ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,107 / 2,518

第1107話 こだわった意味が無かった

しおりを挟む
 鬼人族は、グリエルからの話を聞いて、悩む暇すらないノータイムで仕事を引き受けてくれたようだ。俺がゼニスに話してからわずか30分の早業だった。実質、グリエルの移動時間と説明時間だけしか、かかっていないことになる。

 と言っても、まずは意見箱や目安箱を作らねばならん。

 盗むやつはいないと思うが、開けたり動かしたりするためには、特殊な方法が必要になる物でないとな。

 さてどうしたもんだか。

 作業スペースでのんびり考え事をしていると……

「どうしたでござるか?」

 バザールが顔を出した。声は出していないつもりだったが、何やらブツブツ言っていて怪しい人みたいだったとか、マジか!

 一連の流れを説明して、持ち運びできない特殊な箱を考えている事を伝えた。

「それは難しいでござるな。ただ動かせないだけなら、簡単に作れるでござるが」

「そうなんだよね。そこまでする人間がいるか分からないけど、収納の鞄を使えば設置してあるタイプの箱位ならしまえちゃうんだよな。それこそ建物にくっついている状態でもないとね」

「建物に接している部分に、釘を打ち込むとかでは無理でござるか?」

「ん~釘を打ち込めば問題ないかな? 実験してみるか」

 バザールと実験をしてみた結果、どうやら釘を打ってしっかり固定されていると、1つの物だとシステム上認識されるらしい。

「って事は、動かしにくい箱を作ってから釘を打ち込めば、とりあえず大丈夫か?」

 そう結論を出して、箱の作成をしていく。簡単にあけられたら意味が無いので、一応金属製の箱を採用した。カギは盗まれたら意味が無いので、金庫のダイヤル方式を採用して試作品を完成させた。

「あんたたち何してんの?」

 綾乃が作業スペースにやってきて質問をしてきた。かくかくしかじかうまうまと今の状況を説明する。

「あんたたちってバカ? たかが意見箱や目安箱に、そんなに手間暇かけてるのよ。盗む人はいないと思うけど、盗まれても問題ないでしょ。盗まれたらそれを街に知らせれば、また書いてくれるんだし。何より、その扉はあけるのが面倒だから回収する人がかわいそう!

 それに初めは、問題なさそうな紙だけコルクボードとかに張り付けてみてもらえばいいんじゃない? そうすればどんなこと書いているとか分かるしね。私たちでお手本を書くのもいいかもしれないしね」

 それを聞いて俺とバザールはガックリとうなだれた。

 少し話あった後、箱は各自で用意してもらう事に決まった。素材にこだわらなければ高いモノでは無いので、問題ないだろうとの事。

 そして、お手本になる物を書こうとした結果、何も思いつかずに3人で苦笑してしまった。

 なので、ひとまずこの工房にいる人間に何かないか聞いてみた。

 ブラウニーAの意見『もっと仕事を下さい』
 ブラウニーBの意見『暇な時間があるのでする事ないですか?』
 ブラウニーCの意見『メニューを色々考えたいので意見を下さい』

 ブラウニーたちの意見は、要約すれば『仕事をくれ』の一言のようだ。どんだけ家事が好きやねん!

 ドワーフAの意見『酒の種類を増やしてほしい』
 ドワーフBの意見『酒のアテを増やしてほしい』
 ドワーフCの意見『酒の量を増やしてほしい』

 ドワーフたちは見事に、酒関係の希望しか出なかった。ただの飲んだくれじゃねえか!

 この工房にいる人間に聞いたのが悪かった。特殊な人しかいないんだからそれは当たり前だよな。

 と言う事で、おやつの時間を過ぎた頃に隣の広場に集まっている子供達に聞いてみた。

 子供男の子A『学校でもみんなでサッカーがしたい』
 子供男の子B『学校給食は美味しいけど、嫌いな野菜が出るからあれを減らしてほしい』
 子供女の子A『お母さんたちが忙しいから、弟や妹のために美味しいお料理を作れるようになりたいので、お料理を教えてほしい』
 子供女の子B『私は冒険者になりたいから、それが勉強できる学校が欲しい』

 最後の女の子の意見は、普通男の子が考える意見じゃないかな?

 特に子たちは他の子に聞いても、学校の事について意見を言ってくる子が多かった。が、勉強をしたくないという子がいなかった事に驚きもしたし嬉しくもなった。

 ただ1人だけ家の事を書いた子がいたけど、父ちゃんと母ちゃんが良く喧嘩をするから、仲良くしてほしいって言われても、さすがにどうする事も出来ないな……

 子どもたちが学校の事について色々と書いてくれるので、箱を置く場所の候補として学校にも置くべきかな? それに近くのおばちゃんたちが集まったり、怪我をした人たちが集まる治療院もありかもしれないな。待ち時間に書いてもらうとか。

 今の所、俺たちにはこれ以上の意見が思い浮かばないので、他に箱を置く場所はグリエルたちや、各街に任せよう。最低限置く場所を決めておけば大丈夫だろう。

 そんな感じでお願いをグリエルにする。苦笑する声が聞こえたが、気のせいだという事にしておこう!

 仕事が終わり、家に帰って汚れを落としてから娘達の部屋に向かう。

「おぉ! ミーシャ!」

 俺が部屋に入ると、ハイハイをしていたミーシャが、俺の方に向かって突進してきた。スミレとブルムは抱っこされている。

 迎えに行っても良かったのだが、その場に座ってミーシャが来るのを待った。そうすると俺の足を登って、頭から俺のお腹に突っ込んできた。

 やられたふりをするためにそのまま後ろへ倒れると、俺のお腹の上にミーシャが来るような形になった。そうするとミーシャは、私の場所だと言わんばかりに俺の胸の上あたりまでくると、へばりつくような形で手足を広げて抱き着いてきた。

 あくまでもシュウの主観であって他から見れば違うのだが、シュウが喜んでいたため誰も口を挟む人がいなかった。

 あぁ! ミリーにミーシャを回収されてしまった。他の娘たちも母親に連れて来てもらい俺の近くにいたので、手を伸ばすとがっしりと掴まれてしまった。俺の指をしゃぶろうとするので、慌てて手を引いた。

「そっか、2人共なんでも物を口に入れるようにし始めたのか。あんまり清潔過ぎて、体に抗体ができないのも怖いけど、清潔じゃなくて病気になられても困るよな」

「それは分かるけど、そこら辺はシルキーたちが色々してくれているみたいだから大丈夫だと思うよ」

「シルキーって本当にすげえな」

 俺のセリフに3人の母親は苦笑した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

処理中です...