ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1187話 誕生日

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 勉強を始めてから1ヶ月が経過した。

 俺は、明後日に控えた大イベントを、妻たちと一緒に話し合っている。

 大イベントと言っても身内で行う物だ。

 それは……娘たちの誕生日だ!

 最近、娘たち3人は、しっかりと自分の名前を認識しており、呼ぶと振り向くだけではなく、「あぃ!」と元気な声で返事をしてくれるようになっている。

 他にも、単語を喋り物を理解している様子だ。難しいコミュニケーションは取れないが、簡単な意思疎通なら問題ないレベルだ。3人で何やら話している時もあるからな。ってそれは、言葉をしゃべってなくても何か通じてたっけ?

 そういえば3人とも今では普通に歩いている。ミーシャに関しては、やはり成長が早いのか、軽い駆け足を行うレベルまで成長している。

 そんな3人の誕生日が明後日なのだ。俺の誕生日や妻たちの誕生日は、ほとんど祝っていないが、娘たちに関しては別である。さすがに街を上げて祝う事では無いが、自分たちの家の中でなら問題ないだろう。

 領主や国王の子どもたちは、お披露目みたいな形で盛大に祝う所もあるようだ。これは、世襲制で次の領主を見せるという意味での誕生日があるようだ。なので、やっても次男までだとの事。女の子の誕生日は基本的には身内で……らしい。

 まぁ、ディストピアやゴーストタウン等、俺の管理下にある街に関しては、世襲制ではないので、息子ができてもお披露目なんてするつもりはないけどね。

 ただ、グリエルとガリアには、事ある毎に立派なお世継ぎを! みたいな事を遠回しに言われるので、正直困っているのだ。

 そもそも、寿命の概念が無くなってしまった俺に、寿命の延びる薬を服用し始めた姉御組、年長組はもう少し大人の女性に! みたいな事を言って飲み始めていないが、もうしばらくすれば飲むと思われる。

 俺が死なないのに世襲制もクソも無いんだよね。引退はするかもしれないけど、干渉する事が容易な状態なので、わざわざ世襲制にするつもりはない。

 もし、ミーシャ・スミレ・ブルムの内、誰かが領主をやってみたいというのであれば、そこに向かって勉強をさせて、一定の能力以上の物があれば領主にしてもいいと考えている。ただ、いくら俺の子供で可愛いと言っても、能力が伴っていない子どもだった場合は、就かせることはないだろう。

 今はそんな事はどうでもいい! 娘たちの誕生日だ!

「ご主人様、誕生日と言っても、何をするのですか?」

 俺はピーチにそう言われて、何をすればいいのか悩んだ……何すればいいんだ?

 人を集めて祝うと言っても、俺の親族はいないし、妻たちにもいないよな……いや、ミリーの家族はいるけど、呼ぶのはちょっと違うか? でも、下の子たちはたまにミリーに連れられて、遊びに来てるか。

 後は知り合いだけど、土木組や老ドワーフに綾乃やバザール、結局いつものメンバーじゃね? グリエルとガリアの家族が来ても、珍しい位でたまには来てるからな。

 意気込んで誕生日をしようと思ったが、出来る事がほとんどなかった。

 食事に関しては、まだ俺達と同じものは食べられないし、もし食べれるとしても……シルキーたちの食事はいつも美味いし、思ったよりできる事がつく無かったのだ!

 プレゼントにしても、必要な物は随時買っているし、日本みたいに色々な物があふれている世界じゃないからな……

 とりあえず、自分たちが1歳になったと分かるような感じで、誕生日会をするか? 多分、ミーシャでも分からないと思うから、何かおめでとうって言われてる、位の感じで誕生日が終わりそうだな。

 張り切ってみたもののする事がないと分かったので、雰囲気だけでも娘たちには味わってもらおう。

 食事に関しては、シルキーに任せるしかないので、娘たちの分も俺たちの分も考えてほしいとお願いしておいた。

 俺は、会場設営をしよう! 食堂はさすがに手狭になってしまうので、庭にしようと思ったのだが、何やら天気が良くない。明日降るかもしれないな。

 それなら、ダンジョン農園の一角にパーティースペースを作ればいいじゃないか! という事で、年少組と手の空いている土木組を巻き込んで会場の設営を始めた。

 会場と言っても、そこまで大げさな物ではない。いつもより華やか! と娘たちが感じてくれればいいと思っている。

 ノリノリで相談しながら作っていたら……

「何で私に言ってくれないのよ!」

 と、会場設営場所に綾乃が乗り込んできた。

「私がどれだけあの子たちを可愛がっているか知ってるでしょ!? なのにのけ者にするなんて許せない! だから、私がこの会場を作る指揮をとるの!」

 こんな感じで、綾乃のペースになってしまった。可愛がってるのは知ってるけど、何がどうなると……だからに繋がるんだ?

 こうなった以上、こいつは止まらないからこのままやらせておくに限るか。

 まぁ任せた結果、何だろな……ハリウッドセレブ的な感じの会場が出来上がってしまった。これはやり過ぎじゃないか? と思ったが、俺の抗議など一切無視して、細かい所まで作り込みやがったから、止められなかったのだ。

 しかも大半が、手作りだと。DP購入した物で飾り付けをしたのではなく、クリエイトゴーレムをフルに使ってその上で、マナポーションも大量に使い、腹をタプタプにしてまで作り切ったのだ。俺よりすごい執念かもしれない。

 ただ、これで娘たちは喜んでくれるのだろうか? ここまでいつもと違う雰囲気なら、何か特別な日とか感じてくれるかな?

 娘たちの誕生日当日。

 シルキー監修の下に作られた、娘たちの誕生日スペシャルがブラウニーによって並べられていく。料理の種類はいつもと同じ感じなのだが、何かが違う気がする。よくわからないけど、美味そうだ。

 準備も整い、母親たちが娘たちを連れて登場した。

 拍手で迎えられた娘たちは、きょとんとした顔をしている。訳が分からず、お母親の顔も見て何か訴えているようだ。何て言ったのか分からないが、娘たちは笑顔になってキャッキャと騒ぎ始めた。近くに待機していたケットシーに誘導されて、自分の席に着く。

 みんなから「おめでとう」と言われて、よくわかっていないだろうが「あぃ!」と3人共答えてくれた。この歳で空気を読むのが上手……末恐ろしい子たちだ!

 そして、娘たちは綾乃の作ってくれた会場を気に入ってくれたようで、誕生日の後も度々ここに来て遊んでいるのだとか。

 無事に1歳を迎えられてよかった! 来年は、色々分かる歳になってるかな?
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