 失態を挽回する、と言うわけではないが、俺の膝や横にへばりついて次のホタテの養殖場の説明をしてくれる。所々間違えてしまうが、ウルやブラウニーにフォローしてもらい、頑張って説明してくれた。

 このホタテの養殖場は、ディストピアが完成して早い段階で作られている。

 ここは俺が手をかけたダンジョンになるので、よく知っている場所だ。仕切りやなんだかんだと検証して、ある一定の条件を満たせば範囲内をダンジョン化することが可能だったのだ。

 その中で各魚介類にあった環境をダンジョンの機能で作成して、簡単に養殖できる環境を作ってしまったのだ。

 呼び名は特になかったのだが、俺の家にあるダンジョン農園に影響を受けて、ここで働いている人からはダンジョン養殖場と呼ばれている。

 ホタテも俺が丸焼き? 浜焼き? が好きだということが広まっており、優先的に環境を整えてほしいとお願いされて、俺の食卓によく上がる。バーベキュー以外では、刺身やフライ、ソテー等で提供されている。

 ちなみに伊勢海老にダンジョン養殖場を準備していないのは、適した環境がよく分かっていないので、現在のようにダンジョンの外でも研究が続けられている。一応、ダンジョン養殖場にも伊勢海老のエリアはあるのだが、こちらは成功していない。

 このホタテの養殖場では、自分たちで収穫することが出来た。ここでは加工品にする人も待機していて、とれたてを目の前で捌いてくれた。ホタテの貝柱を生で食べる事が出来た。

 あまりに貝柱が大きくて口いっぱいに含んでしまい、飲み込むのに時間がかかってしまった。

 そのまま隣にあるカキの養殖場へ。そこでも採れたてを生で食べさせてもらった。娘たちも食べているのだが、まだ小さいので1つを4人で分けて食べている。

「本当はもっと採れたてを食べてもらいたいのですが、食べ過ぎるとお昼が食べれなくなってしまうのでここまで!」

 ウルの宣言で実食はここで終わりのようだ。採れたてを食べる機会って普段ないから、新鮮でおいしく感じるんだよな。今度、それを目的として予定を組んでみようかな?

 伊勢海老⇒ホタテ⇒カキ⇒車エビ⇒アワビと養殖場を巡って、次についたのは養殖場ではなく、海の上に浮かぶ漁港のような場所だ。

 現在ディストピアで魚の養殖が行われているのは、ダンジョン農園の海エリアだけだ。あそこではうちの食卓だけでなく、ちょっと高価な食事を準備する際に使われる高級品としてお偉方の口に入る食料だ。

 それに対して湖では魚の養殖はせずに、海の上に浮かぶ漁港のようなダンジョンの機能を使って海流を作り、その中を通過する魚を収穫する形をとっている。

 こんな方法なのに、漁獲量も種類も安定している。ここでとれない種類の魚もいるので、それに関しては船を出して魚人と一緒に漁をしているそうだ。

 この漁港のような場所は、縦長に作られており通過した魚の種類が分かるようになっている。さすがに同じ個体なのかは判断できないのでアバウトにはなるが、通過した魚の数と種類で大体の数を推測している。

 減ってしまった魚に関しては、稚魚やある程度大きな個体を放流して数を調整している。多くなり過ぎれば、ダンジョンの機能を使って回収して安売りをしている。

 ということで、この漁港のような場所は家畜エリアや畑エリアと同じように、ディストピアやゴーストタウンの庶民の食卓を豪華にしている。

 食事をとる人に対して供給が多くなる事が多いので、加工品に出来ないほど多く取れた時は、ディストピアの食卓が魚一色になることも多い。無駄を少なくする努力をしているが、手探り状態なので度々そういうことが起きる。

 そしてこの漁港では、マグロを5匹仕入れた。可食部にすると何キログラムくらいか分からないが、そんなに準備しても食べれなくないか?

 マグロは釣りたて取りたてを食べても美味しくない。ある程度熟成させないと美味しくないので、ちょうど食べごろのマグロを、今日に合わせて注文していたのを取りに来た形だ。

 ここでは他に、ブリ・カツオなども仕入れた。こんなにいろんな種類を食べられるのだろうか? そういえば、俺と一緒に魚を食べる事を隠していたが、ここまで準備されていれば一緒に食べる事がバレてしまうだろう。秘密にする意味はあったのか?

 こうやって仕入れた物を積んで目的地へ船を走らせる。

 あれ? てっきり加工場の方へ行くと思ったら、沖へと向かって船が動いている。

 到着した場所は、俺の記憶に無い島だった。すでに船がいくつも到着しており、その島からはドワーフの爺さんの声が聞こえている。

 ここは、海の上の別荘として、妻たちがグリエルと相談して作った場所らしい。何故グリエルかと言えば、ここでも仕事ができるようになっているからだ。俺のね……そのための機能を書斎に仕込んでいるらしい。

 そこまで大きくない島だが、俺の家と従魔たちがある程度運動できるくらいだ。島の周囲が4キロメートルくらいだと教えてもらった。その島の東側に船着き場があり、その近くに別荘がある。

 そこから南に向かって天井だけの付いている、バーベキュースペースが準備されている。普通の食事も問題なくできるようにもなっている感じだ。

「小僧! 遅いぞ! 腹が減って仕方がないわい!」

 到着すると同時にドワーフの爺が俺に苦情を言ってきたが、近くにいたブラウニーに引きずって別荘の陰に連れていかれた。その姿に両手を合わせて見送っている他の爺様方……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

処理中です...