ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1221話 交渉?

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「あの街の領主が逃げ込んだ街に向かってるけど、どうするつもりなんだ?」

 レイリーは、俺たちの馬車に乗せている。俺がレイリーたちの馬車に乗っても良かったが、それだと自分たちの上司に当たる人間を、人が詰め込まれた馬車に乗せなきゃいけなくなるため、レイリーがこちらにお願いをしてきたのだ。

 なんというか、めんどくさいな。人目を気にしないといけないらしい。ドームの中では、緊急事態だったのでしょうがないが、普段は人目を気にした方がいいと言われてしまった。

 ディストピアでは気にする必要もない程、俺の性格が浸透しているから問題ないらしい。他の街の兵士もいるので、そこら辺は気を使ってくれとお願いされてしまった。

 そこら辺の事はよくわからないので、ピーチに丸投げした。返って来た言葉は、気を抜いていい時は他の人達がいない時だけです。

 ん~休む時と、馬車とかにこもっている時以外はなさそうだ。

 おっと話がそれたが、レイリーが考えているのは、大都市になるので包囲して籠城させる事は厳しいと判断していた。だけど、兵糧攻めは可能だと考えているようだ。

 特に都市の周りには畑があり、焼き払うだけでも一定以上の効果があると考えているようだ。確かに、マップ先生を見る限り、かなり大規模な畑が街の外にあるようで街の食糧を支えていると思われる。

 それ以外にも、街に食料を運んでくる商会やキャラバンがあるので、街に入る前に全部買い占めて、街に入る食料を減らせば、あれだけの大都市であれば、そう長くは持たないだろうとの事。

 売ってくれない場合はどうするのか聞いたら、元々敵国なので、売ってくれないのであれば物資だけすべて奪えばいいとの事。街でかばっている領主を間接的に支援している形になるので、気に病む事も無いだってさ。

 ウォーホースを使った斥候を街をつなぐ街道に放って監視して、マップ先生でも監視すれば漏れはないだろうとの事だ。個人の行商人も逃すなとレイリーが命令を出していた。特に収納系のアイテム持ちは、すべて荷物を吐き出させろとの事だった。

「兵糧攻めは分かったけど、本陣を攻められたらどうするんだ?」

「後方にいつでも逃げられるように馬車を準備しておきます。足の速い部隊に遅滞戦闘をさせて、相手の攻勢が収まった所で一気に離脱させるつもりです。それと1つお願いがあります。軍の抱えている魔法使いと冒険者の魔法使いだけでは、畑を焼き払えないので……協力をお願いしていいですか?」

「分かった。俺と魔法組の合わせて5人で問題ないか?」

「大丈夫です。で、担当していただきたいのが、ここからここまでの、街の畑の半分程なのですがいけますか?」

「ライム、5人でこの範囲いけると思うか?」

「少し無理をすれば、3人でも問題ない範囲だと思います。今回は、攻撃するのではなく、畑を焼き払うのですよね? でしたら何の問題もないですね」

 そうだった。攻撃の対象は畑の作物であって、人ではないからそこまで力を注ぐ必要はないとの事だ。

「残りの半分は、こちらの魔法使いが順次焼き払っていきます。シュウ様たちに広範囲を焼く払ってもらうのにはもう1つ理由がありまして、デモンストレーションの様な物を兼ねています。本気になれば、街を焼き払う事もできる、という脅しの意味があります」

 なるほど、なるのど。威嚇のための魔法で広範囲を一気に焼き払うという事か。

「一応、焼き払う前に『隣街の領主を差し出すのであれば、手を出さない』と通告してから、いないとか反応がなければ畑を焼き払い、もう一度通告します。それでもダメでしたら、いつでも逃げれる準備をして、兵糧攻めを行おうと思います」

 何か、俺のしっている兵糧攻めとは全く違う気がするが、それでも効果を示すのであれば、兵糧攻めになるのだろう。俺は魔法を撃つだけなので準備の必要はないのだが、レイリーたちは何やらせわしなく必要な物を準備している。

 でもさ、俺たちの馬車でやらなきゃいけない事なのか? え? 止まると時間の無駄なので、ここでやらせてください? まぁスペースはあるから好きにしてくれ。

 1時間くらい走ると予定地点に到着する。

「全員降車! 今回は撤退も考えられるため、馬車をつかった野営地作成は二式で作成する事。天井が馬車の高さになり、天井に空気の逃げ道がない、煮炊きは専用のテントを使う。こちらは使い捨てを考慮して、古い奴を使う様に! 撤退の場合はウォーホースは1台につき1匹になる。軛の部分を変更しておくように」

 そう言うと兵士、冒険者たちが行動を開始した。

 普通に考えて、屈強な兵士たちが軽装とはいえ、それなりの装備をして乗り込んでいるのだ。しかも1台につき40人も。装備を含めた平均重量が100キログラムだとして、40人……4000キログラム。きちんとした装備は、1台に1人装備担当の収納アイテム持ちがいるので問題ないのだが……

 それでも、4000キログラムの重量を1匹でって、地球じゃ考えられないだろうな。一般的な馬車で2000キログラム近くが重量の限界だったと聞いているけど、その2倍以上の重さ……ウォーホースじゃなきゃ引けないな。それにベアリングも老ドワーフが作った物に代えてなかったらきつかっただろうな。

 どうでもいい事を考えている内に準備が終わっていた……早くね!?

 どうやら馬車の二式とは、幌の両サイドを外して両隣の馬車の幌とくっ付ける形の事だった。

 俺達の馬車は、ロールカーテンのように伸ばせるようになっているので、広いスペースを確保できるが、軍の馬車にはそんなシステムはない。馬車も使って休んだとして1台の半数、20人程が休めれば御の字位のスペースしかない。

「レイリー、どういう風に休憩をさせるつもりだ?」

「4交代で1組8時間警戒ですね。警戒1組、待機1組、休憩2組という形ですね」

 警戒・待機・休憩1・休憩2の並びでローテーションを行うみたいだ。それとは別口で、スカルズやウォーホースに騎乗して商人と交渉するグループ、後方支援部隊もあるが、大体900人ずつにわけられたようだ。

「シュウ様。準備ができたので行こうと思います。よろしいですか?」

 肯定の意思を伝えレイリーについていく。

『街の皆様、通告します。先日、聖国がミューズに侵略戦争を仕掛けたのは御存じでしょうか? その戦争で私たちは聖国に勝利を収めました。勝利者の権利として、戦争にかかった費用を回収しています。この街は本来、略奪の対象ではありませんが、略奪対象の街の領主がここに逃げ込んだ事を確認しています』

 レイリーが、拡声の魔導具を使ってゆっくりと話し始めた。こちらからだけだと街の反対側には聞こえないので、拡声の魔導具と魔導無線を持たせた兵士が四方八方に散っている。

『その領主と一緒に逃げてきた者たち、領主が持ち出した金品のすべてを引き渡しをお願いします。拒否するようであれば、武力を行使する事も視野に入れます。賢明な判断を期待しております。1時間以内に返答をいただけない場合は、拒否とみなします』

 繰り返して2度程同じ内容を一方的に伝えて様子を見ていると、1時間が経とうとしたその時、使者のような者たちが城門から現れた。
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