ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,226 / 2,518

第1226話 次の段階?

しおりを挟む
 レイリーが戻ってきたので、街の中に魔法を撃つつもりは無いというと、

「あれは脅しみたいなものです。壁の中にいた住人ですら、壁にそって炎が上がったのを見ています。それが街の中……自分たちに向けられるとなれば、行動を起こすでしょう。こちらの要求に対して嘘を付いた報いとなると思い言った事ですので、本当に魔法を使ってもらうつもりはありません」

 安心した。脅し文句として、実際に畑を焼き払った魔法が自分たちを狙っていると分かれば、住民が行動を起こす可能性はかなり高い。

 そして、今回は隣街の領主を出せと要求している。住人が行動を起こすとすれば、隣街の領主を探す事に躍起になるだろう。

 自分の周囲にいなければ、住んでいる区画……それでもいなければ、その内領主館にいる可能性があると思いつくだろう。そうなれば、領主館を襲撃する者が出てくるかもしれない。

 兵士が腐ってなければ、無意味に殺す事は無いだろうけど、使者としてあいつが来ている段階で、あまり期待はできない気がする。

「となると、兵士と住人が戦うから、住人が死ぬ事にならないか?」

「そうかもしれませんね。今回に関しては非常に不本意ですが、この街の領主に領主の才能があるのかを見させていただこうと考えています。匿っている時点で期待は持てませんが、住人を殺す事で解決を図るのであれば、住人を味方にしてこの街を落とします。それで隣街の領主を捕らえて終わりですね」

 レイリーもいい加減、無意味なやり取りが面倒になってきており、ちょっと過激な思考にシフトしつつあるようだ。

 とはいえ、まだ4日しか経っていないのに、面倒になっているあたりは、あの使者のせいだろう。というか、俺があいつの事が許せなかったので過激になったのがきっかけかもしれないか?

 そこら辺はどうでもいいか。

「レイリーの言う通り、隣街の領主探しが始まっている感じだな」

 マップ先生の光点の動きを見ると、エリア毎に住民が集まっているようだ。その中から何人かがグループを作り、自分たちのエリアの家の中に入っている。おそらく探しているのだろう。そして、自分は匿っていないとアピールしているのだろう。

 兵士たちは……

「あれ? 兵士の数が少なくなってる?」

 マップ先生で兵士達を表示すると、1割位数が減っていた。

「これは、どっちの勢力が減ったのかな? 領主側か住民側か……」

「普通に考えて、住人側でしょう。領主側に付くのは、指揮官クラスの優遇されている兵士位でしょう。一般の兵士はそこまで従順では無いと思います。領主と家族、どちらをとるかと言われれば、迷わず家族を選ぶでしょう。ですが、指揮官クラスはレベルが高いですからね……」

 それもそうか。下っ端兵士に恩恵なんてほとんどないよな。

「指揮官クラスは家族より領主をとる奴が多いのか? 俺だったら絶対に家族をとるな。妻たちもそうだけど、娘たちが危険にさらされるのであれば、全力で原因を排除する自信がある。今回で言えば、隣街の領主を探し出すだろうな」

 俺には、家族をとらない兵士がいる事に驚いている。領主からの恩恵が家族を上回るモノなのだろうか?

「シュウ様みたいに、家族思いの人間ばかりでは無いのですよ。特に甘い蜜を吸っている上の人間になれば、キレイで若い奥さんをまたもらえばいいと考えている奴だっています。貴族……領主に関しては血統の問題があるので、少し違ってくるとは思いますけどね」

 家族仲っていう要素もあるのか。

 城門は正面の1つ以外塞いだので、こちらの軍は兵力を分散させる必要もなくなっており、商人たちからの買取り部隊だけが別行動をとっている。

 明日には攻め入る可能性があるため、見張りの兵士は最低限にして休息をとらせている。

 夕方……もうほとんど陽が落ちているので、夜と言ってしまってもいい時間に動きが見えた。城門から出てくる一団を発見し、警戒態勢が取られている。俺も様子を見に行こうとしたら、全力で止められたので映像で見ている形だ。

 どうやら新しい使者としてきた一団のようだ。使者としては、いささか数が多すぎる気がするが、こちらは使者を処刑しているのだからこれ位は普通だろうか?

 レイリーは話す事などないと言い、隣街の領主をここまで連れて来る事以外に回答を求めていないと続けた。

 使者は、何とか交渉をしたいようで粘ってはいるが、そもそもの前提がズレているので交渉が成立するわけもない。

 要約すれば、

 俺たちは、戦争の勝利者としての権利を行使して、戦争に兵力を送った街からお金を巻き上げている。その巻き上げる金を持ち出して逃げた領主を引き渡せと命令しているのに対して、

 使者は、隣街の領主はいないと言っている。だけど、街で略奪をされたくないので交渉で話をまとめたいとの事なのだ。

 交渉をしたいと言っている時点で、こいつらの頭の中では、戦争は自分たちには関係ない。でも隣街の領主を差し出す事は出来ないから、何かしらの条件を付けて街を襲わせずに帰したいのだろう。もしくは、時間稼ぎが目的かもしれない。

 というか、使者として来た奴が若いんだよね。俺と同じ位……普通なら使者にするには不適切な人材だ。だけど、選ばれたからには理由がある。こいつには、犯罪の称号が無いのだ。だから手出しはしてこない可能性が高いと思い。送り出されてきている気がする。

 そして話をまとめてこないと、戻った時に何をされるか分からないから、必死にすがっているようにも見える。

 そこで俺は考えた。副官を呼んで、レイリーに伝言を頼んだ。

 内容は、

『交渉がしたいのであれば、領主自らここまで来い。そうすれば、交渉のテーブルにはついてやる。領主以外であれば、話に応じる事は無い』

 と言うようにお願いした。

 いくつか意図はあるが、一番は、判断を下せる者をここに呼びたかったのだ。使者では話にならない。時間稼ぎの意図があるのであれば、まどろっこしい事はしてられないのだ。

 こっちが付きつける条件は、

 隣街の領主と一緒に来た者たち、及び持ち出してきた金品のすべて。

 いないというのであれば、捜索する権利。

 この2つでいいだろう。もしどちらも受け入れられないのであれば、交渉は終わりという事だ。

 こちらが譲歩する必要は全くないし、交渉のテーブルにつくという条件は満たしている。交渉のテーブルにつくと入っているが、向こうの条件を受け入れるとは一言も言っていないので嘘はついていない。

 こういう交渉事では、絶対に嘘をついてはいけない。1度嘘をつけば、更に嘘を重ねる事になってしまうか、言い訳をするしかなくなってしまうからだ。

 たまに購入して読む新聞の中にも、国会議員が国会で嘘を付き、無理のある言い訳で嘘はついていないと言っているような内容を良く見る。

 なので、こういう時には、嘘を付かずに本当の事だけを言って切り抜ける事が大切なのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...