ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,016 / 2,518

第1016話 聖国へ

しおりを挟む
 秘密基地が完成してから1週間が経った。基本的に俺が利用する事は無いが、あそこをえらく気に入った綾乃が入り浸っているようだ。

 自分の家をほっぽりだして、秘密基地に自分専用の部屋と工房まで用意してしまったらしい。ブラウニーが日替わりで、喜んで管理してくれているのをいい事に、いろんな注文を付けているらしい。特に飯については注文が多いとか。

 ブラウニーは、それを喜んで仕事として行ってしまうため、綾乃が調子に乗っているらしい。それにしても、引きこもり生活まっしぐらな状況だな。

 土木組も年少組も、面白がって秘密基地に行っているようなので、綾乃が変な事を始めたら説教をしてもらえばいいか。一応、与えられた仕事、素材の作成はしっかりと行っているので文句は言えないしな。

 妊娠している3人は、体が動かせないと不満を漏らしてはいるが、シルキーに様子を聞けば散歩とか無理のない範囲でしているので、運動不足にはなっていないはずだ。というより、妊娠する前が動きすぎだったといってもおかしくない。

 日課になった庁舎への出勤をして、資料を読んでいて気になった資料があった。

 ちなみに、庁舎出勤するようになったけど、基本的には午前中しか仕事はしない。それ以上いても本当にする事が無くて、グリエルたちにどこかに行ってくださいと追い出されるからな。

「グリエル! ちょっと気になったんだけど、現地産の勇者を見つけたって報告書があるけど、これってどうなってる?」

「えっと、ちょっとお待ちください」

 グリエルがノートパソコンを起動して、現地産勇者の情報について検索を始めた。10分位すると、資料を印刷して俺の所へ持ってきてくれた。この部屋だけ見ると、日本のオフィスみたいだな。

「いる場所は、聖国ですね。報告が確かなら、村の衛兵として活動していた現地産勇者を街に召喚して鍛えているようです。ですが、村には戦力となる衛兵がいなくなり、かなりの被害が出ているらしいです。それに、守りの要の現地産勇者を連れて行ったのに、村には何の保証もしていないようですね」

「はぁ~これって、聖国だからってわけじゃないよな? 聖国の貴族、枢機卿や大司教の独断で囲ってるって事かな? ちなみにその村の被害ってどんな感じなの?」

「えっと、村の被害は村の規模が300人位に対して、15人位お亡くなりになって、50人位がケガをしてしまっていますね。1ヶ月ほど前に現地産勇者が連れてかれてからですね。元々、お金がある村でもなかったので、治療にも来てもらえないそうです」

「これは拙いよね~聖国の村の話だけど、知っちゃったからには何とかしないといけないかな?」

「シュウ様の思う様にすればいいと思いますよ」

「ん~村の人の不祥事でとかなら放置するけど、勇者を連れてかれたせいで出た被害だもんな」

「そう言いますが、現地産勇者だったから監視してた内容ですけどね」

 言われてみて納得。ただの村から多少強い兵士が連れてかれても、監視はしないよな。

「よし! 知ったからには、対処しようか。みんなに声をかけようか」

 そう言って、スマホ型魔導無線を起動してみんなに連絡する。そうすると、年中組のメンバーと従魔達を連れて出発する事になった。

 俺は家に戻って準備を始める。準備を終えてから、妊娠をした3人に話に行く。

「すぐ戻ってこれると思うけど、体調には気を付けてな」

「もう、シュウ君ったら。シルキーたちが付いてるんだから問題ないわよ。心配しすぎだって。それに、心配するのは私たちの方よ。聖国だから生身で行くんでしょ? だから気を付けてよ」

 反対に生身で行く俺の事を心配されてしまった。

「本当に何かあったら私達の子供にいい影響ないんだから本当に気を付けてよ。いろんなことを失敗してもいいから、無事に帰ってきてね」

 ミリーに言われて、カエデに追い打ちをくらった。リンドも体には気を付けて、と簡単に声をかけてきただけだった。さすが数百年生きているだけあるな。余裕っぽい。


「さて、みんな準備ができたから出発するよ!」

「ご主人様、今回はどうするんですか?」

 移動している馬車の中でキリエが俺に質問してきた。他のメンバーも気になっているようで、みんなの顔が俺の方に向いている。

「ミューズから聖国に入って他の街を無視して、件の村に向かおうと思う。ケガしている人が多いから早めに治さないと、手遅れになるかもしれないからね」

「と言う事は、急がれるって事ですか?」

「あ~地上を急いでいく形かな? 色々面倒だけど、野営をするから夜番もあるけど、よろしくね」

 声をそろえて「了解」と言いいつものように、馬車の中でのんびり過ごす事になる。御者に関しては、ディストピアの冒険者から募集して6人雇っている。

 幌馬車2台とキッチン馬車1台で移動をしているので2交代の3台分で6人と言う事だ。夜番は俺達でやるので本当に御者だけをしてもらう予定だ。ただ俺がいるという事で、ディストピアの冒険者は、率先して雑用をしようとするので、注意が必要なのだ。

 といっても、今回に関しては、食事に関してはブラウニーを連れてきているし、野営に関しては新型馬車を持ってきているので10分もあれば問題なく準備ができるようになっている。

 問題なのが、夜番なんだよな。御者もしてもらって夜番までやられると困るので、年中組と作戦会議をこっそり開いた。

 その結果は、正面から頭を下げて休んでもらうのがいいのでは?と言う事になった。

 目的の村まで一般的な馬車なら3週間はかかるだろう距離を、4日で到着する事に成功した。途中、馬車とすれ違うためにスピードを落としたりしていたので、多少時間がかかってしまっている。

 到着した村は、

「予想以上に酷いな」

 人的被害も酷かったがそれ以上に、建物がボロボロだった。

「えっと、キリエ、護衛にリリーとダマを連れて村の人の治療をしてくれ、治療費に関してはとらない事を村長と契約してくれ。おそらくそうしないと、治療を受け入れてくれないと思う。その契約書に可能なら聖国から払ってもらうっていう一文をつけて、そこをしっかり説明してくれ」

 こういう村では、通りすがりのヒーラーが治療をして法外な金額を請求するという問題があるので、その部分を否定しておかないとね。

 悪さをするヒーラーは、村人から見れば強い仲間を連れているので、泣く泣くお金を払ったり、奴隷として村人を連れていかれたりするようだ。

 俺たちはまず、村から少し離れた場所で、炊き出しの準備を始めた。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...