ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,043 / 2,518

第1043話 問題に次ぐ問題

しおりを挟む
 銅線の完成の連絡がまだ来ないので、便利道具の開発をしている。と言っても、日本から持ってきた知識や記憶をつかって、あったら便利だなという物を作っているだけだ。

 基本的には自動に出来ないので、今やっている手作業をどうにか楽にできないかという物である。

 なので、今週の始めに街の中を3人で歩いて、そこら辺にいる子どもやおばちゃん、屋台の主人等に話を聞いている。

 質問した内容は、日常生活で何か困っている事や大変な事を聞いて回ったのだ。そして一番多かったのが、

「やっぱり、洗濯って大変なんだな。日本にいた時なんて、洗濯機に突っ込んで洗剤と漂白剤、柔軟剤を入れてスイッチオンだったもんな。しかも、親がしてくれていたな。たまに干すの手伝ってたけど、毎日手洗いしている人は大変だろうな。

 こっちに来てからは、シルキーたちが洗濯機の魅力に取りつかれて、毎日シーツまで洗ってくれてたな」

「自分は、骨になってから代謝が無いでござるから、今汚れると言えば農作業の土汚れ位でござるな」

「ちょっと、何で私を見るのよ!」

「いや、綾乃殿は家事全般ダメでござるから……」

 綾乃には家事スキルがマイナスか! と思うようなことが多々あるので、聞かなくても分かっているという目で見ていたら、こんな感じで逆ギレされた。

「さて、手動の洗濯機か、昔はそんなものがあったとか聞いた事あるけど……」

「とりあえず、召喚リストで見てみたはどうでござるか?」

 拗ねている綾乃を放置して話し合いを始める。召喚リストにないか調べてみると、思いのほか早く見つかった。

「普通に新製品として売りに出されてるんだな。洗濯機なんて自動の物しかないと思ってたけど、そうでもないんだな」

「思ったよりたくさんあるでござるな」

 手動洗濯機の種類の多さにちょっとびっくりしている。回転するドラムも縦式、横式が存在しており、二層構造になっている物となっていないものがある。二層構造になっていないものは、脱水ができないタイプばかりだ。

 ドラムの外に壁になる物がなければ脱水なんてできないもんな。回した瞬間に水が周りに飛び散るんじゃ使い物にならんな。

「構造的に考えるとでござると、縦式が色々つくりやすそうでござるが、綺麗にできそうなのは、横式でござるか?」

「俺にどっちがいいかなんて分かるわけないじゃん。そこまで大きくしなければ、縦や横に出来るような構造にすればいいんじゃないか? 洗濯物と水を入れる時は縦、蓋を閉めてから横にするとか?」

「そうでござるな。とりあえず、縦式が作れない事には話にならないでござるから作ってみるでござる!」

 確かに作ってみないと、俺たちには何が問題になるか分からないからな!


 そう言って作り始めたのが3日目。

「これって予想してなかったな」

 縦式を作ろうとして、ドラムや外枠を作ってスムーズに回る様に何とかできたのだが、回すための取っ手をつけようとしたところで問題が発生したのだ。

 上で回すタイプにしようと思っていたのだが、蓋を閉めるので蓋に取っ手をつける事になるのだが、蓋とドラムを直結させるのは上手くいかずに断念した。

 となると、取れる手段は下部にドラムと直結させる方法だろうか? それなら簡単に作れたが、これだと横にする前提で作らないと回せない欠陥品になってしまう。なので、横にする前提で本体を横に出来るように考えた。

 本体の重心のほぼ真横、外側に突起をつけて、そこを起点に本体を回せるようにした。回した後に固定する方法がぱっと思いつかなかったので、本体の下に物を置いて固定する形をとった。

「ん~完成したな。洗濯の方は、ドラムの中に3本ほど回転と平行に作ったでっぱりをつける事で、いい感じに洗濯物が中で動き回って綺麗に洗えるようになったね。でも、脱水するためには回転力が足りないかな」

 初めに作ったドラムの内側が平面だったものは、洗濯物がただスルスルとドラムの内側をすべるだけで洗濯にならなかったので、波状にしたら今度は脱水する時に上手くいかなかったので、何度か形を変えて今の3本のでっぱりになった。

「コインランドリーの洗濯乾燥機の内側に、何かでっぱりがあったのはこのためだったんだね。縦式のには付いてなかったから何かと思ってたわ。きちんと考えられているのね」

 綾乃は、今回の作業では思った以上に役に立たなかったので、傍観しているような形の姿勢をとっていた。家事スキルが壊滅なのはまだいいが、家事を便利にする道具にまでその効果が発揮されるとは思わなかったのだ。

 実際にはスキルじゃないんだけど、精神的なアレルギーみたいな物なのだろうか? とにかく作る邪魔ばっかして大変だった。本人はその気がないだけに、さらに質が悪いのだ。

「問題は、回転力でござるか……ハンドルの部分を短くすれば、回転を早くできるでござるが、それだと回しにくいうえに力が必要でござるからな」

 今は回すハンドルがドラムと直結しているので、脱水するには回転のスピードが遅いのだ。

「やっぱり歯車を使って回転のスピードを上げるしかないか?」

 できれば他の解決方法を思いつけばよかったのだが、俺たちにはこれ以外に思いつけなかったのだ。

 なんで歯車を使いたくなかったのかと言えば、歯車と言う部品を使うだけで技術的にはかなり難しくなってしまうからだ。便利道具を普及させるためには簡単に作れるという事も大切なので、あまり歯車を使いたくなかったのだ。

「仕方が無いでござるよ。遠心力が強くないと脱水できないでござるから」

「でもさ、脱水するためにはかなり早く回さないといけないわよね? 歯車をかみ合わせたといっても、人力でそこまで早く回せるの?」

 ここまで傍観に徹していた綾乃から、そんな事を言われた。

「確かに、人の力だけであそこまで回すなら、かなり重たくなるよな。それこそ自転車みたいに足でやらないと力が足りないか?」

 1歩進んで停滞している感じだ。

「脱水まで考えるのは厳しいでござるかな?」

 自転車の歯車だけなら時間をかければ作れるかもしれないけど、チェーンはさすがに俺たちには作れないな。

 脱水の事は一旦諦めて、洗濯だけできるモノをゼニスに見せに行く事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...