ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,081 / 2,518

第1081話 ビックリした

しおりを挟む
「ご主人様!?」

 慌てて俺の作業スペースに駆け込んできたブラウニーが、そう言いながら俺に跳び付いてきた。

「ブラウニー、落ち着け! 何があった?」

 このブラウニーの慌てぶりを見るに、何かあった事は間違いない。なので、落ち着くように促してから何があったか聞く。

「ミリー様のお子様が!?」

 ミリーの娘……ミーシャに何かがあったのか? その瞬間に全身から殺気にも見た気配があふれ出した。この日、シュウが殺気を漏らした時間、工房から200メートル以内では、よくわからない寒気に襲われた人間が多数いたとかいないとか。

「ミーシャ様が! ハイハイをされたそうです!」

 はぁ? ミーシャがハイハイした? マジか! 俺の殺気に気付いたバザールが、慌てた様子で俺の作業スペースにやって来た。ちなみに綾乃は、何か寒気がするな? 昨日の夜更かしが悪かったのかな? みたいな事を思って、作業を続けていたらしい。

「バザール! 俺、一旦家に帰ってくる! ミーシャがハイハイをしたみたいなんだ!」

 それを聞いたバザールは「あっ! はい」とだけ答えて、俺を見送ってくれた。その後ろからブラウニーがなんか言っている声が聞こえたが、何を言っているか分からなかったので無視した。

 工房から直接、魔導列車の準備されていたホームに向かった。俺が来ることが分かっていたのか、出発準備が終わっておりすぐに魔導列車が出発した。

「ミーシャ!」

 ドタバタ走って娘達の部屋の扉を勢い良く開けて、ハリセンで顔面を叩かれてひっくり返った。

「ご主人様、うるさいです」

 実に寒気のする笑顔で、俺の事を見降ろしているスカーレットが、そう言い放ち俺を強制的にクールダウンさせる。

「あっ、すいません」

 条件反射でDOGEZAをしていた。

「じゃなくて、ミーシャがハイハイしたって聞いて、慌てて帰って来たんだけど……」

 ミーシャはいつものように、仰向けになって手足をバタバタさせて、猫やケットシーたちと遊んでいた。あれ? ハイハイは?

「慌てるのも分かりますが、少しハイハイしただけなので、帰ってくる必要も無かったと思いますが?」

 少しだけ? あっ! 魔導列車に向かって走っている時に、ブラウニーの声が後ろでしたのってこの事を伝えるためか? でも、少しだけハイハイしたってわかれば結果は同じか。

「食事の後に、ミリー様を追うような形で5~6歩ほどハイハイされました。その様子は、食事の後だった事と近くに母親や私たちがいたので、映像は残っていませんが」

 それを聞いた瞬間、血の涙を流すかと思う程悔しい思いをした。ディストピアはエリア掌握しているが、地上の部分はダンジョンじゃないので、スキルで過去を見れないんだよね。くそう……

「首が座っているので、ハイハイしてもおかしくないと思ってたけど、食事の後に私を追いかけてくるとは思ってなかったよ」

 ミリーにとっても突然だったので、カメラも準備できなかったようだ。それにしても、獣人の赤ちゃんの成長ってやっぱり早いんだな。

 しばらくすると、ミーシャが泣きだした。どうやら猫たちが気付く前に、排便をして泣いてしまったようだ。例の如くおれは部屋から追い出されて、外で待機する事になった。一緒に、スミレやブルムのオムツも交換する様だ。

 あ、オムツは日本製の使い捨てを大量に召喚している。お尻を綺麗にするティッシュなども過剰なほどに召喚しており、娘たちの部屋に置いてある収納の箱に詰め込んである。もちろん、母親の3人の収納の腕輪の中や、ブラウニーとシルキーのメイドの嗜みの中にも大量に入っている。

 数だけで言えば、後5人が産まれても問題ない位の量が年齢別に入っている。やり過ぎだと怒られたが、かまわん!

 オムツを交換した後に、ミーシャをハイハイさせてみようとミリーが試みたが、やっぱりハイハイする事は無かった、残念。リンドやカエデはちょうど授乳中だったので、ミーシャがハイハイした所は見れていなかったそうだ。

 そりゃそうだな、自分たちの娘とは言え授乳を中断してまで見るわけにはいかないもんな。

「今日はもうハイハイしないかもな、仕事に戻るわ」

 ミーシャの雄姿を見る事が出来なかったのは残念だが、俺たちの都合でミーシャに強要するのも違うので、今度の機会に見せてくれることを祈ろう。

 しょげて工房に戻ると、何かを察知してくれたバザールが優しく肩を叩いて、

「よくわかるでござるよ。忙しくて牛たちの出産に立ち会えなかった時に、そんな感じになるでござる!」

 一緒にしてほしくない! と思うが、大切に育てている牛たちの出産に立ち会えなかったバザールも、こんな感じだという事か? なんか複雑だな。

「そういえばさ、バザールはスケルトンたちが使う農具を作ったって聞いたけど、綾乃が何を作ったか知ってるか?」

「聞いてないでござるか? 綾乃殿は自分で作った、歯医者用のドリルみたいなのを使って、アクセサリーを作っていたでござるよ。シルバーリングを作ってから、複雑な模様をつけていたみたいでござる。他にも自分で買った宝石に模様を入れて見たりしていたでござる」

 へ~アクセサリーなんか作ってるのか?

「自分で使うならクリエイトゴーレムで、作ればいいんじゃないか?」

「どうやら違うようでござるよ。自分でも使うでござるが、ディストピアで流行らせようとしているでござる。それに、綾乃殿だとあそこまで細かい模様はつけられないでござるよ。もちろん自分でもあそこまで細かいのは無理でござるな」

 そこまで細かい模様をつけてるのか、今度見せてもらおう。

 特にめぼしいことも無く、1週間が過ぎた。ゴーストタウンのダンジョンでは、今週1週間で8人の冒険者が亡くなったそうだ。普段が2~3人だったのに対して、8人なので3倍くらいの冒険者が亡くなったようだ。

 報告によると、無謀にも敵に挑んで亡くなったそうなので、自分の実力にあわない冒険をしてしまったという事だろう。ディストピアの冒険者に見張らせていた、鉄鉱石とクリアメタルのエリアでの被害は、4人もいたそうだ。

 結構なケガ人が出たそうだが、この位は普通だと言っていた。亡くなった4人はよそから来た冒険者で無謀に突っ込んで、7人パーティーが半壊して近くにいた冒険者が助けた形だったとか。

 ポーション類も豊富なゴーストタウンは元々ケガで死ぬ事はあまりないので、冒険者ギルドでは苦い顔をしていた。

 残りの4人の内2人も、他所からの冒険者だったそうだ。残りの2人は、残念ながらゴーストタウンの冒険者だったそうだ。

 まぁこの程度で済んで良かったかもな。

 週が明けて仕事始めの1日。自分の作業スペースで行動を開始しようと思ったら、

 ブラウニーが慌てた様子で俺に駆け寄ってきた!?

 デジャヴュ……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

鮮明な月

BL
鮮明な月のようなあの人のことを、幼い頃からひたすらに思い続けていた。叶わないと知りながら、それでもただひたすらに密やかに思い続ける源川仁聖。叶わないのは当然だ、鮮明な月のようなあの人は、自分と同じ男性なのだから。 彼を思いながら、他の人間で代用し続ける矛盾に耐えきれなくなっていく。そんな時ふと鮮明な月のような彼に、手が届きそうな気がした。 第九章以降は鮮明な月の後日談 月のような彼に源川仁聖の手が届いてからの物語。 基本的にはエッチ多目だと思われます。 読む際にはご注意下さい。第九章以降は主人公達以外の他キャラ主体が元気なため誰が主人公やねんなところもあります。すみません。

転移魔法に失敗したら大変な事に巻き込まれたようです。

ミカヅキグマ
ファンタジー
 魔導師のヴァージニアは転移魔法に失敗して見知らぬ島に来てしまった。  地図にも載っていないその島には何やら怪しげな遺跡がポツンと建っていた。ヴァージニアはただでさえ転移魔法の失敗で落ち込んでいるのに、うっかりその遺跡に閉じ込められてしまう。彼女が出口を探すために仕方なく遺跡の奥に進んで行くと、なんとそこには一人の幼い少年がいた。何故こんな所に少年が? 彼は一体何者なのだろうか?  ヴァージニアは少年の正体が世界を揺るがす出来事に発展するとは露程も思っていなかったのだった……。 ※台詞が多めです。現在(2021年11月)投稿している辺りだと地の文が増えてきています。 ※最終話の後に登場人物紹介がありますので、少しのネタバレならOKという方はどうぞご覧下さい。 ネタバレ ※ヴァージニア(主人公)が抱く疑問は地竜とキャサリンが登場すると解けていきます。(伏線回収) さらにネタバレ ※何度もループしている世界の話ですが、主人公達は前の世界の記憶を持っていません。しかし違和感などは覚えています。(あんまりループ要素はないです) さらにさらにネタバレ? ※少年の正体は早い段階で出てるじゃないかと思っている方……、それじゃないんです。別にあるんです。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、 王太子からは拒絶されてしまった。 欲情しない? ならば白い結婚で。 同伴公務も拒否します。 だけど王太子が何故か付き纏い出す。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...