ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1019話 すべてお見通し

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 村は出て行った1週間前と変わってなかった。いや、村人たちに笑顔が見られるか?

「はぁはぁ、良くお戻りくださいました! 村人一同、お待ちしておりました! それで……お話の方は?」

 走って駆け付けてきた村長は、口を開くなり村の進退について尋ねてきた。

「問題ないよ。教皇とは話がついてる。この村の人たちは、全員俺の管理下に入った。だから、どこに連れて行くのも自由になったよ。でも、もうしばらく待ってくれ。教皇の近衛騎士が近くの街に派遣されて、国の方針に歯向かっている領主を裁くみたいだよ。

 だから、君たちが残りたいのなら、今までと変わらない生活ができるよ。どうする? 壁もできたから前よりも安全に暮らせるぞ?」

 しばらく黙り込んでいたが、強い意志を宿した目をして、

「私たちはシュウ様についていきたいと思います。これだけの事が簡単にできてしまうあなた様の元であれば、ここより豊かな暮らしができると確信しています。どうか連れて行ってください」

「豊かな暮らしね……村長、あなたにとって豊かな暮らしって何だい?」

「それは、飢える事なく安全に生活できる……ですかね」

「確かにそれなら、俺についてくれば問題ないな。もう1つ聞いていいか? バリス教徒としては、それはありなのか?」

「はて? 確かに私たちはバリス聖国に住んでいますが、バリス教徒というわけではありませんよ。だから、バリス教とは関係ないので、何の問題もありませんよ」

 そうなのか、バリス聖国の人間だからって、全員がバリス教の教えに従って生きているわけじゃないのか。

 いや、街の中に住むためには、バリス教徒でなくてはいけないかもしれないけど、そんな堅苦しい決まりとかに反発した人たちが、街の外に村を作ったのかな?

 それをよく思っていない領主が、この村の希望、現地産勇者を強権で奪っていった可能性もあるか?

 教皇と話して思ったが、バリス教は俺が思っているよりもずっとまともなのかもな。

 その甘い蜜に群がる蟻の中に、どうしようもなく使えないやつがいたってことか? 特権階級や、騎士の大半はクズの集まりだったか。そういう立場の人間だけが腐ってるってことか。

 初めの出会いがあれだったせいか、どうもね。

「そうか、とりあえず教皇が派遣した神殿騎士団が来るまでは、身動きがとれないから、その間に引っ越す準備でもしててくれ」

 と言ったものの、村の全員が乗れるだけの馬車は無いんだよな。どうするか? また、ジェノサイドキャラバンのみんなに来てもらおうか?

 その事を魔導無線でゼニスに相談すると、

「ジェノサイドキャラバンの皆さんは、既に出発していますよ。シュウ様の事ですから、気付いたら人を連れてくる事になると思っていました」

 とか言うんだぜ。しかも、分かってますよ! 的な雰囲気を出して言うのは止めていただきたい!

 確かに、ゼニスの言う通りになったかもしれないけど、違うんだよ! いや、違わないんだけど、違うんだって!

 何か自分で言っていて混乱してきた。

 ひとまず、一緒に来ているメンバーには伝えておこう。

 解せぬ! 妻たちもブラウニーたちも従魔たちでさえも、元から分かり切っていたことではないですか? みたいな顔をしやがって! 決定事項みたいな感じで、ごく自然にどうせ連れて帰る事分かってたし! って感じだったさ。

 連れてくる可能性は考えてたから何も言えないけど。

 おっと、村長にキャラバンがくる事を伝えておくか。でも、馬車が足りないから、予備部品として積んでいたと言って車輪を召喚して、車体を作るか? 曳く馬に関しては、ウォーホースがいるから馬車を連結させれば問題ないだろう。

「村長、俺の部下のキャラバンがこの街に向かってきてるから、荷物は大体運び出せるようにみんなに伝えておいてくれ。って、何処に行くか言ってないけど、それで怖くないのか?」

「それは、知らない土地ですから怖いですが、シュウ様から無下に扱われない事は確信していますからね。それとも変な所に連れていくつもりなのですか?」

「いんや、連れてくのは、俺の街のゴーストタウンかな? あそこなら、仕事がたくさんあるし、もし農業をしたいなら、バザールもいるしな」

「ふふふ。やっぱり、あなた様はすごいのですね。当たり前のように街を持っていらっしゃるようですし。私たちの見る目は間違っていませんでした!」

「はいはい、どうせお見通しだったんですよね。俺ってそんなに分かりやすいのかな? それはさておき、俺のキャラバンでも村人を移動させるのには無理があるから、予備の車輪を使って馬車を組もうと思ってるが、使えそうな木材とかはあるか?」

「それでしたら、廃屋やもう使わない倉庫の木材などを使ってはどうでしょうか?」

「いいのか? それなら遠慮なく解体してしまおう。あまり雑に解体しないでくれよな。みんな、村長の指示に従って解体していい家や倉庫を壊してきてくれ。長い木材は出来るだけそのままの状態で保存しておいてくれ」

 村長が解体しても問題ない家を指さしていく。予想以上に状態のいい家がたくさんあったので、木材の確保は十分だろう。

 解体風景というか、これは解体と呼べるのだろうか? リリーが剣を持って柱に打ち付けている釘をカットして、壁の木材を簡単に外していくのだ。屋根に関しては解体するのにも手間がかかるようなので、放置されている。

 太い柱は使わないようだ。村長曰く、自分たちがいなくなってもすぐに違う人間がいつくだろうから、屋根は残してやっておいてほしいとの事だ。まぁクリエイトゴーレムで木材同士をくっ付けるのも簡単だし、壁だけでも十分な木材が集まるからな。

 問題は、幌馬車の屋根の革の部分だ。さすがに大量に持っているのは普通じゃないので、ジェノサイドキャラバンの皆が来た時に、準備してもらっていたという事にしよう。

 馬車の車体に関しては2日で組み終わり、車輪に関しては俺たちの馬車に比べて性能の低い物にしている。当たり前のようにつけているボールベアリングは、アダマンコーティング無しのドワーフが作ったモノである。

 手作りでボールベアリングの中の球を作るとか、マジで頭おかしいだろ。しかもかなり性能がいいから困る。でも、こういう時に使えて助かるんだけどね。

 それから2日後には、6台の馬車が完成していた。

 その日にちょうどジェノサイドキャラバンのメンバーも村に到着して、屋根を覆う革もしっかりと装着できた。

 次の日に、神殿騎士が村を訪れた。
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