ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1235話 事後処理が……上手く進んでいない?

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 戦争の事後処理を始めて1週間。

 参加した兵士・冒険者・後方支援をしてくれた人たちへの支払いの準備が整った。先にゼニスに金品を送り査定してもらったかいがあった。

 お金に関しては、既に余る程商会の倉庫に俺のお金が溜まっているので、そこから買取りのお金を出している。正直これ以上無駄に金が増えるのは困るので、買い取った物は大量に売る事で安くして、王国か帝国に売り払う予定だ。

 俺だけが真っ赤な赤字になるが、今回は戦費も俺が持っているので買い取った品で利益を出しても、黒字になるとは言い難い状況だ。

 お金に関しては足りなくなればDPで召喚だってできるのだ。今回は気にせずに散財するつもりだったので、問題ないだろう。

 支払いに関しては、住んでいる場所まではさすがに把握していないので、取りに来てもらう事にしている。冒険者は冒険者ギルドで、兵士は各街の軍の補給所で、後方支援の方達は庁舎で支払う事になっている。


「……だというのに、どういうことだ?」

「と言われましても、支払い方法が個人で取りに行く方式だから仕方がないのではないですか?」

 支払いが可能になってから2週間も経っているのに、支払いがなかなか進んでいない事に俺は不満を持っている。グリエルからすれば、そんな事で自分の執務室で仏頂面で居座るな! と言いたいだろうが、俺はすべてを覆す力を持っているのだ。不満をここで漏らすのも俺の自由なのだ!

「マップ先生の力を使って、一人ひとりに渡しに行きますか?」

「それは面倒だけど、取りに来る人がここまで少ないのであれば、忙しいのかもしれないし検討しないといけないかもな……」

 グリエルは、そう言う事では無いのですが、と俺に聞こえない声で呟いていた。

「まぁ、冒険者は仕事をするために行くギルドで受け取れるから、ほぼ100パーセントの受け取りになっているのが救いだな。でもそれなら、軍の補給所で受け取れる兵士が何で受け取ってないかよくわからんな」

 補給所は、軍指令室に併設する形で建てられているので、ほとんどの兵士は各詰め所や訓練所にいるため、行く事がないとはいえ、住んでいる街の中にあるから遠い所では無いのに……何故だ!

 後方支援で食事を作ってくれたり、野戦病院や前線で頑張ってくれた人たちが取りに来ていないのも気になるな?取りに来れない程、家の仕事や治療院が忙しいのだろうか?

「シュウ様、そろそろ仕事をしたいので愚痴はその辺にしていただいてよろしいですか?」

 どうやらグリエルも限界に達したようで、俺を追い出しにかかってきたな。この街は……いや、俺の部下は最高権力者であっても、あまりにも仕事を邪魔すると雷を落とすから注意が必要なのだ。

 不満を漏らす自由があっても、それがすべてお咎め無しになるという事はないので、キリのいい所で抜け出さないと大変な事になるのは過去の経験で分かっているので、この辺で……

「グリエルさん、いますか? あっ! シュウ様もいい所に! 聖国の教皇より連絡が入りました。応接室に繋いでありますので移動をお願いしてもよろしいですか?」

「1つ聞いていいかな? グリエルは『さん』付け、俺は『様』で、一応国のトップ……聖国のトップは呼び捨てみたいになっているんだ?」

「??」

 呼びに来たグリエルの秘書に素朴な疑問をしてみたが、何でそんな質問をされているのかよく分からないといった表情で、頭の上にクエッションマークを浮かべている。

「シュウ様、そんな聞き方では分からないと思いますよ。ちなみに、私が『さん』付けで呼ばれているのは、私からの要望です。『様』と呼ばれていた時期もありましたが、『様』はシュウ様に付けるための言葉ですので、シュウ様以外に付けるのは不適切です。ガリアも同意見でしたので、ディストピアの共通認識になっています」

 どういう事? 今度は、俺がクエッションマークを浮かべてしまった。様が何で俺のための言葉なんだ?

「分かっておられないようですね。『様』とは、高位の相手や敬う対象に付ける言葉です。ディストピアで敬う相手はシュウ様以外にいないのですから、必然的にシュウ様以外に付けるのはおかしいのです。他国のトップでも、シュウ様に比べれば敬う対象にもなりませんね」

 分かるようで……全く分からん!

「実際に街のために頑張ってるのはグリエルたちだろ? ほとんど何もしていない俺だけが付けられるのはおかしくないのか?」

「はぁ……シュウ様が何もしていないというのであれば、この世界で何かをしていると言える人がどれだけいるとお考えで? シュウ様は、1から街を作ったのですよ? 数千、数万の人を導き救っているのです。しかも、樹海というこの世界でも厳しい環境の中に作った街で、です」

 指示はしたけど、実際に動いてくれたのは、グリエルやガリア、その部下だろ? これ以上は藪蛇になりそうなので話を切り上げて、応接室に向かう事にした。

 連絡を入れてから約3週間、今回戦争に関わった領主や上級聖職者は全て捕らえたそうだ。下の身分になれば、指示をされて動いていた者が多く、逆らえる状況では無かったため色々話を聞き、個々に判断しているのだとか。

 教皇は、人食い胞子に予想以上に多くの人間が関わっていた事にげんなりしていた。

 普通に考えて、上層部の人間以外にも処理する人間がいるわけで、予想を超えて知っている人間が多かったのだろう。

 そして追加情報として、最後の街で俺と交渉のような事をした、オーク領主の庶子も人食い胞子の情報を知っていたため処刑される予定らしい。

 結局、あいつは何だったんだろうな? 上手くいけばあの街の領主になれただろうに、知ってはいけない事を知っていたがために命を落とす事になるとはな。

 かなりの数が処刑される予定だが、1人だけ助命をしたい人間がいるのだとか。

「人食い胞子の製造方法を知っている人間の助命……それがどういう事か分かって言っているのか?」

 自分でも予想しない程、怖い声を出していたみたいだ。その声を聞いたグリエルがブルっと震える。

『もちろん分かっている。助命したい人間の情報を教えるので検討してほしい。それでだめなら、こちらで処分させていただく。そちらに言わずに処刑する事も考えたのだが、一応知らせておくべきだと思ってな』

 ん? どうやら向こうの都合で助命をしているというより、俺達に確認を取ってから処刑するかどうするか検討するのか? よく分からない流れになってきたな。
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