ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,288 / 2,518

第1288話 禁断の魔法(物理)

しおりを挟む
「何で逃げてないんだ?」

 メイドの大半がまだそこには残っていたので、事情を聴いてみる事にした。そうすると、意外な事が判明する。

 俺は、お城に勤めていて見た目もそれなりに美人揃いだったので、てっきり貴族や豪商、名家等のご令嬢かと思っていたが、それは勘違いだったようだ。

 貴族や豪商、名家の人間は、この城でのメイドの扱いを知っているので、自分たちの娘をそんな所へ行かせるわけもない。そう言う事をさせるのであれば、娘を交換する形で他家に修行に出すらしい。

 じゃぁここにいるのは?

 見た目がそれなりにいい平民の娘なのだとか。ここにいるのは、街で働いていたり歩いていた所を強制的に城に連れてこられ働かされているらしい。朝から晩まで一人前になるまで指導員に鞭を打たれ、一人前になっても城の人間に鞭を打たれ、地獄のような所なのだとか。

 中には、指導員や城の人間に鞭を打たれ亡くなった人も多いのだとか。

 普通、自分の国の中枢で働けるって言うのは、名誉な事であるはずなのに、メイドにとってみたら、死を宣告された職場なんだとか。自由はなく、給金も無し奴隷のような扱いだな。

 それを聞いてしまった俺は、悩む。さすがに自分の国の人間にまでこんな事をしているとは……少し悩んで、妻に連絡を入れた。

 相談相手は、起きてきたピーチだ。まだ休んでいていいと言ったのだが、もう大丈夫だと言ってきかないので相談にだけ乗ってもらった。後で強制的にでも休ませないとな。

 話している間に年長組も集まってきたようで、結果、

 帰る場所も無く、このまま放置しておくと死ぬ未来しか見えないと、だからゴーストタウンに連れて帰る事になった。

 とはいっても400人も載せられる船をここに出すのは簡単だけど、地下道を拡張しないとな。

「希望者は俺の街に連れて帰ってやる。そこでしばらくは自活が出来るように面倒を看てやるから、そこから先は自分の力で頑張ってくれるなら着いてこい。この国に未練があるなら残った方がいいぞ。しばらく考える時間をやるから、付いてくる気があるなら隣の部屋に来い」

 ダンジョンに続いている洞窟のある部屋に戻ってくると、シリウスが帰ってきていた。問題なく届けてきて、一番偉そうな人間に手紙を渡して来たってさ。褒めてくれくれオーラが出ていたので、頭を撫でてやった。こいつって何か子どもっぽいな。

 5分もしない内にメイドが全員こっちの部屋に移動してきた……まさか全員?

 意思を確認してみたら、行く場所や未練のある人は、俺が居なくなった段階で城から出て行ったらしい。城全体をドームで囲んだから唯一の出口は、俺が作った水路だけなんだよね。マップ先生で確認したら、びしょ濡れになりながら出て行ったみたいだ。

 全員で368人、ゴーストタウンの人口が10万人を超えたくらいだったっけ? 結婚適齢期の女性がこんなに増えたら、男が全然足りなくねえか? そこら辺どうなってんだろな? 一夫多妻制を認めているから、問題ないのか? 帰ったらその辺も確認しないとな。

「俺の従魔たちに続いてこの洞窟の中を進んでいってくれ。明かりが無いと困るだろうから、100個程ランタンを出しておくから、3~4人で1個の割合で使ってくれ。後処理をしたら追いつくから先に行っておいて」

 そう指示を出して、俺は事後処理を進める。

 この城は必要ないので解体すべし! ドームで囲んでいるので外への影響はない、ならば!

 護衛にいつもの3匹、ダマ、シエル、グレンが残っているので、グレンに2匹と俺を乗せて空中に運んでもらう。

『主殿。ここまで来て何をするのですか?』

 そう聞かれたので、

「普段できない極大魔法でも使ってみようかと思ってね。今は、どんな魔法を使おうか悩んでいる所だよ」

 魔法を使って解体と言うより、破壊する考えを伝えた。

 ここまで大きな建造物を壊す機会なんて基本ないので、俺の中にまだ燻ぶっているこの国の嫌悪感を吹っ飛ばすためにも、この城を破壊してすっきりしようと考えたのだ!

 でも爆発魔法じゃ面白くないし、津波みたいなので壊すと周りに影響が出すぎるし……土魔法で崩すのは面白くないよな? 風魔法でやるにはちょっと面倒か? うがぁぁ!

 色々考えてたら、すっきりするために城を壊す方法を考えていたのに、反対にイライラしてきてしまった。

 そんな様子を見てダマが肩にポンと前足を置いてきた。

『落ち着くのですにゃ! 前に話してくれた、隕石とか試してみてはどうですかにゃ?』

 理論というか考えだけまとめて、威力が大きすぎるから使う事は無いと思ってたあれね。宇宙を観測する術を持っていないので、隕石を魔法で引き寄せる事は出来ないが、土魔法で作った岩石を降らせて攻撃に使ってみては? という物だ。

 この考えの元になっているのは、ガン〇ムの一年戦争の始めに行われたコロニー落としだ。人工物を落とすという発想を、魔法で作った岩石を落としてみては? という感じで、綾乃やバザールとネタで話したやつなんだよね。

 まぁいい機会だし使ってみるか。

 ドームの外に出て、城の中心をめがけ……おそらくこの世界で一番威力のある魔法が発動される。魔力によって威力を調整する事ができ上限は魔力次第。

【ミーティア】

 最初は、メテオでいいかと思ってたけど、それじゃあ面白くないと綾乃が言いバザールが賛成に回ってしまったため、それらしい名前を羅列して一番いい響きのミーティアに決まった。

 シュウたちは知らないのだが、メテオはメテオで実在する魔法なのだが、分類とすると召喚魔法に当たるため事実上使う事がとても困難である。

 では誰が使ったかと言えば、崩壊に向かった世界を壊すために使われる魔法がメテオなのである。魔法陣が必要な魔法なので、召喚魔法の言語・文法を知らないとどうにもできない魔法である。

 直径10メートル程の岩を上空に作り出し、魔法で誘導していく……

 音にならない音が響き渡り、ドームが揺れているのが目に見えて分かる。

「おぉ、これやべえな。遠くに魔法を発現させるために魔力を多めに使ったけど、それでも俺の魔力からすれば微々たる物。それでこれだけの破壊か……この国の貴族の家を潰す時以外では封印だな」

 ちょっと威力が強すぎて衝突のエネルギーがドーム内に溜まって内側からドームがはじけてしまった。でも威力の大半が、ミーティアの落ちて来た天井部分と、川を作った部分に集中したため、はじけた部分での被害は貴族街っぽい所だけで済んでいる。

 問題は川の部分……水のあった川は、ミーティアの余波ですべて飛んでいってしまった。川付近に家があった人は、思いがけない水害にあったという事だ。

 でも、ちょっとすっきりした。どうせなら、自分肉体だけでこうスッキリした方が良かったかな? 他の貴族の家で試してみよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...