ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,214 / 2,518

第1214話 フラグは回収するためにある

しおりを挟む
 聖国の4つ目の街に入ってしばらくすると、喧騒に包まれている場所があった。

 駆けつけると、スカルズのメンバーが3人の冒険者らしき奴らを拘束していた。近くには、半裸の女性が泣いていたためすぐに状況を把握した。やっぱり起きてしまったか……どんなに厳しくしても、実際の罰則は今までなかったため、甘く見ていた奴らではないだろうか?

 俺に遅れること3分、レイリーが重装のまま走って来た。事情を聴き取りしている。スカルズだけではなく、他にいた兵士、被害者と思わしき女性、周辺にいた住人からも聴き取りをしている。最後に冒険者に弁明があるか確認していた。

 もちろん冒険者は、無実を訴えているが理由には無理があった。

 この女性と周囲の人間が襲ってきたので、見せしめのために服を剥ぎ取ってやった! みたいな事を言っているのだ。そもそも見せしめのために服を剥ぎ取る、という行為が意味不明だ。

「レイリー、分かっていると思うけど……」

「もちろんです。お前ら、この街の一番の広場に例の物を準備しろ。そっちのお前らは、こいつらを連れていけ。道具が到着したら拘束しておけ」

 レイリーは俺の言わんとしている事を正確に理解していた。未遂とはいえ軍の規律を破った事もあるが、一番忌避しているといっても過言でないことが、ここで行われようとしていたのだ。甘い対応は絶対にありえない。

 この世界では、比較的当たり前にある事ではあるが、凌辱することは絶対に許せないものがあるのだ。もちろん、女性が男性にする行為だけでなく、女性が男性にする行為も含まれる。

 こんな事があっても戦争に勝った俺たちの権利である戦利品の回収は続く。その間にもう2人が暴走して住人に襲い掛かったようで、スカルズが捕らえている。

 回収が終わり街を出て行く前に、広場に集まりこの街で不当な行為を働いた冒険者を断頭台に張り付けていた。

『住人の皆様、誠に申し訳ございませんでした。ここに捕らえられている5人が、約束を破り住人へ襲い掛かろうとしてしまいました。厳罰に処すと口で言っても信用していただけないと思います。ですので、分かりやすい形で示したいと思います』

 そう言ってレイリーが手元にある縄を切った。

 断頭台……冒険者が繋げられている上から巨大な刃が落ちてきた。5人の首が飛び、広場に転がる。

 首が落された体が何やら動いているが、30秒もするとパタリと倒れた。

『気が済むとは思いませんが、処刑させていただきました。誠に申し訳ございませんでした。ですが、私たちは聖国が不当に仕掛けてきた戦争に勝ったため、勝者の権利として略奪をしています。

 下手に出ているからと言ってこちらに手を出してくるのであれば、容赦は致しませんので注意してください。これで私たちは引き上げさせていただきます』

 そう言って4つ目の街を出て、5つ目の街を目指す。

「ん~俺の勘も当てにならないな。嫌な感じがしたけど、次で最後の街だもんな」

「ご主人様、それはフラグではないですか?」

 メルフィが俺にそうかえしてきた。すっかり日本の文化に染まってきている嫁達が揃って『言っちゃった』みたいな表情で俺の事を見ている。

 え? マジで? 心配になって来た俺は、5つ目の街を細かく調べる事にした。

 マップ先生の検索結果では、強敵は見当たらない。特殊な道具で隠れている場合は見つけられないが、それ以外の要素は全部潰すつもりで調べた。

 レベルで脅威になる人物はいない。特殊能力で調べてみても珍しいスキル持ちはいない。魔物の線も考えて調べてみるが、Lv指定をして探す以前に街の中に魔物はいない。

 まさか街中で毒か? と思い調べてみるが、薬屋や薬草を売っているところ以外にはまとまった数はなさそうだ。

「みんなが気にしすぎなんだよ! これだけ探しても何もないんだから、王国の奴隷兵みたいに特殊な装備がなければ無理だよ」

 安心しろ! と言ったが、妻たちは何やら不信がって俺の方を見てくる。そんな顔でこっちを見るな! フラグでも何でもないんだから、問題ない!

 5つ目の街に到着してすぐにレイリーに呼び出された。

「足を運んでいただき、ありがとうございます。少し相談がありまして……今までの街では、門が壊されるまでは城壁の上から攻撃してきましたが、それが今回はないんです。街の中に人や兵士がいる事は分かっているのですが、どうしようかと思いまして、意見を頂けないかと」

 なるほど、確かに少し気になるよな。ん~急に言われても困るのだが、そして妻たち、やっぱりな! みたいな顔をしてこっちを見ている。兵士たちが攻撃してこないのは俺の所為じゃない!

「もし心配なら帰ってもいいけど、それは軍としては出来ないんだろ? だったら、警戒して進むしかないんじゃないか?」

「やはりそうですよね。少しでも強い人を前に出して進みましょう。進言ありがとうございます」

 先頭にレイリーが自ら立ち、後方支援は副官に任せるようだ。ライガとスカルズを前面に出して、その後ろにレベルの高い兵士を配置して順々に入っていく形だ。

 特に大きな抵抗も無く軍事施設も制圧できた。

 他の街の様子が伝わって、抵抗する無意味さも、抵抗しなければ何もないという事が分かっているのだろう。今までにない位スムーズに制圧がすすむ。軍事施設の制圧が終わり、後方から治療院の人も合流した。

 商会の制圧に出発しようとした時、

 ガシャン!

 何かが割れる音が聞こえた。

「状況報告! 何があった!」

 何処からか分からないが、瓶が俺たちのいる場所に投げられたようだ。それに当たってしまい、中に入っていた粉の様な何かが体にかかってしまった人が何人かいるようだ。

 だけど、特に被害はなかったようだ。

 下手人は分からないが、相応の対応が必要になるな・・・とレイリーが言っていた事に少し不安を覚えた。

 改めて移動を開始しようとした所、

 急に兵士の何人かが叫び出した。

 体中が痛いようなのだ。激痛が走っているようで、のた打ち回っている。瓶がぶつかっていない兵士まで痛くなっている者達がいた。

 時間が経つと、痛みを訴える兵士が増えてきた……どういうことだ!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~

桜井正宗
ファンタジー
 異世界で暮らすただの商人・カイトは『レベル売買』という通常では絶対にありえない、世界で唯一のスキルを所持していた事に気付く。ゆえに最強ギルドに目をつけられ、直ぐにスカウトされ所属していた。  その万能スキルを使いギルドメンバーのレベルを底上げしていき、やがてギルドは世界最強に。しかし、そうなる一方でレベルの十分に上がったメンバーはカイトを必要としなくなった。もともと、カイトは戦闘には不向きなタイプ。やがてギルドマスターから『追放』を言い渡された。  途方に暮れたカイトは彷徨った。  そんな絶望的で理不尽な状況ではあったが、月光のように美しいメイド『ルナ』が救ってくれた。それから程なくし、共に世界で唯一の『レベル売買』店を展開。更に帝国の女騎士と魔法使いのエルフを迎える。  元から商売センスのあったカイトはその才能を遺憾なく発揮していく。すると驚くほど経営が上手くいき、一躍有名人となる。その風の噂を聞いた最強ギルドも「戻ってこい」と必死になるが、もう遅い。  見返すと心に決めたカイトは最強ギルドへの逆襲を開始する――。 【登場人物】(メインキャラ) 主人公 :カイト   / 男 / 商人 ヒロイン:ルナ    / 女 / メイド ヒロイン:ソレイユ  / 女 / 聖騎士 ヒロイン:ミーティア / 女 / ダークエルフ ***忙しい人向けの簡単な流れ*** ◇ギルドを追放されますが、実は最強のスキル持ち ◇メイドと出会い、新しい仲間も増えます ◇自分たちだけのお店を開きます ◇みんな優しいです ◇大儲けしていきます ◇元ギルドへの反撃もしていきます ◇世界一の帝国へ移住します ◇もっと稼ぎまくります

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

処理中です...