ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1226話 次の段階?

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 レイリーが戻ってきたので、街の中に魔法を撃つつもりは無いというと、

「あれは脅しみたいなものです。壁の中にいた住人ですら、壁にそって炎が上がったのを見ています。それが街の中……自分たちに向けられるとなれば、行動を起こすでしょう。こちらの要求に対して嘘を付いた報いとなると思い言った事ですので、本当に魔法を使ってもらうつもりはありません」

 安心した。脅し文句として、実際に畑を焼き払った魔法が自分たちを狙っていると分かれば、住民が行動を起こす可能性はかなり高い。

 そして、今回は隣街の領主を出せと要求している。住人が行動を起こすとすれば、隣街の領主を探す事に躍起になるだろう。

 自分の周囲にいなければ、住んでいる区画……それでもいなければ、その内領主館にいる可能性があると思いつくだろう。そうなれば、領主館を襲撃する者が出てくるかもしれない。

 兵士が腐ってなければ、無意味に殺す事は無いだろうけど、使者としてあいつが来ている段階で、あまり期待はできない気がする。

「となると、兵士と住人が戦うから、住人が死ぬ事にならないか?」

「そうかもしれませんね。今回に関しては非常に不本意ですが、この街の領主に領主の才能があるのかを見させていただこうと考えています。匿っている時点で期待は持てませんが、住人を殺す事で解決を図るのであれば、住人を味方にしてこの街を落とします。それで隣街の領主を捕らえて終わりですね」

 レイリーもいい加減、無意味なやり取りが面倒になってきており、ちょっと過激な思考にシフトしつつあるようだ。

 とはいえ、まだ4日しか経っていないのに、面倒になっているあたりは、あの使者のせいだろう。というか、俺があいつの事が許せなかったので過激になったのがきっかけかもしれないか?

 そこら辺はどうでもいいか。

「レイリーの言う通り、隣街の領主探しが始まっている感じだな」

 マップ先生の光点の動きを見ると、エリア毎に住民が集まっているようだ。その中から何人かがグループを作り、自分たちのエリアの家の中に入っている。おそらく探しているのだろう。そして、自分は匿っていないとアピールしているのだろう。

 兵士たちは……

「あれ? 兵士の数が少なくなってる?」

 マップ先生で兵士達を表示すると、1割位数が減っていた。

「これは、どっちの勢力が減ったのかな? 領主側か住民側か……」

「普通に考えて、住人側でしょう。領主側に付くのは、指揮官クラスの優遇されている兵士位でしょう。一般の兵士はそこまで従順では無いと思います。領主と家族、どちらをとるかと言われれば、迷わず家族を選ぶでしょう。ですが、指揮官クラスはレベルが高いですからね……」

 それもそうか。下っ端兵士に恩恵なんてほとんどないよな。

「指揮官クラスは家族より領主をとる奴が多いのか? 俺だったら絶対に家族をとるな。妻たちもそうだけど、娘たちが危険にさらされるのであれば、全力で原因を排除する自信がある。今回で言えば、隣街の領主を探し出すだろうな」

 俺には、家族をとらない兵士がいる事に驚いている。領主からの恩恵が家族を上回るモノなのだろうか?

「シュウ様みたいに、家族思いの人間ばかりでは無いのですよ。特に甘い蜜を吸っている上の人間になれば、キレイで若い奥さんをまたもらえばいいと考えている奴だっています。貴族……領主に関しては血統の問題があるので、少し違ってくるとは思いますけどね」

 家族仲っていう要素もあるのか。

 城門は正面の1つ以外塞いだので、こちらの軍は兵力を分散させる必要もなくなっており、商人たちからの買取り部隊だけが別行動をとっている。

 明日には攻め入る可能性があるため、見張りの兵士は最低限にして休息をとらせている。

 夕方……もうほとんど陽が落ちているので、夜と言ってしまってもいい時間に動きが見えた。城門から出てくる一団を発見し、警戒態勢が取られている。俺も様子を見に行こうとしたら、全力で止められたので映像で見ている形だ。

 どうやら新しい使者としてきた一団のようだ。使者としては、いささか数が多すぎる気がするが、こちらは使者を処刑しているのだからこれ位は普通だろうか?

 レイリーは話す事などないと言い、隣街の領主をここまで連れて来る事以外に回答を求めていないと続けた。

 使者は、何とか交渉をしたいようで粘ってはいるが、そもそもの前提がズレているので交渉が成立するわけもない。

 要約すれば、

 俺たちは、戦争の勝利者としての権利を行使して、戦争に兵力を送った街からお金を巻き上げている。その巻き上げる金を持ち出して逃げた領主を引き渡せと命令しているのに対して、

 使者は、隣街の領主はいないと言っている。だけど、街で略奪をされたくないので交渉で話をまとめたいとの事なのだ。

 交渉をしたいと言っている時点で、こいつらの頭の中では、戦争は自分たちには関係ない。でも隣街の領主を差し出す事は出来ないから、何かしらの条件を付けて街を襲わせずに帰したいのだろう。もしくは、時間稼ぎが目的かもしれない。

 というか、使者として来た奴が若いんだよね。俺と同じ位……普通なら使者にするには不適切な人材だ。だけど、選ばれたからには理由がある。こいつには、犯罪の称号が無いのだ。だから手出しはしてこない可能性が高いと思い。送り出されてきている気がする。

 そして話をまとめてこないと、戻った時に何をされるか分からないから、必死にすがっているようにも見える。

 そこで俺は考えた。副官を呼んで、レイリーに伝言を頼んだ。

 内容は、

『交渉がしたいのであれば、領主自らここまで来い。そうすれば、交渉のテーブルにはついてやる。領主以外であれば、話に応じる事は無い』

 と言うようにお願いした。

 いくつか意図はあるが、一番は、判断を下せる者をここに呼びたかったのだ。使者では話にならない。時間稼ぎの意図があるのであれば、まどろっこしい事はしてられないのだ。

 こっちが付きつける条件は、

 隣街の領主と一緒に来た者たち、及び持ち出してきた金品のすべて。

 いないというのであれば、捜索する権利。

 この2つでいいだろう。もしどちらも受け入れられないのであれば、交渉は終わりという事だ。

 こちらが譲歩する必要は全くないし、交渉のテーブルにつくという条件は満たしている。交渉のテーブルにつくと入っているが、向こうの条件を受け入れるとは一言も言っていないので嘘はついていない。

 こういう交渉事では、絶対に嘘をついてはいけない。1度嘘をつけば、更に嘘を重ねる事になってしまうか、言い訳をするしかなくなってしまうからだ。

 たまに購入して読む新聞の中にも、国会議員が国会で嘘を付き、無理のある言い訳で嘘はついていないと言っているような内容を良く見る。

 なので、こういう時には、嘘を付かずに本当の事だけを言って切り抜ける事が大切なのである。
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