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第1328話 勇者がいるけど
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暫く意見を交わして、俺は閃いた!
「そっか、そもそも街に近付かせないって言うのはどうかな? 各門に小さな街、商人が売り買いできるようにするって言うのはどうだ? 移動に関しては、兵士の移動に使っている魔導列車を使えるようにする、というのはどうだろうか?」
一番初めに反応したのは、俺の話を聞きながら書類整理をしていたグリエルだ。
『門の近くに商人が集まるエリアを作って、そこで売り買いをするですか? 魔導列車を使えるのであれば、商人の負担は大きくはないでしょう。ですが、大変になる事は変わりません。それで売り上げが劇的に伸びるとは思えませんし、そのエリアに宿を作らないといけないですよね? そこら辺はどうしますか?』
俺は少し悩み、
「商売の事はほとんど知らないから何とも言えないけど、仮に売買エリアと名付けた場所を専門に商売をする商人を作るのはどうかな? その商人は、門から街の間の護衛代や経費分の儲けが出るような形で商売をさせる……みたいな?」
途中参加のゼニスが、
『それは、相手の商人がその分安くしないと成立しないですよね? 門から街までの往復2日として、その間の護衛代や経費分をどう判断しますか?』
「やっぱり難しいか」
『おそらくですが、その説明をしても誤魔化す奴らは腐るほどいると思います。往復2日短縮できて、儲けが増えるのであれば多少の事はするかと。2日違えば、時間にゆとりができます。その2日を休みに使うもよし、何度も蓄積して行商回数を増やすのもありですしね』
「いい案かなって思ったんだけど、そうでもなかったな。宿に関しては作らなくてもいいかなっておもってたんだ。区画分けしたスペースに馬車を入れておける倉庫と野営できるスペース、炊事できる場所を用意すればいいかなって。どうせ野営する予定だった期間なんだしね」
『経費の面ではいいかもしれないですが、商隊の士気は下がるかもしれませんね。商会のキャラバンなら、野営の方が快適だったりしますが、他の所ではそうはいかないでしょう。街での休憩も無しにとんぼ返りは、正直きついと思いますよ』
『ゼニスの意見に付け加えるのであれば、商人はいいかもしれませんが、街で宿をしている人や武器を修理する工房の人は、商売が成り立たなくなると思います」
「言われてみれば、ゆっくりできる期間を野営させる事になるわけか……俺たちなら気にならなくても、そう言う装備が最低限の商隊なら反対に疲れてしまう。それに、街で商売している人の事を何も考えてなかったな」
『ですが、シュウ様の意見は面白いと思いますよ。試しにゴーストタウンで実験してみましょうか? 売買エリアを作ってみて、様子を見るのはどうですか?』
グリエルが提案してきた。
その話の過程で、こんな意見が街から上がっていると、
ゴーストタウンは広くて整っているが、最近花街以外は雑然としているらしい。そのため外の商人が来ても、仕入れ物を探すのに面倒で運ぶのにも時間がかかってしまうと不満が上がっていた。それと同じで、街の商人も運ぶ場所がバラバラで手間がかかるから何とかならないか……だってさ。
そう言う意味では同じ街の中に売買エリアを設ければ、外の商人用の商品を扱うのも楽になるのでは? とグリエルから提案があった。
とはいえ、街の中をいじって移動させるわけにはいかないので、比較的商人が利用する宿が多い場所の近くに、売買専用のエリアを設ける事にした。
そして、近くの空き地に商隊を主な対象とした宿を出してくれる人材を募る。宿をもともと経営していて問題がないと判断した人に関しては、持っている宿と交換できるようにしては? と俺が言ったので、その意見は簡単に通ってしまった。どうせ俺のお金で宿を建てるんだし、俺の意見が通るのはあたりまえか?
細かい部分に関しては、実際にエリアを作ってから利用している商人に話を聞いて改善していく事に決まった。
そして3日後、
勇者はまだ野営地に残っている、本当に何がしたいのやら?
『シュウ様、売買エリアの件ですが今お話しいいですか?』
監視業務についてのんびりしていた俺に、グリエルから連絡が入る。
『宿屋の件なのですが……』
「募集が誰も来なかったとか?」
『いえ、その逆で、宿を経営している家族などから申し込みが殺到しまして、用意していた2つでは足りないと判断しました。なので、宿を増やす許可をいただけないかと……』
「ん? 何で俺に聞くの? ゴーストタウンの事なら俺に許可を求めなくても、グリエルたちの判断で増やせばよくないか?」
『シュウ様の意見とはいえ、実験的な試みになりますので許可なくやるのは問題があります。特に、宿を交換してあそこに来て下さる方たちには、もし何かあった時のための補償をしないといけませんので、そのあたりの相談もしないといけません』
グリエルたちなら問題ないと思うけど、そう言うならしっかりと話し合わないとな。
その話し合いで決まった事は、
・宿を交換して協力してくれた人には、しばらく税金がかからないようにする。
・売買専用エリアが上手く軌道に乗らなかった場合は、元の宿屋へ無償で戻れるようにする。
・その他こちらの不手際で損害を与えた場合は、1つ1つに対して保証を考慮する。
簡単に言うと、こんな感じにまとまった。
『シュウ様、さすがにこれは相手が有利すぎませんか?』
ゼニスは、商売する側が有利すぎるのでは? と意見を言ってきたが、すべて無視だ! 成功すればねたまれるかもしれないが、その場合は見る目の無かったお前たちが悪い! 競争で負けた場合なら、今までの自分たちのサービスが悪かったと思い直してもらおう。
この条件に集まった数は、83……その内、宿を経営しているもしくは経営していた数、58……多くね? 他の商売からの参戦が25。この中で宿を手に入れられるのは、10。
宿のサイズは全部一緒で、1人部屋が3部屋、2人部屋が6部屋、4人部屋12部屋、雑魚寝の大部屋2部屋。大体100人程が止まれる宿になる。平均的な商隊の2~3隊が止まれる数だ。
最後に選考基準はグリエルに任せたが、宿の規模が変わる場合は人材を確保できるのか、新規参入であれば宿を任せられるのか? といった所を重点的に見るとの事だ。商売の事なので、ゼニスが見極めるようだ。頑張ってくれ!
「そっか、そもそも街に近付かせないって言うのはどうかな? 各門に小さな街、商人が売り買いできるようにするって言うのはどうだ? 移動に関しては、兵士の移動に使っている魔導列車を使えるようにする、というのはどうだろうか?」
一番初めに反応したのは、俺の話を聞きながら書類整理をしていたグリエルだ。
『門の近くに商人が集まるエリアを作って、そこで売り買いをするですか? 魔導列車を使えるのであれば、商人の負担は大きくはないでしょう。ですが、大変になる事は変わりません。それで売り上げが劇的に伸びるとは思えませんし、そのエリアに宿を作らないといけないですよね? そこら辺はどうしますか?』
俺は少し悩み、
「商売の事はほとんど知らないから何とも言えないけど、仮に売買エリアと名付けた場所を専門に商売をする商人を作るのはどうかな? その商人は、門から街の間の護衛代や経費分の儲けが出るような形で商売をさせる……みたいな?」
途中参加のゼニスが、
『それは、相手の商人がその分安くしないと成立しないですよね? 門から街までの往復2日として、その間の護衛代や経費分をどう判断しますか?』
「やっぱり難しいか」
『おそらくですが、その説明をしても誤魔化す奴らは腐るほどいると思います。往復2日短縮できて、儲けが増えるのであれば多少の事はするかと。2日違えば、時間にゆとりができます。その2日を休みに使うもよし、何度も蓄積して行商回数を増やすのもありですしね』
「いい案かなって思ったんだけど、そうでもなかったな。宿に関しては作らなくてもいいかなっておもってたんだ。区画分けしたスペースに馬車を入れておける倉庫と野営できるスペース、炊事できる場所を用意すればいいかなって。どうせ野営する予定だった期間なんだしね」
『経費の面ではいいかもしれないですが、商隊の士気は下がるかもしれませんね。商会のキャラバンなら、野営の方が快適だったりしますが、他の所ではそうはいかないでしょう。街での休憩も無しにとんぼ返りは、正直きついと思いますよ』
『ゼニスの意見に付け加えるのであれば、商人はいいかもしれませんが、街で宿をしている人や武器を修理する工房の人は、商売が成り立たなくなると思います」
「言われてみれば、ゆっくりできる期間を野営させる事になるわけか……俺たちなら気にならなくても、そう言う装備が最低限の商隊なら反対に疲れてしまう。それに、街で商売している人の事を何も考えてなかったな」
『ですが、シュウ様の意見は面白いと思いますよ。試しにゴーストタウンで実験してみましょうか? 売買エリアを作ってみて、様子を見るのはどうですか?』
グリエルが提案してきた。
その話の過程で、こんな意見が街から上がっていると、
ゴーストタウンは広くて整っているが、最近花街以外は雑然としているらしい。そのため外の商人が来ても、仕入れ物を探すのに面倒で運ぶのにも時間がかかってしまうと不満が上がっていた。それと同じで、街の商人も運ぶ場所がバラバラで手間がかかるから何とかならないか……だってさ。
そう言う意味では同じ街の中に売買エリアを設ければ、外の商人用の商品を扱うのも楽になるのでは? とグリエルから提案があった。
とはいえ、街の中をいじって移動させるわけにはいかないので、比較的商人が利用する宿が多い場所の近くに、売買専用のエリアを設ける事にした。
そして、近くの空き地に商隊を主な対象とした宿を出してくれる人材を募る。宿をもともと経営していて問題がないと判断した人に関しては、持っている宿と交換できるようにしては? と俺が言ったので、その意見は簡単に通ってしまった。どうせ俺のお金で宿を建てるんだし、俺の意見が通るのはあたりまえか?
細かい部分に関しては、実際にエリアを作ってから利用している商人に話を聞いて改善していく事に決まった。
そして3日後、
勇者はまだ野営地に残っている、本当に何がしたいのやら?
『シュウ様、売買エリアの件ですが今お話しいいですか?』
監視業務についてのんびりしていた俺に、グリエルから連絡が入る。
『宿屋の件なのですが……』
「募集が誰も来なかったとか?」
『いえ、その逆で、宿を経営している家族などから申し込みが殺到しまして、用意していた2つでは足りないと判断しました。なので、宿を増やす許可をいただけないかと……』
「ん? 何で俺に聞くの? ゴーストタウンの事なら俺に許可を求めなくても、グリエルたちの判断で増やせばよくないか?」
『シュウ様の意見とはいえ、実験的な試みになりますので許可なくやるのは問題があります。特に、宿を交換してあそこに来て下さる方たちには、もし何かあった時のための補償をしないといけませんので、そのあたりの相談もしないといけません』
グリエルたちなら問題ないと思うけど、そう言うならしっかりと話し合わないとな。
その話し合いで決まった事は、
・宿を交換して協力してくれた人には、しばらく税金がかからないようにする。
・売買専用エリアが上手く軌道に乗らなかった場合は、元の宿屋へ無償で戻れるようにする。
・その他こちらの不手際で損害を与えた場合は、1つ1つに対して保証を考慮する。
簡単に言うと、こんな感じにまとまった。
『シュウ様、さすがにこれは相手が有利すぎませんか?』
ゼニスは、商売する側が有利すぎるのでは? と意見を言ってきたが、すべて無視だ! 成功すればねたまれるかもしれないが、その場合は見る目の無かったお前たちが悪い! 競争で負けた場合なら、今までの自分たちのサービスが悪かったと思い直してもらおう。
この条件に集まった数は、83……その内、宿を経営しているもしくは経営していた数、58……多くね? 他の商売からの参戦が25。この中で宿を手に入れられるのは、10。
宿のサイズは全部一緒で、1人部屋が3部屋、2人部屋が6部屋、4人部屋12部屋、雑魚寝の大部屋2部屋。大体100人程が止まれる宿になる。平均的な商隊の2~3隊が止まれる数だ。
最後に選考基準はグリエルに任せたが、宿の規模が変わる場合は人材を確保できるのか、新規参入であれば宿を任せられるのか? といった所を重点的に見るとの事だ。商売の事なので、ゼニスが見極めるようだ。頑張ってくれ!
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