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第1168話 面倒くさいけど!
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サラディルの街を出て、勇者と逆賊貴族の兵士を大きく迂回するように、簡易シェルター型ダンジョンへ向かう。
「シュウ君、思ったんだけどわざわざ、地上を移動する必要も無いと思うんだけど」
ミリーにそう言われて、馬鹿正直に簡易シェルター型ダンジョンに向かおうとしていた時に、正攻法でなくてもいいのに! って考えていたはず。それなのに、地下を進むっていう発想が欠けていたとは……最近頭が固くなってるな。
ただ、現状では見晴らしがよすぎるので、ブラインドになっている場所まで移動して、マップ先生で俺たち以外の存在がこちらを見ていないかを確認する。
問題が無かったので、魔法で地下への入口を作成する。一応、ミリーの家族にダンジョンマスターである事はしばらく教えないつもりなので、魔法で代用する事にしたのだ。ここら辺はあらかじめ会議で決めていた事なので、色々考える必要もなかった。
この方法をとれば、簡易シェルター型ダンジョンも魔法で作ったと、ミリーの家族は考えてくれるだろうという判断だ。
そもそも、魔法でどんなことができるのか分かっていないミリーの家族……弟妹は、すごーい! ねね! あれって何? など、大はしゃぎでミリーに色々聞いている。
年齢的にミリーの事を覚えていないんじゃないか? と思う年齢の弟も、ミリーが母親に似ているからか、親しみを持っているのかもしれないな。
方角を確認しながら掘り進めていく。ミリーの家族は、これがどれだけズレた事をしているか分からないので、いちいち言い訳する必要も無くて楽な物だ。
入口は入ってすぐに塞いだので、今は所々に通気口をあけながら空気を取り入れて進んでいる。後でダンジョンマスターのスキルで潰してしまえば、使われる事も無いので大丈夫だろう。
さて、到着した。ミリーの両親は、ミーシャを見て初孫! と感動してすり寄って行ったが、ミリーに力尽くで引き留められている。弟妹たちも猫とケットシーの防御を突破できずに、にらみ合いが始まってしまったのだ。
そこへ、
「ようこそ、ミリーさんのご家族様。ミーシャ様をかまいたい気持ちはわかりますが、まずは身綺麗にしていただきたいと思いますので、ミリーさんについてお風呂へ入ってきてください。使い方を教えるのは、ミリーさん1人で大丈夫ですか?」
「あ~、お風呂の使い方は問題ないですよ。頻繁に入れないだけで、湯船にも入った事はありますからね」
そう言ってミリーが家族を引き連れて、お風呂場へ向かっていく。そもそもミリーの家族は、ここにお風呂がある事自体不思議に思っていない様子だ。疎いと言ってもこれはどうなのだろうか?
ターゲットになっていたミーシャや、一緒にいたスミレやブルムも、何か面白い事をしているくらいの感覚で、手を叩いたりして大はしゃぎだったな。人見知りとかしないのだろうか? 我が子ながら少し心配になってくるな。
「さて、ミリーと家族さんはお風呂へ行ったな。俺たちは俺たちのするべきことをしよう。ある程度状況は把握できているよな?」
「街の外に、この前捕まえた勇者と敵のはずの、この国の兵士が一緒にいるので不思議とは思っていました」
これは、こっちに残っていたキリエのセリフだ。年長組はみんなついて来ていたので、こっちに残っている中でまとめ役をしていたキリエが発言した形になる。
リンドとカエデは、娘たちの世話があるので基本はノータッチだった。
「恐らく考えられるのは、王国の貴族がこの機に真紅の騎士団を排除したいと考えている……可能性だろう。で、貴族の兵士だけであれば多少のケガ人は出るけど、問題は無かったのだが勇者が加わると、戦力的に死者が大勢出てもおかしくない状況だ」
「……ですが、私たちがいちいち関わる必要は無いと思いますが?」
「これはあくまで俺個人の独断と偏見による意見だと思ってほしい」
俺はそう前置きをして、考えている事を話していく。
王国で俺たちに友好的な存在はそう多くない。真紅の騎士団と国王とその周辺。実力的にも権力的にもトップやトップに近い人間が多いが、それでも組織に縛られているので勢力が減れば、俺たちが自由に活動する事が難しくなる。
活動が難しくなる、というのは比喩みたいな物だが、俺が管理している街に悪影響が及ぶ可能性が高くなるという事だ。フレデリクもリーファスも、今は普通に王国と取引しているが、それができなくなる可能性が高くなると考えている。
それでも魔導列車による貿易が可能なので問題は無いのだが、人の移動ができなくなる事は大いに問題になってくる。
冒険者も集まってきているし、商人たちも集まってきている。反対に、街から行商に出ている人たちもいる。俺たちを排除したいと考えている一派に……例えば街道封鎖を行われれば、その人たちが帰ってこれなくなるという事だ。
本当に作り話レベルの発想の部分もあるのだが、それでも俺の言いたい事を理解してくれたようで、真紅の騎士団にいなくなられては困るという事で、ある程度の介入をしようという事になった。
最初は、ちょっと助言だけして放置する予定だったのにね。目標の第一であるミリーの家族の安全は確保できているので、少し俺たちに有利に働くように動こうという事だ。
準備を始めた俺たちは、普段あまり使わないガチ装備の一つを身に着けている。全員がレッドドラゴンの素材を使用した武器防具を装備しているのだ。
この装備をした理由は、真紅の騎士団のトレードマークは赤、見た目で仲間だとイメージさせられる物を選んだからだ。もう1つの理由は、この装備は対毒の事も考えて設計されている装備であるため、フルフェイスの装備であり顔を隠せるという事だ。
見られた所でかまわないのだが、真紅の騎士団の秘密兵器と思ってもらえれば儲けもの? 位の考えでチョイスしている。
あと、フルフェイスなので、小型の魔導無線も内蔵されており、連絡を取り合う事が簡単にできる事もポイントが高い。密閉されているので、周囲の音を取り入れいる機構もクリエイトゴーレムで作っているのだが、どうしても数ミリ秒のズレがあるので高速戦闘の場合は、音での反応がし辛くなってしまうのだ。
準備が終わり、外に出て真紅の騎士団からの合図を待つことになった。
「シュウ君、思ったんだけどわざわざ、地上を移動する必要も無いと思うんだけど」
ミリーにそう言われて、馬鹿正直に簡易シェルター型ダンジョンに向かおうとしていた時に、正攻法でなくてもいいのに! って考えていたはず。それなのに、地下を進むっていう発想が欠けていたとは……最近頭が固くなってるな。
ただ、現状では見晴らしがよすぎるので、ブラインドになっている場所まで移動して、マップ先生で俺たち以外の存在がこちらを見ていないかを確認する。
問題が無かったので、魔法で地下への入口を作成する。一応、ミリーの家族にダンジョンマスターである事はしばらく教えないつもりなので、魔法で代用する事にしたのだ。ここら辺はあらかじめ会議で決めていた事なので、色々考える必要もなかった。
この方法をとれば、簡易シェルター型ダンジョンも魔法で作ったと、ミリーの家族は考えてくれるだろうという判断だ。
そもそも、魔法でどんなことができるのか分かっていないミリーの家族……弟妹は、すごーい! ねね! あれって何? など、大はしゃぎでミリーに色々聞いている。
年齢的にミリーの事を覚えていないんじゃないか? と思う年齢の弟も、ミリーが母親に似ているからか、親しみを持っているのかもしれないな。
方角を確認しながら掘り進めていく。ミリーの家族は、これがどれだけズレた事をしているか分からないので、いちいち言い訳する必要も無くて楽な物だ。
入口は入ってすぐに塞いだので、今は所々に通気口をあけながら空気を取り入れて進んでいる。後でダンジョンマスターのスキルで潰してしまえば、使われる事も無いので大丈夫だろう。
さて、到着した。ミリーの両親は、ミーシャを見て初孫! と感動してすり寄って行ったが、ミリーに力尽くで引き留められている。弟妹たちも猫とケットシーの防御を突破できずに、にらみ合いが始まってしまったのだ。
そこへ、
「ようこそ、ミリーさんのご家族様。ミーシャ様をかまいたい気持ちはわかりますが、まずは身綺麗にしていただきたいと思いますので、ミリーさんについてお風呂へ入ってきてください。使い方を教えるのは、ミリーさん1人で大丈夫ですか?」
「あ~、お風呂の使い方は問題ないですよ。頻繁に入れないだけで、湯船にも入った事はありますからね」
そう言ってミリーが家族を引き連れて、お風呂場へ向かっていく。そもそもミリーの家族は、ここにお風呂がある事自体不思議に思っていない様子だ。疎いと言ってもこれはどうなのだろうか?
ターゲットになっていたミーシャや、一緒にいたスミレやブルムも、何か面白い事をしているくらいの感覚で、手を叩いたりして大はしゃぎだったな。人見知りとかしないのだろうか? 我が子ながら少し心配になってくるな。
「さて、ミリーと家族さんはお風呂へ行ったな。俺たちは俺たちのするべきことをしよう。ある程度状況は把握できているよな?」
「街の外に、この前捕まえた勇者と敵のはずの、この国の兵士が一緒にいるので不思議とは思っていました」
これは、こっちに残っていたキリエのセリフだ。年長組はみんなついて来ていたので、こっちに残っている中でまとめ役をしていたキリエが発言した形になる。
リンドとカエデは、娘たちの世話があるので基本はノータッチだった。
「恐らく考えられるのは、王国の貴族がこの機に真紅の騎士団を排除したいと考えている……可能性だろう。で、貴族の兵士だけであれば多少のケガ人は出るけど、問題は無かったのだが勇者が加わると、戦力的に死者が大勢出てもおかしくない状況だ」
「……ですが、私たちがいちいち関わる必要は無いと思いますが?」
「これはあくまで俺個人の独断と偏見による意見だと思ってほしい」
俺はそう前置きをして、考えている事を話していく。
王国で俺たちに友好的な存在はそう多くない。真紅の騎士団と国王とその周辺。実力的にも権力的にもトップやトップに近い人間が多いが、それでも組織に縛られているので勢力が減れば、俺たちが自由に活動する事が難しくなる。
活動が難しくなる、というのは比喩みたいな物だが、俺が管理している街に悪影響が及ぶ可能性が高くなるという事だ。フレデリクもリーファスも、今は普通に王国と取引しているが、それができなくなる可能性が高くなると考えている。
それでも魔導列車による貿易が可能なので問題は無いのだが、人の移動ができなくなる事は大いに問題になってくる。
冒険者も集まってきているし、商人たちも集まってきている。反対に、街から行商に出ている人たちもいる。俺たちを排除したいと考えている一派に……例えば街道封鎖を行われれば、その人たちが帰ってこれなくなるという事だ。
本当に作り話レベルの発想の部分もあるのだが、それでも俺の言いたい事を理解してくれたようで、真紅の騎士団にいなくなられては困るという事で、ある程度の介入をしようという事になった。
最初は、ちょっと助言だけして放置する予定だったのにね。目標の第一であるミリーの家族の安全は確保できているので、少し俺たちに有利に働くように動こうという事だ。
準備を始めた俺たちは、普段あまり使わないガチ装備の一つを身に着けている。全員がレッドドラゴンの素材を使用した武器防具を装備しているのだ。
この装備をした理由は、真紅の騎士団のトレードマークは赤、見た目で仲間だとイメージさせられる物を選んだからだ。もう1つの理由は、この装備は対毒の事も考えて設計されている装備であるため、フルフェイスの装備であり顔を隠せるという事だ。
見られた所でかまわないのだが、真紅の騎士団の秘密兵器と思ってもらえれば儲けもの? 位の考えでチョイスしている。
あと、フルフェイスなので、小型の魔導無線も内蔵されており、連絡を取り合う事が簡単にできる事もポイントが高い。密閉されているので、周囲の音を取り入れいる機構もクリエイトゴーレムで作っているのだが、どうしても数ミリ秒のズレがあるので高速戦闘の場合は、音での反応がし辛くなってしまうのだ。
準備が終わり、外に出て真紅の騎士団からの合図を待つことになった。
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