ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,260 / 2,518

第1260話 違う意味で頭が痛い……

しおりを挟む
 罪人があの場所に送られてから1週間、グリエルに呼ばれて庁舎に来ている。

「お待ちしていました。今日は報告のために来ていただきました」

 そう言って、俺の執務室にある空間投影型ディスプレイに各種報告書を表示してくれる。しばらく説明をしてもらって、気になることを聞いてみた。

「未だに戦争に参加した人への報酬があまり支払われていないようだけど、なんで?」

「街の声を職員に集めてもらった所、どうやらもらいに来る気が無いようです。兵士についても同じで、私たちが何度も言っているのですが、全く効果がありませんでしたね。どうしますか?」

「これが日本の政治家なら泣いて喜ぶシチュエーションだろうな。余計な金を払わなくてよかった、みたいな」

「政治家から見れば使わないで済むのであれば、自分の利益になる事にお金を使いたくなりますからね。とはいえ、今回はシュウ様から資金が出されているので、シュウ様の気持ち次第という形ではあるのですが、どうなさいますか?」

「よし、決めた! 取りに来ないなら、強制的に受け取らせよう。今庁舎で働いている人や、軍の幹部の仕事って忙しいか?」

「少々お待ちいただいてよろしいですか?」

 グリエルが執務室から退出した。調べて来てくれるようだ。

 20分後に戻ってくると、急いでしないといけない事は全て終わっているので、しばらくは日常業務もかなり余裕でこなせる状態だとの事。

 戦争の所為で忙しかったようだが、一段落して日常業務もある程度前倒しして終わっているようだ。

「じゃぁ、仕事が増えて悪いけど、直接本人に渡しに行ってもらっていいかな? 俺からの感謝の気持ちみたいなのと一緒に渡したら、受け取り拒否されないかな?」

「そうですね。お金だけですと、拒否する方が多いかもしれませんが、シュウ様からの感謝の気持ちの品が一緒であれば、拒否されにくいでしょう。お渡しする物はどうしますか?」

「そうだな、食べ物にしようか。普段なら食べられない様な物を送ろうか? と言っても俺に選ぶのは無理だから、いくつか候補を挙げて貰ってそこから選んでもらう形でもいいかな?」

「そうですね。自分でこれがいいと選んだ物であれば、受け取りを拒否し辛いですね」

 こんな感じで、報酬押し付け作戦が始まった。

 正直俺の場合、ゼニスが勝手に稼いでくれている分だけでも使いきれていないのだ。これがDPで生み出したお金であるなら何の問題も無いのだが、この世界に元々あるお金を一ヵ所に集めてしまっている状態があまり良くないのだ。

 なので、可能な限り俺の懐から出て行くように仕向けないとその内、俺の管理する街以外が金貨不足に陥ってしまう可能性が高いのだ。

 今でさえ、無駄使いだと思われる美術品や工芸品を結構な量買い付けているし、特に中立地域以外にある街では、無駄に公共工事を行っている。その公共工事に日雇い労働者やスラムの人を使い行っている。

 公共工事に使う資材を近くの街から取り寄せるのにも、かなりのお金を使っている。それで何とか商会の稼ぎを使いきっているのだ。

 じゃぁ俺の収入がないじゃん? とか思うだろうけど、俺の収入ってなくても問題ないんだよね。だってさ、食料品はダンジョン農園やディストピアの畑エリアから無償で入手できるからな。

 衣服に関しては、妻たちの下着や外行きではない服はDPで出しているし、外行きの服に関しては妻たちが仕立ててくれるからな。

 その他も全部無償で手に入るので、手元にお金がなくても問題なく生活ができるのだ。

 領主の仕事はほとんどグリエルとガリア、その他領主代行に回しているので、街からはお金を受け取っていない。

 じゃぁ手元にあるお金は? といえば、ゴーストタウンの工房で商品開発した際に出た利益だ。

 正直な話、手元にあるお金で言えば、妻たちや土木組よりも圧倒的に少ない。商会にまだまだ使いきれていないお金はあるが、それは必要となる時があるかもしれないので多少確保している形だ。

 俺の中では、既に支払う事となっている戦争の報酬を受け取ってもらわないと困るので、意地でも参加した人にはお金を支払う。

 話は戻り報告が続いていく。

「最後に、シュウ様に相談したい事があるのですが」

 そう前置きをして、グリエルが相談の内容を話してくれた。

 内容は、ディストピアでも税金を取りましょう! という物だった。ディストピアに関しては、この街だけで完結できるだけの物が揃っているだけに、わざわざ税金、この場合は所得税に近い物だな。この世界では、人頭税、家族の人数で払う金額が決まっている。

 税金をとってないのに庁舎などで働いている人の給料はどこから出ているのかと言えば、初めは俺のポケットマネーだったのだが、いつの間にか街の産業、特に畑エリア・家畜エリア・湖エリアは、街が管理しているので、そこの利益の一部が給料として支払われる形になっている。

 認識としては、消費税に近い物だというべきだろう。純粋な利益の一部なので、消費税とは違うのだが。

 まぁ細かい事はどうでもいい。今更必要も無いのに税金をとる必要があるのか? と聞いた所、こんな言葉が返って来た。

「現状、税金の代わりに住民が寄付をしてくれています。この街ができてから、そのお金には一切手を付けていないので、かなりの金額になっているのです。これからも増えていくでしょう。なので、寄付を止めさせるためにも、少額でいいので人頭税を設けましょう。そうすれば、税金をもらっているので寄付を受け付けない、という形にすればどうでしょうか?」

 という物だった。

 そもそもの話、住民が何故寄付をしてくるのかと言えば、税金が無いのにどうやって街の運営をしているのか理解できておらず、説明しても納得してもらえないというのが大きな原因なのだとか。

 なら、少額でも税金をとれば住民には納得してもらえるという寸法だ。

 この考えは悪くないので、早急に内容をまとめてディストピアで公布する流れとなった。公布してから戦争の報酬を支払っていく事も決まった。

 税金を取るので寄付は受け付けないというルールを先に出しておかないと、命懸けで戦った兵士や身を危険にさらしてまで戦場の近くで働いてくれた人が、もらったお金をそのまま寄付しかねない、と秘書から話があったため、公布を先にする事にしたのだ。

 この公布は、効果覿面だった。それでも寄付しようとする人は後を絶たなかったが、税金をもらっているので! と言い、完璧に拒絶する事ができたので、その内寄付する人がいなくなったとか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~

桜井正宗
ファンタジー
 異世界で暮らすただの商人・カイトは『レベル売買』という通常では絶対にありえない、世界で唯一のスキルを所持していた事に気付く。ゆえに最強ギルドに目をつけられ、直ぐにスカウトされ所属していた。  その万能スキルを使いギルドメンバーのレベルを底上げしていき、やがてギルドは世界最強に。しかし、そうなる一方でレベルの十分に上がったメンバーはカイトを必要としなくなった。もともと、カイトは戦闘には不向きなタイプ。やがてギルドマスターから『追放』を言い渡された。  途方に暮れたカイトは彷徨った。  そんな絶望的で理不尽な状況ではあったが、月光のように美しいメイド『ルナ』が救ってくれた。それから程なくし、共に世界で唯一の『レベル売買』店を展開。更に帝国の女騎士と魔法使いのエルフを迎える。  元から商売センスのあったカイトはその才能を遺憾なく発揮していく。すると驚くほど経営が上手くいき、一躍有名人となる。その風の噂を聞いた最強ギルドも「戻ってこい」と必死になるが、もう遅い。  見返すと心に決めたカイトは最強ギルドへの逆襲を開始する――。 【登場人物】(メインキャラ) 主人公 :カイト   / 男 / 商人 ヒロイン:ルナ    / 女 / メイド ヒロイン:ソレイユ  / 女 / 聖騎士 ヒロイン:ミーティア / 女 / ダークエルフ ***忙しい人向けの簡単な流れ*** ◇ギルドを追放されますが、実は最強のスキル持ち ◇メイドと出会い、新しい仲間も増えます ◇自分たちだけのお店を開きます ◇みんな優しいです ◇大儲けしていきます ◇元ギルドへの反撃もしていきます ◇世界一の帝国へ移住します ◇もっと稼ぎまくります

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

処理中です...