ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,106 / 2,518

第1106話 困っている事?

しおりを挟む
 工房について昨日の事をバザールと綾乃の2人に話した。

「ミーシャをお風呂に入れて気付いたんだけど、獣人で頭の上に耳が付いている赤ちゃんの髪の毛を洗う時って大変なんだよ!」

「なんで? 獣人で大変なのは、クマの体中に毛が生えているタイプの方が大変じゃない?」

「あ~そういう大変じゃないんだよ。赤ちゃんの頭を洗う時って頭の後ろを支えて仰向けで洗うだろ? ミーシャは猫の獣人だから仰向けのまま洗うと、全部耳の中に水が入っちゃうんだよ。だからしっかりと押さえて洗わないといけないんだよね」

 それを聞いて、ミーシャの事を思い出したのだろう。耳が前を向いているので、器みたいに水が入ってしまう事に思い至ったのか、綾乃は『あっ!』とした表情になっている。

 バザールは、骸骨状態なので表情は分からん!

「俺たちが分からん苦労が、他の種族にはあるんだな、って思ったんだよね。ディストピアやゴーストタウンだけじゃなくて、俺の管理っていえばいいのかな? している街には、迫害されている種族とかが助けを求めて来てるから、苦労している人達が多いんじゃなかなってさ」

「色々あるでござるな。某もお風呂が好きで良く入っているでござるが、体を洗うのが大変でござる」

 そう言ったバザールの姿を見てみる。

「確かに骨の状態だと、洗うの大変そうだな」

 人間の骨格標本の様な体をしているって、バザールは人間の骨だから標本とは違うか。隅々まで洗うとなれば大変だな。

「今はどうしてるんだ? お前意外に骨がいないからあれだけど、一応参考までに教えてくれ」

 バザールは俺の質問に答えてくれた。その答えを聞いて俺は苦笑しかできなかった。

 その方法は、日毎に洗う場所を決めて柄付きブラシで一生懸命洗っているらしい。骨のつなぎ目は、諦めるしかないようで、洗剤を隙間に入れて動かしてから流すという感じにしているらしい。

 確かに骨の隙間何てどうにもならないよな。

「自分で洗わないで、スライムとかに汚れを取ってもらったらどうだ? ノーライフキングのお前なら骨が溶かされる事は無いだろ? 汚れだけ溶かしてくれるんじゃね?」

「それは試してみるでござる! スライム風呂を作って入ってみるでござるよ。それで成功すれば、風呂につかる時間が増えるでござるよ! いつも体の一部を洗うだけで2時間もかかってたでござるからな!」

 マジか! 寝ない体とは言え、2時間も洗うとかすげえ、な。

「まぁ、バザールは例外だけど、種族によってはいろいろ苦労していると思うんだよね。だから、その人たちのために何か作れないかな?」

「ん~いい考えだと思うけど、情報収集するのが大変だと思うよ? 話を聞いてて思ったけど、シュウはミーシャの世話をして、バザールはもともと人間で骨になったからっていう感じで、違う種族だから気付けるんじゃないかな?」

「あっ! そうでござるな。自分たちでは当たり前だと思っている事でも、他の種族からしたら苦労しているんじゃないかって事でござるな!」

 あ~そういう事か。確かに自分では当たり前だと思ってたら、違う種族から見たら全然違ったって事もあるもんな。

「とりあえず、いきなり全部作る事なんて無理だと思うから、今自分たちで不便だと思っている所から、アクションをかけてみるのはどうかな?」

 2人共それを聞いて、それしかないかな? って感じで頷いてくれた。

「じゃぁ、一応ゼニスと話をしてくるわ」

 2人は自分達の作業スペースに移動して「いってらっしゃい」と背中を見せながら言ってくれた。せめてこっち向いて見送ってほしかったわ!

 商会に到着すると、ゼニスは忙しそうに書類にサインしたり部下に指示を出していたので、秘書に俺の部屋に案内されてそこでくつろいでいる。

 よく考えたらこの商会に俺の部屋があって、いつか忘れたけど色々家具置いたんだったな。ここのソファー気持ち良いな! 横になってくつろいでたら、ダマがお腹の上に乗ってきたので撫でてやった。

 しばらくすると、ドアが壊れるんじゃないか? って思う位の勢いでドアが開かれた。

「シュウ様! お待たせして申し訳ありません! 何か御用事でしたか?」

 入ってくるなり俺に頭を下げそう言ってきた。別に謝られる事でもないし、時間があるから待たされても気にしないという事を伝えるが、ゼニスは納得してくれなかった。

 このやり取りは絶対終わらないと判断した俺は、放置する事でうやむやにする事にした。そのままバザールと綾乃に話した昨日の様子をゼニスにもして、どうやって情報を集めようか迷っている事も伝える。

「なるほど。確かに種族ならではの悩みがあるかもしれないですね。シュウ様の治めている街には多種多様の種族がいますから、住人のためにはかなり良さそうですね。

 後は、どうやって情報を集めるかって事ですね。庁舎や学校、各ギルドあたりで、以前話していた意見箱みたいなのを、作ってみるのも面白いかもしれませんね」

「あれね。確かにありかもしれないな。どうでもいいような意見も沢山あるかもしれないけど、いろんな情報が手に入りそうだな。ついでに、街で改善してほしいとかこういう事してほしい! みたいな意見箱も一緒に作るか!」

「それもありかもしれませんが、今回の話だと一応グリエルさんに通したほうがいいですね。今から行きますか?」

 行こうと思ったが、ただこれだけの事を話すためにディストピアに戻るのはどうなんだ? と思ったので、魔導無線で呼びかけてみた。

『シュウ様ですか? どうなさいました?』

 これでも問題なさそうだったので、一連の流れをグリエルに話してみた。

『それは良いですね。ガリアも賛成してます。後、領主代行や街の中枢に近い人間は、信用のできる人間か奴隷で固めているので不正や横領は無いと思いますが、末端ではあるかもしれないので、街中でそういう要求をされたりしている人を見かけたら、密告みたいな事も出来るようにしたいですね』

「ん~それだと、誰かに冤罪がかかったりしない?」

『鬼人の方が最近訓練以外にする事が無くて困っていると陳情が上がっていまして、調査させるのにちょうどいいかと思うのですがどうですか?』

「え? 鬼人の皆って今でも忙しく情報収集とかしてくれてるじゃん。暇なんてなくね?」

『それがですね。スキルも育ってきたおかげで効率が良くなっているようで、手が余っているらしいんです。だから、もう少し仕事をもらえないかって……』

「鬼人の皆がそれでいいっていうなら許可をするけど、ゼニスから見てダメそうなら、ちょっと考えるか」

『では、しばらく様子を見てですかね。それに、意見箱を設置してもすぐにそういう情報が入ってくるわけでもないですし、鬼人の皆さんに提案はしてみます』

 なんか変な方向に話が進んでしまったけど、何とかなりそうだな。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...