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第1038話 意外な事実
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「とりあえず、こんなもんでいいかな?」
縦糸を動かす綜絖に直結している足踏みの装置から、座った状態の膝の前あたりに広く空間ができている。
今まで織った生地は太ももの上あたりで巻いていたため、あまり長く巻き付ける事が出来なかったが、綜絖から体の位置までの距離を伸ばしたことによって、足元に空間ができている。それによって今までの数倍の生地が巻けることになった。
巻き付ける棒も手動で回さないといけないので、結構力がいるのだ。だけど考え方を変えて、生地を巻き付ける棒に直結する形で車輪のような物をつけている。これを回す事によって生地が巻き取られる仕組みだ。動かす回数は多くなるが、小さな力でできるので問題ないだろう。
「そうでござるな、もしこれ以上にするのでござれば、綜絖の部分を足踏みから自動に変えないといけないでござるな」
「そうね。これ以上は、本当の意味で産業革命に足を踏み入れる事になるわね」
バザールも綾乃も同じように考えているようだ。これ以上は、やり過ぎかもと考えている。
「パーツを付け替えるだけで、出来るようになっているのは助かるな。やり方さえ覚えてもらえば、ドワーフたちがちゃっちゃとやってくれるだろう。でも、あいつらやってくれるかな?」
「ここにいるドワーフたちは無理でござろう」
「あの様子を見る限り、違う仕事を押し付けたら殴られるかもしれないわね!」
2人共、ゴーストタウンの工房で仕事をしているドワーフたちの事を思い浮かべて、苦笑気味に答えを返してくれた。
工房のドワーフたちは今、蒸気機関に夢中になっているので、こっちの言う事を無視してそっちの作業にかかりっきりになっているのだ。
水車による動力が完成して、それより力のある動力の蒸気機関の存在を知ってしまい、これを使えばもっと作業がはかどるのでは? という考えからか、全力で取り組み始めてしまったのだ。
ミシンを作った事によって、ピストンと動力をつなぐ部分の問題は解決しており、大きな問題であった溶接については、ガス溶接のような物が存在していたためにすぐに作成に取り掛かってしまったのだ。
今の問題は、蒸気でピストンを動かす際の圧力の抜け道だ。ピストンと連動させれば大丈夫だと思っていたのだが、連動させたのはいいがピストンを動かす蒸気の移動が、上手くいかずに動かなくなってしまうのだ。
なので今はその微調整をしている所らしい。と言うかその前に、簡単な蒸気をループさせる機械を作らされたよ。まぁ蒸気を作るのは五徳で、ピストンを動かした蒸気を冷やすのは、冷蔵庫の魔導具を応用した物を作らされたのだ。
これじゃあ、どっちが上司なんだか……とはいえ、ドワーフたちの技術が無ければ、俺たちの物作りの効率は半減以下になってしまう。ならば、無駄に縛り付けるよりは自由にやらせて、必要な時に頼らせてもらおうという形に落ち着いたのだ。まだ1ヶ月も経っていないのにな。
「そういえば、据え置きタイプのドリルの方はどうなの?」
モーターができたのに、据え置きタイプのドリルや丸鋸は、未だに水車を動力としているのだ。理由は簡単、大きいモーターが作れなかったからだ。
正直な所、手持ちのドリルも力が弱いと思っている。あまり強く押し付けると、回転が止まってしまうのだ。元々削るために作っていたモーターを少し大きくしただけなので、力が足りないのだ。
モーターを作りたくても、蒸気機関に意識が行ってしまっているドワーフたちを、こっちに戻す事ができないため、モーターを作る事ができないのだ。銅線が俺たちには作れないので、待機している状態だ。
蒸気機関も電動の動力も、ゴーストタウンとディストピア以外では使う予定は無いので、どちらか一つがあれば問題ないのだが、作るのが簡単なのは、正直電気で動かすモーターだと思っている。
とりあえず、ドワーフたちが使うのは蒸気機関で俺たちが電気でいいか?
「ふと思ったでござるが、素朴な疑問をしていいでござるか?」
そんな事を考えていると、バザールが訪ねてきた。
「電動モーターを使った加工品でござるが、この工房の方針からそれていないでござるか?」
「クリエイトゴーレムを使わない便利な魔導具作り。俺たちだけじゃなく、生産方法を確立する。あっ! モーターを使ったやすりで細かい加工をしたら、こっちの人には作れなくないか?」
「確かにその可能性はあるけど、ドワーフの御爺ちゃんたちとか、ボールベアリングに使う真球を、自力で作ってるのよ。この世界の人間の生産力、加工力を考えれば、私たちが最新技術を使って加工できる物を、作れてもおかしくないわ。作ってから、ドワーフに再現できる物なのか聞けばいいんじゃない?」
「その方が賢いか。もし再現できないなら、改良をすればいいだけだしな」
「確かにそうでござる。変な心配をし過ぎたでござるな」
俺たちは、改良した織機の部品を数個作って、ディストピアへ移動した。
ディストピアでドワーフの工房にいる弟子たちに部品の説明をして、織機を使っている人の手が空いている時間帯に改良するようにお願いする。部品の作り方も簡単に説明したが、こっちは実物があるので、大した手間はかからなかった。
「今からゴーストタウンに帰っても時間的に微妙ね。それなら、シュウの家に行って赤ちゃんを見せてもらってもいいかな?」
「シルキーたちが許可を出すならいいけど、ダメって言ったら諦めてくれよ?」
そう綾乃に返すと、敬礼をする勢いでOKの返事が返ってきた。綾乃は特にシルキーたちには頭が上がらないからな、かなりビビり気味である。
「……と言う事でスカーレット、2人を子どもたちに合わせても大丈夫か?」
「今でしたら、特に問題ないですね。授乳も終わってオムツも変えたので、少しであれば問題ないですよ」
良かった。スカーレットから許可が出て、綾乃も安心している。いや待て、別に会えるか会えないかだけで、綾乃が怒られるわけではないのに、何でほっとしてるんだ?
「わ~可愛い! あ、この子がミリーさんの赤ちゃんね! 猫耳に猫尻尾が可愛い。お持ち帰りしたい……」
「おぃ! それは許さんぞ!」
「冗談に決まってるじゃない。それだけ可愛いって事よ。それで、こっちの子がカエデさん赤ちゃんかな? ちょっと肌が黒いね。となると、こっちがリンドさんの赤ちゃんかな? みんな、可愛いね。もっとお猿さんみたいなのをイメージしてたよ」
「あ~俺も思った。言っちゃ悪いけど、初めはもっと不細工なのかと思ってた。で、綾乃の言った通り、こっちのちょっと肌の黒いのがカエデの娘でスミレで、こっちがリンドの娘でブルムだ。こっちの猫耳猫尻尾がミリーの娘でミーシャだ」
10分程娘たちをかまっていて分かった事なのだが、3人の娘たちに一番人気だったのは、バザールだった。まだしっかりと目が見えていないはずなのに、顔をのぞかせるとキャッキャと笑い出したのだ。ちょっとジェラシーを感じてしまった。
縦糸を動かす綜絖に直結している足踏みの装置から、座った状態の膝の前あたりに広く空間ができている。
今まで織った生地は太ももの上あたりで巻いていたため、あまり長く巻き付ける事が出来なかったが、綜絖から体の位置までの距離を伸ばしたことによって、足元に空間ができている。それによって今までの数倍の生地が巻けることになった。
巻き付ける棒も手動で回さないといけないので、結構力がいるのだ。だけど考え方を変えて、生地を巻き付ける棒に直結する形で車輪のような物をつけている。これを回す事によって生地が巻き取られる仕組みだ。動かす回数は多くなるが、小さな力でできるので問題ないだろう。
「そうでござるな、もしこれ以上にするのでござれば、綜絖の部分を足踏みから自動に変えないといけないでござるな」
「そうね。これ以上は、本当の意味で産業革命に足を踏み入れる事になるわね」
バザールも綾乃も同じように考えているようだ。これ以上は、やり過ぎかもと考えている。
「パーツを付け替えるだけで、出来るようになっているのは助かるな。やり方さえ覚えてもらえば、ドワーフたちがちゃっちゃとやってくれるだろう。でも、あいつらやってくれるかな?」
「ここにいるドワーフたちは無理でござろう」
「あの様子を見る限り、違う仕事を押し付けたら殴られるかもしれないわね!」
2人共、ゴーストタウンの工房で仕事をしているドワーフたちの事を思い浮かべて、苦笑気味に答えを返してくれた。
工房のドワーフたちは今、蒸気機関に夢中になっているので、こっちの言う事を無視してそっちの作業にかかりっきりになっているのだ。
水車による動力が完成して、それより力のある動力の蒸気機関の存在を知ってしまい、これを使えばもっと作業がはかどるのでは? という考えからか、全力で取り組み始めてしまったのだ。
ミシンを作った事によって、ピストンと動力をつなぐ部分の問題は解決しており、大きな問題であった溶接については、ガス溶接のような物が存在していたためにすぐに作成に取り掛かってしまったのだ。
今の問題は、蒸気でピストンを動かす際の圧力の抜け道だ。ピストンと連動させれば大丈夫だと思っていたのだが、連動させたのはいいがピストンを動かす蒸気の移動が、上手くいかずに動かなくなってしまうのだ。
なので今はその微調整をしている所らしい。と言うかその前に、簡単な蒸気をループさせる機械を作らされたよ。まぁ蒸気を作るのは五徳で、ピストンを動かした蒸気を冷やすのは、冷蔵庫の魔導具を応用した物を作らされたのだ。
これじゃあ、どっちが上司なんだか……とはいえ、ドワーフたちの技術が無ければ、俺たちの物作りの効率は半減以下になってしまう。ならば、無駄に縛り付けるよりは自由にやらせて、必要な時に頼らせてもらおうという形に落ち着いたのだ。まだ1ヶ月も経っていないのにな。
「そういえば、据え置きタイプのドリルの方はどうなの?」
モーターができたのに、据え置きタイプのドリルや丸鋸は、未だに水車を動力としているのだ。理由は簡単、大きいモーターが作れなかったからだ。
正直な所、手持ちのドリルも力が弱いと思っている。あまり強く押し付けると、回転が止まってしまうのだ。元々削るために作っていたモーターを少し大きくしただけなので、力が足りないのだ。
モーターを作りたくても、蒸気機関に意識が行ってしまっているドワーフたちを、こっちに戻す事ができないため、モーターを作る事ができないのだ。銅線が俺たちには作れないので、待機している状態だ。
蒸気機関も電動の動力も、ゴーストタウンとディストピア以外では使う予定は無いので、どちらか一つがあれば問題ないのだが、作るのが簡単なのは、正直電気で動かすモーターだと思っている。
とりあえず、ドワーフたちが使うのは蒸気機関で俺たちが電気でいいか?
「ふと思ったでござるが、素朴な疑問をしていいでござるか?」
そんな事を考えていると、バザールが訪ねてきた。
「電動モーターを使った加工品でござるが、この工房の方針からそれていないでござるか?」
「クリエイトゴーレムを使わない便利な魔導具作り。俺たちだけじゃなく、生産方法を確立する。あっ! モーターを使ったやすりで細かい加工をしたら、こっちの人には作れなくないか?」
「確かにその可能性はあるけど、ドワーフの御爺ちゃんたちとか、ボールベアリングに使う真球を、自力で作ってるのよ。この世界の人間の生産力、加工力を考えれば、私たちが最新技術を使って加工できる物を、作れてもおかしくないわ。作ってから、ドワーフに再現できる物なのか聞けばいいんじゃない?」
「その方が賢いか。もし再現できないなら、改良をすればいいだけだしな」
「確かにそうでござる。変な心配をし過ぎたでござるな」
俺たちは、改良した織機の部品を数個作って、ディストピアへ移動した。
ディストピアでドワーフの工房にいる弟子たちに部品の説明をして、織機を使っている人の手が空いている時間帯に改良するようにお願いする。部品の作り方も簡単に説明したが、こっちは実物があるので、大した手間はかからなかった。
「今からゴーストタウンに帰っても時間的に微妙ね。それなら、シュウの家に行って赤ちゃんを見せてもらってもいいかな?」
「シルキーたちが許可を出すならいいけど、ダメって言ったら諦めてくれよ?」
そう綾乃に返すと、敬礼をする勢いでOKの返事が返ってきた。綾乃は特にシルキーたちには頭が上がらないからな、かなりビビり気味である。
「……と言う事でスカーレット、2人を子どもたちに合わせても大丈夫か?」
「今でしたら、特に問題ないですね。授乳も終わってオムツも変えたので、少しであれば問題ないですよ」
良かった。スカーレットから許可が出て、綾乃も安心している。いや待て、別に会えるか会えないかだけで、綾乃が怒られるわけではないのに、何でほっとしてるんだ?
「わ~可愛い! あ、この子がミリーさんの赤ちゃんね! 猫耳に猫尻尾が可愛い。お持ち帰りしたい……」
「おぃ! それは許さんぞ!」
「冗談に決まってるじゃない。それだけ可愛いって事よ。それで、こっちの子がカエデさん赤ちゃんかな? ちょっと肌が黒いね。となると、こっちがリンドさんの赤ちゃんかな? みんな、可愛いね。もっとお猿さんみたいなのをイメージしてたよ」
「あ~俺も思った。言っちゃ悪いけど、初めはもっと不細工なのかと思ってた。で、綾乃の言った通り、こっちのちょっと肌の黒いのがカエデの娘でスミレで、こっちがリンドの娘でブルムだ。こっちの猫耳猫尻尾がミリーの娘でミーシャだ」
10分程娘たちをかまっていて分かった事なのだが、3人の娘たちに一番人気だったのは、バザールだった。まだしっかりと目が見えていないはずなのに、顔をのぞかせるとキャッキャと笑い出したのだ。ちょっとジェラシーを感じてしまった。
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