ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1333話 訓練

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 食後すぐに運動するわけにはいかないので、娘達と遊んでから砂場へ向かう。

 基本的に庭とかダンジョン農園の中で訓練していたので、道場のような物を使っていない。だけど、今回はウルだけでなく、ミーシャたちもいるので転んでも比較的安全な砂場に来たのだ。

「特訓、頑張る!」

「「「特訓! 特訓!」」」

 4人がめっちゃはしゃいでいる・一応怪我をさせないように、スライムも呼んで体に取り付いてもらっている。いざという時は守ってくれ!

 走れるようになったスミレやブルムが、口で「シュッシュ」言いながら拳を突き出している姿が可愛い。シャドーボクシングのつもりかな? ただ拳を突き出しているだけなので、ボクシングには見えないな。

「みんな! 体をほぐす所から始めるよ!」

 好き勝手に騒いでいるウルたちを捕まえて、軽いストレッチを始める。

 無理やりほぐしすぎるのは、子どもたちの体に良くないと考えて軽くほぐすくらいのストレッチにしている。

 本人たちが満足するように訓練するだけなので、それっぽくやるだけだ。

 木の棒に布を巻いて、殴ったり蹴ったりしてもケガをしないように配慮した棒を砂場に突き刺して、倒すという子どもたちの満足感をついた訓練方法だ。

 木の棒を深く突き刺してしまうと、ウルたちでは倒せないので浅く突き刺している所もミソだ。

 俺たちの場合は、ただの木の棒ではすぐに折れてしまうので、まっすぐな世界樹の枝を突き刺して使っている。

「じゃぁみんな、この棒を自分の力だけで倒すのよ!」

 ミリーの掛け声で、俺たちは木の棒を相手に殴る蹴るの攻撃を仕掛ける。

 俺は自分に割り当てられた世界樹の枝を全力で叩きながら、娘たちの様子を見る。

 「ホアァァァ!」とか「チェストォォォ!」とか実に女の子らしくない掛け声で木の枝を叩いている娘たち。一生懸命叩いている姿は可愛いのだが、その掛け声は無いと思うぞ。

 娘たちの掛け声にも思う所はあるのだが、俺の世界樹の枝を叩く音にも思う所がある。

 パシンッとかコンッとかもっと高い音が鳴るのかと思っていたら、重低音が響き渡っているのだ。

 ドゴンッとかズンッとか俺の思っている音と違うから! ミリーやカエデ、リンドは、俺の思っているような音をたてて叩いているので、俺の叩き方が悪いのだろうか?

 しばらく叩いて気付いた。拳はグローブをつけているのでまだよかったのだが、殴っている内に手首や肘が痛くなってきたのだ。他にも、保護されていなかった脛に痛みが……

 脛は単純に頑丈な世界樹の枝を蹴っていたから、当たり所が悪くて痛くなったという事は分かる。でも、何で手首や肘に痛みが出たんだ? 今までにない現象だ。

 動きを止めて、痛みを確認していると、

「シュウ君、どうしたの?」

「いやさ、殴ってたら手首とか肘が痛くなってさ。今までこんな事は無かったのに、どうしてかなって思ってさ」

「もしかして、力が強すぎる反動で耐えられないのかな? 力に対して、体のパーツの耐久度が足りてないのかもしれないですね。DPで体を作り変えたのに痛みが出るって、力も一緒に強くなったから耐えられなかったのかな?」

 何か聞いた事あるな。ハードパンチャーの中には、殴った反動で体を傷める人がいるって。

 確かにステータスやチビ神に作り変えてもらった俺の体は、この世界でもおかしなくらい強くなっている。だけど、それに比例するように体も頑丈になっているはずなのに、それでも傷めてしまうものなか?

「もともと、力が強かったのか体が弱かったのかもしれませんね」

「体が弱かったが正解かもしれないな。地球にいた時は、インドアでゲームばっかりしてたからな。運動神経は悪くなかったけど、体はそこまで強くなかったと思う」

「どうします?」

「痛くなる事が分かれば、治しながら訓練すれば、多少は耐久度が上がるんじゃねえかな?」

 という下心を持ちながら、回復魔法で持続的に回復するリジェネを使い訓練を開始する。

 重低音を響かせながら世界樹の枝を殴っていると、娘たちが俺の方を見ていた。え? 俺、何かおかしいか?

 娘達が言うには「とーたんの叩く音、かっこいい!」という事らしい。

 何か褒められると恥ずかしいな。めっちゃにやけたいのを我慢して、まじめな顔でまた殴り続ける。

「シュウ……その顔はさすがにキモイわよ」

「えっ!?」

 どうやら娘たちに褒められた後、我慢している顔がヤバかったらしい。カエデの後ろでミリーもリンドも頷いているので、相当キモイ顔をしていたのかちょっと引いた顔をしていたのが印象的だった。

 顔をほぐしてから再度訓練を開始する。

 相変わらず、鈍い音を響かせて世界樹の枝を殴る。手首や肘が少し痛むが、リジェネの効果によって回復していく。

 無心になって叩いていると、気付く事があった。

 何か鈍い音の中にも気持ちい音をたてることがあった。そして、その音が鳴るとなんかスカッとする。よく分からないけど、気持ちいので続けていく。

 どれくらいの時間だろうか? 長いような短いような……声をかけられた。

「シュウ君。少し休んだらどう? リジェネで治しているとはいえ、無理しているわけだから体に良くないわ。ゆっくりしましょ」

「ん、あれ? みんな、寝てる?」

「そうよ、シュウ君は3時間程殴ってたのよ。ウルたちは、途中で疲れて寝てしまったわ」

「3時間? そんなに殴ってたのか?」

「そうよ、3時間も殴ってたのよ。だから、休みましょ? それに、もう少ししたら昼食になるから、シャワーを浴びてきた方がいいわよ。娘たちに「くちゃい」って鼻をつままれて言われたくないでしょ?」

「っ! それは嫌だ! えっと時間は、11時半か。それなら後1時間くらい時間があるな。少しサウナに入ってリフレッシュしてくるわ。娘たちの事はよろしくね」

「当たり前でしょ。そろそろみんなを起こして、シャワーを浴びさせるわ」

 そりゃそうか。寝てるとはいえ、多少汗をかいたんだからシャワーを浴びさせるのは当たり前だな。多少熱いのにタオルケットをかけているのは、体を冷やさないようにしてるのだろう。

 さて、さっさと風呂でも入ってくるか。
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