ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,284 / 2,518

第1284話 逆鱗

しおりを挟む
 きれいな街に入ると、衛兵もいるようで次々にどこからともなく現れてくる。途中で隊長っぽい奴がいたので腕を切り飛ばしてから、襟首をつかんで引きずりながら尋問してみたが、大した情報を持っていなかった。

 1つ得られた情報は、この国は建国から2000年近くたっている古い国なのだそうだが、王都にあるダンジョンが使えなくなり滅亡の危機に瀕しているらしい。

 もともとはレベル300の人間もゴロゴロといた、この大陸屈指の強国だったらしいのだが、この国の兵士がレベル上げに使っていたダンジョンで、高レベルの兵士が訓練に入っていた時期に突如崩壊してしまったのだとか。

 俺が神のダンジョンを攻略したから、他の世界の神のダンジョンが潰れたっていうあれか? 強い兵士が根こそぎ死んで、戦力が落ちて他の国に攻められているという事か。

 その力の補充のために召喚をしたと、俺が元かもしれないけど、だからと言って安易に召喚使うんじゃねえよ!

 これ以上の情報は無かったのでその場に捨てていく。切り落とした後に傷口だけは塞いでやったから、失血死する事は無いだろう。

 他に3人程捕まえてみたが、情報は増えなかった。一緒に走っている従魔たちと合わせて、軽く500人はこの街に入ってから殺しているが、何とも思わない自分がいる。

 ニコのタックルをくらって四散する肉片を見ても、クロやギンの爪で切り裂かれた肉塊を見ても、特に何にも感じなかった。

 前は、もう少し感情があった気がするのだが、今は何も感じていない。感情が暴走しているせいだからだろうか?

 ん? こんな冷静に考えているのに暴走しているのか?

 思考がよく分からないループにはまってしまったので、現実に意識を戻す。

 それにしても走りにくい街だな。城から放射線状に道が伸びてないから、グネグネ曲がりながら進むしかなく面倒なのだ。一直線で走りたい。

 そこで俺はひらめいた。

「ニコ、城に向かって一直線で飛びぬけろ!」

 俺の指示を理解して、1枚目の門を壊したタックルで城に向かって一直線に移動を始めた。

 家が邪魔で曲がっていたのだが、ニコが開けた穴を通り駆け抜けていく。

「お~お~、城の前には兵士が集まってるね。誰がやる?」

 今まで静かだったシエルが、立候補をしてきた。

 俺の魔法タイダルウェーブを模倣した魔法を使い、洗い流した。

「上出来! 王の所まで一直線で向かうぞ!」

 ゴテゴテした騎士がわらわら出てきたが、城の中でその装備ってどうなの? 戦いにくくない?

 と思ったが、俺らには装備は関係なかったな。ダマが咆哮と一緒に吐き出した無数のウィンドカッターが騎士たちを蹂躙していく。

 当たり所の悪かった騎士は腕や足を切り落とされ、運の良かった騎士でも体中に切り傷が出来ている。放っておけば、30分もしない内に失血死するレベルだ。

 階段を駆け上がり王と家臣が話し合いをしているであろう部屋に到着する。そしてそのままドアを蹴り壊す。

「何事だ!」
「近衛兵達は何をやっている!」
「あいつらを捕まえろ!」
「殺せ!」

 家臣だと思われる奴らが一斉に叫ぶ。気持ちは分かるが、指示を出すのは1人にしておけよ。

「てめえがこの国の王だな? よくも俺の妻と娘たちをさらいやがったな……殺してやる!」

「「「「王に何て口を!」」」」

 家臣が口をそろえて叫んだ。

「静かにしろ」

 俺がドアを蹴り壊した時は驚いた顔をしていたが、すぐにこちらを見ながら何かを考えていた王が口を開いた。

「王に向かって不敬な奴じゃな。それに、獣風情をこの城に入れるとは万死に値するぞ!」

 万死に値すんのは拉致ったお前だからな!

「殺すのは後でもできる。それより気になる事を言っておったな、連れ去ったとはどういう事じゃ?」

「てめえら、勇者召喚の間を使って、よりにもよって俺の妻たちをさらったんだよ!」

「あの召喚で呼ばれた奴らの男なのか? それはちょうどいい、あいつらはわしが召喚して得た力を使ってダンジョンを作り出し、こちらに協力もせずに中にこもりおった。今から説得してまいれ。召喚してやったのだから、協力せよ! 亜人は後で兵士の相手をさせてやるからそのまま連れて来い」

「あ゛ぁぁあ゛? 召喚してやった? てめえらがやった事は拉致だよ! こっちの意思も関係なく強制的に呼びやがって! それに亜人だと? 相手をさせてやる? ふざけんのも大概にしろよ!」

「ふざけているのはお主の方じゃ! 勇者召喚の間を使って召喚してやったのだから、この国のために働くのは当然の事じゃ。亜人は見た目は良かったからの、ワシが可愛がった後に壊れるまで兵士の相手をさせてやるのじゃ、我が国の兵士に相手をしてもらえるのだ泣いて喜ぶべきだ!」

 これは、完全に話が通じないタイプだ。って、話し合いをするつもりは無かったな。

 王と俺の間には、頑丈そうな机があるが一気に加速して顔をおおうようにアイアンクローをして、壁に叩きつけると壁が抜けてしまった。

「アグガガ……」

 俺の手の中で王が痛みに苦しみ声を上げていた。

 それより俺は、勢い余って突き破って出て来たこの部屋の方が気になる。腐臭はしないが、死臭が漂っており、何より男のイカ臭いにおいがするのだ。そしてその中で……

「てめえら! クソが! この城の全員皆殺しにしてやる!」

 俺はありったけの魔力を込め床に手を叩きつける。発動したのは、城全体を覆うように作ったドーム型のアースウォールだ。10メートル近くある壁なのでそう簡単に突破できる物ではない。そして、昼間だったのに太陽を遮る形なので突然周囲が暗くなった。

 そもそも城なので、光の届かない場所や暗い場所があるのは当たり前だ。なので、完璧な暗闇にはならず今のような中途半端な暗闇になっている。

『主殿! どうなさいました?』

 俺を追いかけてきたダマが声をかけてきた。

「この部屋の中を見てみろ、俺の怒りが怒髪天を貫いた理由が分かる」

 後を追いかけてきたダマが部屋に入り、その臭いに顔をしかめる。そして、

『…………』

 ダマも俺がキレた理由を理解して、絶句してしまっている。

 俺が召喚したわけじゃないけど、俺と長い時間過ごしてきたダマは、俺の価値観をよく理解している。なにより、隷属させたことにより俺とダマは何かしらのつながりができており、俺の感情や考えが流れ込む事があるらしい。

 そしてこの部屋の状況を見て、理解したための絶句だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...