ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,111 / 2,518

第1111話 調査の結果

しおりを挟む
 獣人用のブラシを作り始めて2日目。様々なサイズのブラシを複数個作る事ができた。

「作ったのは良いけどどうするの? 知り合いに、毛むくじゃらの獣人なんていないわよ?」

「引きこもり体質の綾乃殿には、そもそも友達がいないのではござらんか?」

 バザールが棘のある言い方で綾乃に突っ込みを入れている。最近よくケンカまではいかないが、2人でねちねち言い合ってるな。

「仲がいいのは分かったから、とりあえず落ち着け」

「「良くないわよでござる!」」

「そんな事言っても息ぴったりじゃん。あ~にらみ合うな。片方は骸骨なんだから、睨めっこした所で勝てないんだからさ」

 俺の言葉で、ガルルルと言わんばかりに2人がにらみ合い始めてしまった。煽っている俺が言うのもなんだけどな。まぁ1~2週間もすれば元通りになるだろ。今までにも何度かあったしな。

「話が進まなくなるから落ち着け! ゼニスに話は通してある。商会の従業員にそういった家族がいるから、その家族にテスターになってもらう予定だ。話だと、少し毛の長い犬獣人と短毛の熊獣人と毛の硬い猪獣人だって言ってたから、テスターとしては良いんじゃないかと思う」

「見事に狙い撃ちしたような獣人が働いてるのね。ミリーさんは確か、襟足から少し下位までと尻尾と、その付け根付近に毛が生えてるんだったっけ?」

「そうだな。他の獣人の妻たちも多少の差はあるけど、同じような感じだな。特に尻尾は俺が好きと言う事もあって、みんな手入れに余念がないけどね。毎日トリートメントしてるぞ。だからサラサラふわふわで気持ちいぞ!」

「あ~綺麗な尻尾だと思ってたけど、そういう苦労があるんだ。私なんて髪の毛が長いと手入れが大変だから短めにしてるけど、これでも面倒だからな~シュウから地球の高級シャンプーとか買ってても、面倒でしょうがないよ」

「毛がツヤツヤピカピカはいいでござるな! 某もスケルトンを使って、農園の家畜をいつもブラッシングしてるでござるが、さわり心地が違うでござるからな!」

「なぁバザール……骨の手で触って、さわり心地が分かるのか? そもそも骨に痛覚があるっていうのが、信じられないんだけど、お前の体ってどうなってんだ?」

「某にも分からないでござる。某には魔石があるでござるから、その影響で骨でござるが痛みがあるのかもしれないでござる」

「ゴーレムは痛みを感じないのに、骨は痛みを感じるのか? 不思議だな」

「待つでござる! さすがに無機物のゴーレムと、某を同率に考えてほしくないでござる!」

「まてまて素材的に考えれば、ゴーレムは石とか鉄だよな? 骨は突き詰めればカルシウムじゃなかったか? そうなれば無機質だろ? 同じじゃん……」

「違……わないでござるか? そう言われると、ゴーレムとスケルトンの違いって何でござるか?」

「俺にもよくわかんない。スケルトンって一応分類にするとアンデッドだから聖魔法とかに弱いけど、ゴーレムはそういう訳じゃないからな」

 違いが分からずに2人で悩んでいると、綾乃から悩むくらいなら骨を使って、ゴーレム作ってみれば? と言われて、作ってみる事にした。

 その結果……

「できる過程の違いしかないのかな?」

 魔核を使ってつくった骨ゴーレムと、アンデッドのスケルトンの違いは分からなかった。アンデッドは、できる過程に生物だった物の死体が関係するってだけっぽい。でもさ、ダンジョンだとそのまま湧いてくるから、わけわからん!

「考えるだけ無駄かもしれないでござるな。この世界のルールだと思った方がいいでござる」

 この世界には考えても理屈が分からない事がたくさんある。そんな時に使う魔法の言葉『この世界のルール』がここで発動された。

 不完全燃焼な感じだったが、話し合いはそこで終わり。ゼニスに試作品の山を渡しに事務所へ向かい、する事が無くなったので、ゲームをしてから家に帰った。

 特に語る事も無く1週間が過ぎて連休後の出勤の日。工房へ向かうと、入口でゼニスが待っていた。俺が言うのもなんだけど……グリエルやガリアもだけど、お前らいつ休んでるんだ?

「シュウ様、お待ちしておりました。獣人の家族からの使い心地についての聞き取りが終わったので、早く伝えるために待っておりました!」

 いい笑顔でそう言われると、なんか俺が悪い事している気分になるだが、ワーカホリック恐るべし!

 で、ゼニスが結果を話してくれた。

 毛の長めの犬獣人の家族に人気があったのは、俺がいつもクロやギンをブラッシングしている見た目が剣山みたいなタイプのブラシだったとの事。人間の櫛みたいに横に持ち手がついているタイプではなく、上から見るとT字になっているタイプが使いやすいらしい。

 これには簡単な理由があって、自分でブラッシングできない範囲が多くて夫婦や兄弟など、身内にブラッシングしてもらう事になるようで、T字の方が使いやすかったと。

 短毛の熊獣人の家族に人気があったのは、柄付きブラシの様なタイプのブラシだった。馬のブラッシングに使う毛の長いタイプではなく、本当にタイルとかを洗うような固めのブラシがお気に入りらしい。

 誰が使うのかとか思って作ったブラシだったが、予想外にも熊獣人の家族か。肌が頑丈であの硬さが気持ちいいとか言われると、そんなもんなのか? って思ってしまった。

 最後に猪獣人の家族も熊獣人と同じで、毛の短い硬いブラシがお気に入りらしい。理由も熊獣人の家族と大差は無かった。

「……てな感じで、肌が頑丈な2家族は予想外にも、柄付きブラシみたいな毛の短い硬いブラシを気に入ったみたいだ」

 工房でバザールと綾乃を待って、ゼニスに聞いた話をしてみる。

「理由を聞いてみると、分からなくも無いでござるが、初めの予想で考えると意外でござるな」

「そうね……ちょっと予想外だったわ」

 ゼニスが聞き取り調査した際に作ったレポートを見ながら話を進めていく。

「こう見ると、柔らかいタイプの毛のブラシは人気ないわね。全獣人に当てはまるわけじゃないけど基本は、剣山みたいなタイプと柄付きブラシタイプの物で良さそうかな?」

「そうでござるな。とはいえ、毛の短い肌の弱い、この場合は普通と言うべきでござるか? そういう獣人のために、柄付きブラシタイプは、何段階かの毛の柔らかさがあると良さそうでござる」

 これで俺たちの話はまとまった。特に柄付きブラシタイプの金属じゃなくても、問題ないブラシについては、木工系の工房でも問題なく作れるとドワーフが言っていたので、何処に委託するかは完全に任せる事にした。

 剣山タイプのブラシについては、うちの工房の大型炉を使えば、1回で数百個単位の部品が簡単に作れるので、しばらくはうちの工房で作る事になった。部品の組み立てを外部にお願いする感じにすれば、作業量も増えないから問題ないとの事だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...