ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1054話 完成まであと一歩

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 素材を確保して工房に戻ってきたのは、13時30分を回っていた。お腹が空いていたので、工房付きのブラウニーにちょっとコッテリとしていて、ガッツリ食べられる物をお願いした。

 そしたら、照り焼きサンドイッチとカツサンドが出てきた。さすがブラウニー分かってる。しかも量が多くならないように、半分ずつ出してくれた。具が多いので半分ずつでも十分満腹になった。綾乃は、量が多すぎて1個半で限界が来ていた。

「うぅ、もう食べれない……」

 その結果、お腹をさすってソファーに寝転ぶトドの出来上がり。トドと言うにはちょっとスタイルがほっそりしてるけどな。

 綾乃は来た当初は少しやつれていたが、それは栄養不足、食事を余り与えられていなかったためにそうなったのだが、ここにきて美味いものを食べ一時期太り、ヤバいと思い今の体形になっている。

 とはいえ、昨日あれだけスイーツ食ったのにな。食べた量は、明らかにスイーツの方が多いのに、全然平気な顔をしている。別腹って本当に存在するのだろう。

 まぁ実際に胃の動きを調べて、満腹状態の女性にスイーツを出したら、胃の上部に少し隙間ができたという実験報告もあるくらいだから、普通の食事とスイーツを食べる行為では何かが違うのだろう。

「さて、素材はたくさん集まったけど、これをどうやって同じ大きさにする?」

「そうでござるな。鉄板にドリルで穴をあけるのはどうでござる? そうすれば形は統一できるでござる。下に隙間の無いように鉄板を置いて穴の開いた鉄板、そこにあれを流し込んで擦切ればいいでござる!」

 バザールの出してくれた案を検討するために4つ作れる物を準備してみた。成功したのだが、問題があった。規模を大きくしてやった所、

「これだと、上手くやらないと素材の半分以上がダメになってしまうでござる」

 擦切る方法だとどうしても余る部分が出てしまう。それを再度型に流そうとしても時間がかかるとどうしても、固まり始めてしまうのだ。複数用意して使いきる方法をとるにしても広範囲に穴があるので、うまくいかなかった。

 手動による限界がそこにはあった。

「それじゃあ、そのサイズの長い穴を用意して輪切りにしていくのはどう?」

 そう言われて、今度は500円玉よりちょっと大きめの鉄パイプをドワーフに準備してもらう。いきなりの注文だったが、1時間もかからずに準備してくれた。どれだけ加工技術が高いのやら。

 1メートル位の鉄パイプを立てて、底を塞ぎあの液体を流し込む。

「おぉ! なんかこれ面白いな!」

 固まった物を棒を使い押し出すと、綺麗な形で固まっていた。

「あぁ……中に気泡があるでござる」

 水とは違い樹液なので、少し粘度が高いのだ。そのせいで落ちた衝撃で中に空気を含んでしまったようだ。そういえば、圧力式脱水機の棒を作る時にも同じような事があったな。

「真っ直ぐに立てたままやったのがいけないでござるから、斜めにして流し込めばきっと問題ないでござる!」

 圧力式脱水機と同じ解決方法で実験すると、多少の失敗はあるが成功と言っていいだろう。圧力式脱水機の棒より細いため、どうしても小さな気泡がちょっと混ざってしまったのだ。

「この程度なら、色付けする事を考えれば気にならないだろう。後は等間隔に切って仕上げればいいか?」

「あっ! どうやって2色に色付けする? 切ってから色塗るにしても手間じゃない?」

「いやそれは、素材自体に色を付けて……あれ? でござる。そうすると1色の棒が出来るだけでござる」

「いやさ、どうせ切るんだろ? それなら白と黒を糊かなんかでくっつければよくね?」

「それだ!」
「それでござる!」

 最後の過程が残っている。どうやって同じ大きさに切るのかと言う事だ。

「どんな切り方しても、おそらくは最後にやすりをかけて表面を整えないといけないかな?」

 俺たちには、切れ味のいい刃で押し切るか、お肉のスライサーみたいに丸い刃を回転させるか、のこぎりのような物で切るか、回転する細長いやすりのような物。ダイヤモンドカッターみたいなもので削りきるくらいしか思いつかなかった。

 なので、全部試してみる事にした。のこぎりと切れ味のいい刃はすぐに準備できたが、ダイヤモンドカッターのような物は、ドワーフに理解してもらうのが大変で半日かけて理解してもらい、次の日丸々使って試作品を作り何とか完成した。

 相変わらず感覚がおかしくなってるな。普通、説明して本物を召喚して教えたとはいえ、1日で作れるような代物ではない。スキル補正なのか、ファンタジー素材のおかげなのかもうよくわからなくなっている。

 まず始めに刃の先端を固定して刃を下ろすタイプの物を試す。見た目は、紙をまとめて切断する時に使う道具みたいなイメージだろうか?

「ん~これは押し切る感じだからかな? どうしても少し潰れてしまう感じだね」

 刃の入る部分がどうしても少し潰れてしまったのだ。見た目を気にしないのであればこれでも十分遊べるが、さすがに却下になった。この道具は後に魚人族に見つかり、和紙を切る道具として使われるようになる。手作業で切っていたのが格段と楽になったと喜ばれた。

 回転する刃で切るタイプは、おおむね成功だが問題が1つ。現状刃の方を固定して回転させるため、棒を押し付けなければいけないため、どうしても棒が傾いてしまい少し歪になってしまった。固定して押し付けられれば有力候補か?

 のこぎりの刃のような物は、回転させるタイプと手動タイプを用意したが、回転させるタイプは前の物と一緒で固定する道具が無いと形が歪になってしまう。そしてどっちも断面が少し凸凹してしまうのでやすりをかけるのが大変だった。

 最後のダイヤモンドカッターのような物は、回転させるのが固定させたものなので、先の2つと同じく歪になってしまう問題は、固まったリバー時の駒の元を固定して押し付けられれば、完璧だ。

「ん~回転する刃と、ダイヤモンドカッターみたいなのは同じ感じかな? 気持ち回転する刃の方が断面が綺麗かな?」

 どっちを採用するか悩む。こういった時は、作りやすい方を使う方がいいだろう、と言う事になったのでドワーフ達の話を聞きに行くと、ダイヤモンドカッターのような物の方が作りやすいとの事だった。

 ドワーフ達の認識では、やすりを薄くしたものと言う感じだったようだ。実際にそれで間違っていないんだけどね。
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