ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1140話 こんなはずじゃなかった!

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 出発の日を迎えた。

 デートの順番は、年中組・年長組・年少組の順番になったようだ。

 理由は、年中組の担当している仕事が、ちょうど手のかからない時期であったため初めの出発となった。それに対して年少組が最後なのは、今取り掛かっている仕事が後10日程かかるためこの順番となっている。

 だからと言って、年長組の仕事が暇と言うわけではない。年長組は孤児院の子やディストピアの子どもたちの臨時の教師的役割も担っており、いなくなるのであればその期間に合わせた勉強や訓練のプランをたてるのだ。

 作ったプランに従って、ディストピアで能力の高い人に、仕事が割り振られる事になっている。長期間離れる時は、仕事が割り振られた人と連絡を取り合い、随時変更していくのだ。

 俺の知らない所で色々やっているんだな。俺がゴーストタウンの工房で仕事をしていなかったら、複数の女性を垂らし込んだヒモ野郎になるな。不労収入があるとはいえ、娘たちにはそれが分からないからな。

 おっと、これから遊びに行くのにブルーな気分になっているのは良くないな! 出発という事で、妻たちも全員集合して、見送ってくれるようだ。それに湖エリアで働いている人も、野次馬気分で見送りに来てくれており、結構な人が集まっている。

 娘たちも母親3人に抱かれてこっちを見ている。建物等大きな物をたくさん見ているが、さすがにここまで大きい物は初めて見るので、ちょっと興奮している様子が見られる。なんだか分からないけど、大きなものがそこにあるので興奮しているのだろう。

 シルキーの許可が出たら、一緒にクルージングをしような!

 みんなに見送られて船が出発する。30分位進むと陸地や街の壁は見えるけど、個々の物は判別できなくなっている。

「さて、まずは何をしようか?」

 集まっている年中組の7人に聞いてみた。現在甲板に集まっているため、否が応でもプールが目に付く。そうなれば決まっている、プールに入って遊ぼうという事になった。

 遊び始めて1時間程経って、何でこんな事になっているんだろうと首をかしげざるを得ない。

 俺のプールのイメージは、男女でキャッキャウフフって言葉は古い気がするけど、そんな感じで楽しむものだと思っていたのだが、プールの惨状を見てその妄想は打ちのめされている。

 可変式で深さを変えられるシステムで、最大3m近い水深に出来るようにしている。そしてそれが不味かったのだろう。ただ泳ぐだけではなく、水中バトルの様な事が行われているのだ。

 なんていうかね。マンガみたいに水の波がブシャーって降りかかってきたり、水の龍みたいにプールの水が人に向かって飛んでいくのだ。地球の人なら恐らく死ぬんじゃないかと思う程の水圧だろう。

 水中バトルでも直接攻撃が無いのでこんな感じになってはいるが、あまりの激しさに大きな船でもグラグラ揺れるのだ。どれだけ本気で戦ってるんだよ!

「ゲホゲホ……そろそろストップしてくれ」

 俺がそう言うと次第にプールの波が弱まっていく。

 魔法の力も借りているとはいえ、叩いたり殴ったり張り手のような動作で、数トン単位で水をぶちまけるのはヤバすぎんだろ。こっちにはステータスがあって、それに比例して強くなるとは言っても、見た目とのギャップが半端ない!

「でさ、何でこんな事になったんだっけ?」

 俺がそう聞くとクシュリナが、

「ご主人様が水をかけるから、お返しにかけ返して、それがリリーにもかぶって……みんなで水の掛け合いが始まっただけじゃないですか?」

「あれは、ただの水の掛け合いじゃないよね? 特にシャルのよくわからない攻撃、あれめっちゃ痛かったんだけど……」

「え? あれは、水をすくって投げつけただけですよ?」

 海賊王に俺はなる! とか言っている漫画の魚人じゃないんだからさ! 俺は、優しく! 掛け合ってなんとなく雰囲気を楽しみたかっただけなんだよ!

「でもさでもさ! 水中って動きが制限されるから、思いっ切り体を動かすって意味では楽しかったよね!」

 無邪気にそう言ったのは、チェルシーだった。

「そうね。戦闘に役に立つかは別として、こういうトレーニングもいいと思うわ」

 キリエが肯定するように相槌を打つ。

「湖でできるのが一番いいけど、海水でこれをするとなると厳しいですね。ご主人様、ダンジョン農園の一角に、普通の水で広めのプールって作れませんか?」

「う~ん、何か誤解しているようだから1つだけ言っておくけど、プールって本来こういう使い方じゃないからね。まぁ、作れるか作れないかで言えば、問題なく作れるよ。ただ、水の入れ替えを考えると、ちょっと調整してからになるけど、それで問題ないならね」

「水の入れ替えですか?」

「そうだよ。ダンジョンでも流れていない水は、汚れてしまうんだよ。だから、川のような物を設定して流れさせるようにしておかないと、その内水が緑色の苔だらけになるよ」

 それを聞いた7人はゲェっという顔をした。

「だから、川を作ってその川の水を引き込んで排出するような作りにすれば問題は無いと思うよ。まぁ最悪、何か月かに1度水をDPで入れ替えてもいいんだけどね。高いモノじゃないからさ」

 それを聞いて安心した顔になった。

 それにしても未だにダンジョンって、意味が分からないんだよな。何が目的なんだろうな? それに、矛盾している事もあれば、無駄に現実的な作りだったり、本当によくわからない設定なんだよね。

「あ~それにしても疲れたな。水の中で動くと普段の何倍も疲れる気がするわ」

 俺のセリフにみんなが同意したようで、深く頷いてくれている。ただ、水の中であれだけ激しく動いていたので、みんなかなりの汗をかいていたようで、喉が渇いていた。

 そこにブラウニーがジュースを運んできてくれた。準備されたのは、フレッシュジュースやスムージーのような物、後は果実を水で割った果実水かな? その中には気になる新作があったので、それを注文してみた。

 一口飲んで……

「おぉ~これって梅ジュースか? あれ? でもそれだけだとこの色は出ないよな? でも甘酸っぱい感じは梅っぽい……なんだこれ?」

「さすがご主人様。これは、梅の実を砂糖漬けにした際に出てきたエキスと、紫蘇ジュースをあわせたものになります。なのでこの色なのですよ」

「そういう事か! これ美味いな! 炭酸で飲んでもいけそうだな!」

「ご主人様ならそう言うと、綾乃様が言っておられたのは正解ですね。という事で綾乃様が準備してくださった魔導具でございます」

 何か見覚えのある機械だな。でも、俺が知っている機械よりコンパクトな気がするんだよな。何だろこれ?

「その梅紫蘇ジュースをお貸しください」

 そう言って渡すと蓋のような物をつけて、棒を挿入する形で魔導具にセットすると、ショゴゴゴゴ……と音を立てて泡が棒の先から噴き出てくる。

「炭酸メーカーか! でもそうすると……二酸化炭素の入ったボンベはどこだ?」

 炭酸飲料になった梅紫蘇ジュースを受け取り、その魔導具を観察する。

 そして気付いた。二酸化炭素を作るのか、空気中から集めるのか、化学反応で合成させているのか分からないが、棒の根元についているボタン付近に、高ランクの魔石から作った魔核が埋め込まれているのを発見して、それが元になっているのだろうと予想をつけた。

 年中組の皆にも好評だったようで、俺と同じ梅紫蘇ジュースを楽しんでいた。
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