ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1041話 他の工房は?

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 のんびりとした1日を過ごした俺は次の日からまた、精力的に働きたくてもできなかった。

 ゴーストタウンの工房に行ったら、ゼニスが待っており「やっぱり今日も来ましたね。週休二日ですよ!」と、半ギレ気味で言われてしまった。あれ、おかしいな。俺が上司のはずなのに、また怒られた。あれ? デジャブを感じるな。

 っという事で、お休み2日目が始まった。

 何をするわけでもなく、従魔たちと日向ぼっこをして過ごした。

 あれ~おかしいな。娘たちができてから、初めての休みなのに、休みの日が全く充実していない。娘たちに会いたくても時間限定だし、まだ一緒に何かできないし、充実しているはずなのに充実していない矛盾。

 次の休みが少し怖い。

 次の日から俺は、物作りに没頭した! 今までと変わらないって? しょうがないだろ! せっかく得た仕事なんだから働かないと! また無職になっちゃうじゃないか! そんなのは断じて許さない! 娘たちにガッカリされたくないのだ!

 冒険者もしっかりとした職業ではあるが、よくよく考えると日雇い労働者みたいな形で、仕事にありつけない日もあるのだ。仕事が無かったからって家でぐーたらする姿なんて見せられないしな。

 ふと、そんな事を考えて俺も2週間ちょっとで変わるもんだなって、自分でもびっくりしている。

「思ったんだけどさ、蒸気機関の前に俺たちが電気モーターを作ってしまったけど、良かったのかな?」

「しょうがないでござる! 自分らの能力にあった道具を作っただけでござるからな!」

 確かにその通りだ。この世界の職人に比べて、俺らの加工能力には雲泥の差があるのだ。クリエイトゴーレムを使わない俺達は、所詮そんなもんなのだ。

「まぁ、蒸気機関ができれば、どのくらいかかるか分からないけど、その内電気も作り出すのかな? そこで停滞するならそれでもいいんじゃない? 私たちが電気モーターを隠しておけばいいじゃない。それにドワーフにも他言しないように、言っておけばいいんじゃない?」

 まぁ、俺たちがここまでしちゃったんだから、広めたくないなら隠すしかないよね!

「そういえば気になったでござるが、銅線ってこの工房のドワーフのご老人にしか作れないでござるか? 細く加工できる職人がいるでござるなら、頼めばよくないでござる?」

「それもそうか。俺たちには無理でも、この世界の職人なら作れるかもしれないもんな。実際に鉄線みたいな物はあるし、あれを細くしてもらえばいいだけだから……出来るんじゃね?」

 と言う事で、バザールは人間フォームになって、ゴーストタウンの主人がドワーフではない工房に出向いている。

「この工房で鉄線って作ってる?」

 工房主と商品について話し合っている。

「もちろん作っているさ。あまり知られていないけど、いろんなところで使われているんだぜ。俺たち鍛冶職人は、まず鉄線を作りながら金属の扱い方を学ぶんだ。鉄線の出来で、この鍛冶工房の善し悪しが分かるってもんさ」

 調べてみるまで知らなかったが、結構いろんな所で使われているのだ。それに本当に知らなかったのだが、この世界では鉄線は基本中の基本ということだ。何で鉄線が基本なのか全く分からないが、この世界ではそういう事になっているので考えても仕方がない。

 それより、鍛冶を教えてくれた老ドワーフめ。何が鍛冶の基本は鉄を叩く所から始まるだ! 今まで疑問に感じてなかったけど、金属叩く前に金属の扱い方を覚えないで、どうやって鍛治するんだよ!

 多分スキルがあった俺は別なんだろうけど、こんな事してたら弟子が育たないんじゃねえか? って、あいつらの寿命、人間の10倍以上あるんだった。そんな理屈は無いのかもしれんな。とにかく叩け! って感じだったしな。

「今までとは一味違う注文になるのだが、この位の細さで銅線を作ってもらえないだろうか?」

 参考になる物を工房主に見せて、一緒に銅のインゴットも机の上に置く。

「何かの冗談ですか? 鉄より柔らかい銅で細い線を作っても、意味なくないですかい?」

「これはこれで使い道があるんだよ。ただ、自分たちじゃこの細さに加工できないから、どこかの鍛冶工房に頼もうと思って、いろんな所を回ってるところだよ。ちなみにここには一番に来ているよ。街で聞いたら一番腕がいいって聞いたからね」

 この内容はリップサービスではない。まぁ街の人間と言っても聞いたのは、ゴーストタウンの領主館にいる人たちだけどね!

「街一番を自負しているが……さすがにここまで細い物となると、作った事がないな。時間をもらえれば、必ず作る! これはこの工房に対しての挑戦だ! 絶対に作ってみせる!」

 意気込むのは良いけど、挑戦じゃないから! ただ、モーター用のコイルに使いたいだけだから! とはいえず、とりあえず微笑んでおいた。男の微笑みとか誰得?

「では、完成の目途が経ったら連絡貰ってもいいですか? 一応この注文を完璧にこなせるのであれば、金貨で500枚払います。望むレベルまで細く出来なかった場合でも、それに見合ったお金は払います。出来る限り細く均一に作ってください」

 素材はこちら持ちで細い銅線を作るだけで、金貨500枚と言う大金を出すと言った俺に、工房主は目を見開いて凝視してきた。こちらがどれだけ本気かと言う事を見せつけた形になる。そして、工房を後にした。

「シュウ、他の工房も回るの?」

「もちろん回るよ。聞いた工房には全部足を運んで、同じ条件で話をする。俺たちの中でのランキングも作れるからちょうどいいだろ?」

「なるほど。今度から頼むときの工房選定も兼ねてるのね。思ったより考えてるじゃない。これが商会のお金なら、ゼニスさんから待ったがかかるだろうけど、今回は全部シュウのお金だもんね」

 有り余るお金を使って、工房と交渉しているのだ。選定を兼ねたふるい落としをしている形だ。

 それにしても元の世界ではどうやって、あんなに長い金属の線を作っているんだろうな? ちょっと調べても作り方まで乗ってる本や、映像作品が見つからないから分かんないんだよな。さすがに鋳造ではないよな? パスタみたいに圧力をかけて伸ばすのかな?

 ん~分からん! とりあえず、アウトソーシング出来る事は任せよう。何でもかんでも自分たちでしてたら、経済が回らないもんな!

 なんて事を言ってみたが、経済についてよくわかっていないのでそれっぽく言ってみただけだ。
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